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2012年8月15日水曜日

ラファウ・ブレハッチの今年前半の演奏会から~ベートーベンピアノソナタ第7番(イタリア、ドイツ、フランスのレビュー)

English

ブレハッチが演奏するベートーベンのピアノソナタ第7番op.10-3、とりわけ第2楽章 "Largo e mesto" は、このブログを書いていて今年今日までで一番印象に残った話題のひとつです。彼が正式の演奏会で初めてこの曲を演奏した、今年3月2日のトレントでのリサイタル・レビューを一部アップします。モト記事は著作権保護がかかっているので、一部のみ、プログラム前半のバッハとベートーベンに係る部分に限定します。来年2月の来日公演で演奏する可能性があります。

Original review

ラファウ・ブレハッチ、ピアノの至高の魂・・・厳密さと思慮深さと熱意を合わせ持つこの希少価値ある演奏家は、全てのレパートリーを素晴らしく解釈する。同国の傑出した作曲家フレデリック・ショパンへの自然な愛着を持つ彼が、今宵音楽に潜入し、バッハのパルティータ第3番イ短調を通じて語りかける――デカルト的明晰さ、音やフレージングの明瞭さ、様式の純粋さ。まさに音楽のための音楽。ブレハッチの格段の技術のおかげで、バッハの複雑なポリフォニーがシンプルに聴こえ、明快でわかりやすい話し方となり、交互に現れる声部は忠実に様式の構造を追うが、彼の内面から精妙な表現が、時空を流れる劇的な叙情詩のように湧き出てくる。最も叙情詩的な瞬間を鍵盤に再現する際の彼の流暢なフィンガリングと鮮やかさ、驚異的な技術によって、彼は古典派の時代の作曲に正確に対応し、驚くべき成熟度で再現する。彼の手によって、ベートーベンのピアノソナタ作品10-3は、とらえどころのない部分が明らかにされる。

大きなオクターブのパッセージで始まるプレスト、第一主題を通じて聴かれるアルペジオと槌を打つような和音は、卓越した技術を強調する。しかし、ゆったりとしたテンポのLargo e mesto は、このベートーベンのソナタ全体の中で最も強烈に表現豊かな楽章で、痛いほどの叙情詩として私たちに落ちてくる。永遠の抑制できない悲哀に満ちた、微細で静かな詩は、彼の最も完璧な構成によって、作曲上意図されたとおりのものを見出す。緊張感が短いメヌエットでやわらぐ。最終章のロンドは初期のテンポと連関しており、中高音域に広がるコロラトゥーラを、ブレハッチは音の動きによって振り付ける。
(抜粋以上)

Trento Cathedral and Piazza Duomo












こちらは、4月27日の、シュトゥットガルトでの演奏会レビューから。

レビュー全文(英訳)

「ベートーベンのソナタ第7番ニ長調作品10/3、特にLargo e mestoでは、ブレハッチの非凡な才能が明白だ。彼は、スローな楽章で使われがちな、従来型のエスプレッシボの使用を避け、この楽章の痛切なまでに響く表現を、形而上的な(霊的な)次元にまで高めている。この若いピアニストが同世代の演奏家に比べ、深く音楽を見ることができると感じられるのは、この曲にとどまらない・・・」

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そして、6月12日、パリのサルプレイエルでの演奏会レビューから。

レビュー全文(英訳)

「・・・人間的な、絹のような光溢れる音色。この官能的ともいえるほど色彩あるバッハにおいて、楽譜に対する理論的な研究が全て、表現のための手段となっている。この様式によるベートーベン作品の重要な分岐点となり、ちょうど「悲愴」の直前にあたるソナタ第7番ニ長調作品10-3は、よく知られた、あるいは頻繁に演奏される作品ではない。
とても繊細なパッセージ、多くの箇所で動きを見せる。とりわけ彼の広大なLargo は雰囲気が様々に変化し、深い郷愁の瞬間や軽やかさを感じさせる瞬間とがある。タッチはいつも奇跡的。ブレハッチは鬼のような技能でこの会話に入り込み、やすやすとドラマや誘惑を片付け、とりわけこのゆったりとした楽章の複雑な構造ゆえに、私たちを感動させる。まるで、ショパンのロ短調ソナタを弾くときと同じように。」

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