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2013年12月26日木曜日

彩の国でのリサイタル(2)

ラファウ・ブレハッチのさいたまでのリサイタルを聴いた方からのメッセージです。
演奏会があった翌日に頂いていたのですが、私が多忙を極めており、今日まで開くことができませんでした。遅くなって申し訳ありませんでした。


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こんにちは、初めまして。

私はこれまでほとんどクラシックのコンサートを観たことがないのですが、昨夜は家族に強く勧められて渋々ブレハッチのコンサートに出かけました。もちろんブレハッチを観るのは初めてです。

これまで数回、足を運んだクラシックのコンサートは、どれもひどい後味のものばかりでした。もちろん、私に音楽を楽しむための基礎教養が無いからだと思います。しかしそれにしても、観賞後に嫌な気持ちなるくらいなら、音楽のコンサートなどにわざわざ出かける必要はない、と考えていました。

そして昨夜ですが、ホールを出て帰宅するにいたって感動は大きくなるばかりです。アンコールの曲の最後の音が消えた瞬間のまま、時間が留まっているかのようです。

昨夜のコンサートは一生忘れることはないでしょう。 思うに私は、昨夜、初めてクラシック音楽のコンサートを知ったのだと思います。

確かにクラシック音楽の基礎教養があれば、コンサートをより楽しめるだろうと思います。しかし、昨夜のブレハッチのコンサートを体験して理解したことは、芸術の感動はどれも同じ本質に属しているということです。そしてその本質は音楽の基礎的知識を越えたところにあるのだと思います。

私は芸術全般をある程度は愛していますが、その中でピアノ音楽はなんと、はかないものでしょうか。音楽を聴き終えた瞬間、自分が何を体験したのか理解できないうちに、手のひらからさらさらと消え落ちて無くなってしまうような気がします。演奏途中も、咳払いひとつで壊れてしまうような非常にもろい城を築くように感じました。

しかしそのようなあやうさにも関わらず、やはり私が今日経験したのは、芸術の本質であったと思います。

モーツァルトのソナタのアンダンテ、ロンド。そしてベートーヴェンのソナタのラルゴ、メヌエット、ロンド!古風な典雅とコンテンポラリーに現前するむきだしの美!

これの他に何が必要なのか、と思いました。これがこのまま留まってくれれば、自分はもうモーツァルトとベートーヴェンは聴かなくてもいい。

ポロネーズ第4番:OP40-2、そしてスケルツォ第3番:OP39!!
中低音のフレーズが現前させる精神の伽藍!
そして空の高い場所から啓示と祝福が降り注ぐスケルツォ…!!

悲しいかな、音楽の素養がないばかりに、自分が昨夜聴いたものを記憶に留めるすべがありません。もうほとんど何も思い出せません。しかし、おそらく一生忘れることはないであろう、あの響きを体に感じ続けています。ホールの壁面に沿って立ち上がる響きの伽藍。その響きの感覚が今もずっと残っています。忘れることは無いでしょう。

こんな幸福な体験をして、まだ自分が生きているのが不思議なほどです。

素晴らしい、という言葉があまりに陳腐で何も意味しないほどの体験でした。しかし今日からは、日常生活という天罰(?)が下るのですから、釣り合いは取れているのかもしれませんね。

突然、長文の舞い上がった内容のメッセージをお送りしてしまい申し訳ありません。せめて誰かにつたない感想を聞いてもらわなければ、本当にあの記憶が無くなってしまいそうに感じて、書きなぐってしまいました。ご放念いただければ幸いです。

ブレハッチのファンサイト運営を陰ながら応援しています。

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私が初めて彼の演奏に触れたときは、もっと漠然とした、あるいは稚拙な言葉でしか、その感情を表現することができませんでした。にもかかわらず、誰かにそれを伝えたくて、CDサイトのレビューに夢中になって書き込みをしていました。

今回、私はさいたまの演奏会に行くことができませんでしたが、非常に多くの方々の鑑賞記を拝見することができ、音楽という抽象的なものを言葉で表現することのむずかしさと、素晴らしさの両方を実感しました。予想していなかった感動がありました。それは、SNSやブログを使って伝え合うということをこの数年間やってきての実感でもあります。多くの音楽やアートの愛好家の方々との交流は、おおきな財産となり、心の深いところに残っています。

メッセージありがとうございました。もしお名前を掲載してもよろしければ、ご一報いただければ幸いです。

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上記の方が購入したチケットは、さいたまの、最後の1枚だったそうです。
さいたま芸術劇場さんが、「残り1枚となりました。」とツイートしていたのは12/15でした。その数時間後に完売しました。
やったー、とひとりで喜んでいました。
(その後、関係者席の関係で、当日券が2枚出ました。これも即完売。)

今回は、東京2会場が早々に完売となり、
さいたまも2月同様完売にしたい・・・と、私はなんだかむきになってあれこれ頑張ってしまいました。
このピアニストは、満席になると、より一層集中力が増すようだし、というのは、私の勝手統計によります。毎回、ジャパンツアーの最後の演奏会が、一番素晴らしい、ということも。
(12月28日追記)