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2013年12月18日水曜日

彩の国でのリサイタル

ラファウ・ブレハッチの、さいたま芸術劇場でのリサイタルに行かれた、音楽愛好家の方男性、30代:推定)のツイートを、コピペさせていただきました。
演奏会の様子が臨場感を持って伝わってきます。
彼は、音楽を愛し、音楽とともに生き、頻繁に演奏会に足を運び、毎回この分量と密度でレビューツイートをなさっています。こうした本物のクラシック音楽ファンの方に彼の音楽を聴いていただくことが、私のやりたかったことでした。

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最近プログラムは期待しないように当日パンフレットで最終のものを確認するようにしてるが、今夜はショパンを前半に持ってきてドイツものを後半に持ってきたほうが締まるのにと一瞬思ったが、よくよく見たら調性まで考えてしっかり選ばれ並んでることが判る。最後は大好きな嬰ハ短調というのも嬉しい。

ラファウ・ブレハッチピアノリサイタル終演!そして今年初めのインフルエンザからヤキモキさせたリベンジ日本ツアーも無事に終了。いつまでも聴いていたいピアノだった。彩の国の聴衆も心からのスタンディングオベイション。幸せな時間だった。

さて昨夜の彩の国の音楽ホールでのラファウブレハッチ。言わずとしれた前々回のショパン国際コンクールの覇者。ポーランド人としてはクリスチャンツィメルマン以来だと話題になった。優勝後すぐの来日リサイタル以来だ。

この親密な空間は勿論平日夜公演に関わらず完売。5分押しでステージに現れたブレハッチは変わらずぎこちない(緊張してるのか体が固いのか)歩みでスタインウェイの前へ。 

まずモーツァルトの二長調ソナタ。序奏の和音からして全く重い響きにならない。タッチも手に羽根が生えているかのように軽やかでフォルテピアノを転がしてる菊池洋子のピアノのようだというのが第一印象。 

このシンプルなソナタを緩急素晴らしく音楽の流れを感じながら踊るように弾くブレハッチ。3楽章では休符を思わず左足を踏み鳴らして勢いをつけるなど。カデンツァではホールの残響までコントロールしてその美しい音色を聴かす。全く隙のない、音楽に対してとてもデリケートな性格が窺われる。 

見事なモーツァルトを弾き終え袖に戻ったかと思いきや瞬時にステージにピアノ前に座り集中する。ベートーヴェンも同じ二長調ソナタ。それを意識してモーツァルトからの流れを止めない配慮だろう。  

そして弾き始めたプレストから鳥肌が立った。モーツァルトのような同じタッチや乗りで予想してたが、まさにベートーヴェンの音楽だ。モーツァルトの時も見られたが、展開部に入る直前の終止に鍵盤を2、3度圧してヴィブラートをかけているのか音の長さを感じているのか。印象的。

2楽章は噂通り、いやそれ以上悲しみ(メスト)を感じる演奏だった。しかも深い。ベートーヴェンが作品10でこんな境地に達していたなんて驚き。まるでショパンの葬送行進曲に近い重さ。

ショパンのは中間部に光が射すように救いの長調が現れるがベートーヴェンのそれはなかなかはっきり形にならない。しかしそう響きを感じることができるほどブレハッチは調性感を意識している。やがて高音に流れるような美しいモチーフが現れるが、短調が徐々に力を持ち、音量を上げクライマックスを築き上げていくようはまさにベートーヴェンの巨大さを感じたし、スビトピアノもデリケートで今夜で最も感動的なシーンだったかな。 

3楽章はとても短くも面白いメヌエット、4楽章もカデンツァ部分(ほんの数秒)の音の響きの美しさが際立っていた。 

休憩を挟み、後半はショパン一色。でも夜想曲10番変イ長調の中間部、頂点へ一気に畳み込んでゆくのは素晴らしく立体的だったし、

確かそのまま弾かれたポロネーズイ長調とハ短調。特にハ短調はその魅力を初めて知る。コーダの最後の頂点の和音を決め両手を流しての、ゆっくりと終止和音を弾く。かっこいい。 

その後一旦袖に戻り、ステージに呼び戻されても一礼して袖に。長めの休止を取り、ステージに。作品63のマズルカ3曲をピアノの前でゆっくり集中して弾き始める。ペダルをたっぷり和音の響きを聴かせながら美しい舞曲を聴かす。

こんな素敵なマズルカはアンデルシェフスキで聴いた以来かな。彼くらいでしか聴けないと思っていた。ブレハッチの希望である全曲録音は是非ライヴで。その収録に立ち会いたいな。

嬰ハ短調のマズルカで終わり、ブレハッチは立たずに最後のスケルツォ嬰ハ短調を弾き始める。もう何も言うことがないスタイルも音の粒の質も流れも全てが完璧なスケルツォだった。圧巻で思わずブラヴォが出てしまった。 

1階席からでは恥ずかしいのであまり声をあげることはないのですが。これで2040。え?まだ2時間経ってないの?とコリヤブラッハーの無伴奏の時を思い出したが、満足よりももっと聴きたい!という感覚。

でもブレハッチはアンコールに技巧的な派手な曲は弾かず、余韻を楽しんでください風な短い3曲。焦らすなぁ(笑)また次回の来日が楽しみ。 

ブレハッチはこれから何処へ行こうとしているのか心配している声も見掛けたが全く問題ない。彼には今モーツァルトの惹かれているのならそれを究めればいいし、

今までそんな魅力を感じなかったベートーヴェンの初期ソナタから作品の本質を引き出すのだから是非ソナタ全曲をライヴと録音で取り組んでほしい。

僕の恩師はまずハイドンを弾けなければオケの技術は上がらないよと。ボッセ先生も同じ考えだったし、ラトルもハイドンを知らなければストラヴィンスキーを理解できないよと語るように。バッハから古典派の作品を知ることはとても重要だと実感したブレハッチのリサイタルだった。


  コンクール優勝なんて通過点に過ぎないのだから。でも話が面白い人とショパンを弾ける人はもてるなぁ(笑)だからじっくり選んでほしい。