Preludia - Unofficial website for Rafal Blechacz

Blog

2012年5月19日土曜日

ラファウ・ブレハッチ、オランダNRCとのインタビュー


オランダの全国紙NRCの5月10日付け文化欄に掲載された、ラファウ・ブレハッチのインタビューです。11日のコンセルトヘボウでの演奏会の最終プロモーションとなったインタビューは、彼の3月18日のハーグでのリサイタルの翌日、NRCのMischa Spelが行いました。彼女は以前からブレハッチに注目しているジャーナリストです。
この記事が奏功したのかはわかりませんが、当日コンセルトヘボウはほぼ満席になったということです。

Original interview on NRC

*****


深く物静かな、若く才能溢れるピアニスト

ポーランド人ピアニストラファウ・ブレハッチ(26) は2005年、ショパンコンクール優勝の栄誉を得た。最近、4枚目のCDがリリースされ、明日はコンセルトヘボウでソリストをつとめる。 演奏は繊細で、必要な時は堅牢に、何よりも色彩の豊かさが魅了する。

2005年のショパンコンクールで、20歳のラファウ・ブレハッチは全ての賞を独占した。最高のマズルカの演奏者は?ブレハッチ。最高のコンチェルトは?ブレハッチ。ブレハッチの演奏と同様、次々と続く授賞への拍手喝采の目覚ましさも記憶に残る。ポーランドはルービンシュタイン、パデレフスキ、ツィメルマンの後継者を国として得ることとなる。そして第2位は?審査員はブレハッチの卓越ぶりを特に強調するため、第2位は置かなかった。

アルバムを録音し、ステージでの世界的キャリアを積む若手ピアニストの中でも、ラファウ・ブレハッチ(26)は古風な静けさと謙虚で純粋な雰囲気を放っている。

インタビュー?あまりインタビューは受けない。コンサートは?1ヶ月に4回程度。

「僕には静かな時間が必要です。考えたり演奏に取り組む時間が。」と微笑む。新教会でのリサイタルを終え、ここはハーグで彼が滞在しているホテルのロビー。
一方、ドイツ・グラモフォンからは、彼の手による宝石が、次々と生まれている。最初のCDはもちろんショパン、コンクールの勝者として他の選択はありえなかった。その後、モーツアルト、ベートーベン、ハイドンのアルバム、そして再びショパン(コンセルトヘボウとのコンチェルト)。そして今回の4枚目のアルバムは、豊かな色彩に彩られた演奏も賞賛できるし、独自性という点でも注目に値する。ドビュッシーの印象主義の作品(ピアノのために、版画)が、めったに演奏されない、ポーランド人作曲家カロル・シマノフスキの表現主義の音楽と組み合わされている。

「僕はショパンの専門家と見られがちですが、ショパンコンクールで優勝する前は、いつも違ったレパートリーを弾いていました。」とブレハッチは言う。「リストやシューマン、そしてドビュッシー。このバックグラウンドがあって、ショパンの演奏も洗練しました。」

ブレハッチは礼儀正しく友好的だが、音楽家としての選択には、断固とした意思を示す。移動には自分の車を使う。特にヨーロッパでのツアーではそうしている。

「飛行機が恐いわけではなくて、この方が気持ちがいいんです。コンサートの直後はまだアドレナリンが一杯でなので、車で気分良く出発します。これでリラックスします。その間、父と話したり、哲学の講義を入れたCDを聞いたりします。止まりたい時に止まる。アーチストにとって、自立している、という感覚はとても大切です。そのあと、静かに眠ります。」


田舎に暮らす

Pianist Rafał Blechacz gives
only four concerts a month
ブレハッチの音楽への愛はオルガンから始まったが、自宅にはピアノがあり、実践的な成り行きで、この初恋からは遠ざかることになる。しかし、恋心が消えたわけではない。

「家にいる時は、僕はよく、教区の教会で、ミサの間や後にオルガンを弾きます。でも、11歳で初めてコンクールで優勝したときに、ピアノこそが自分の楽器なのだとはっきりわかりました。
リサイタルでの生演奏の雰囲気がとても好きでしたね。素晴らしいコンサートホール、神聖な静けさ、聴衆。。その雰囲気が欲しいと思いました。」

ブレハッチは今も生まれ故郷と同じ地域に住んでいる。ポーランド北西部のビドゴシチの近郊だ。最初に得た収入で、――彼のCDはこれまで160000枚を売り上げ、クラッシックの演奏家としては極めて大きな数字だ――彼は田舎に家を買った。「本を読んだりピアノを弾いたりするのに、人里離れたロケーションは適切というか、むしろ必要だと思います。」
彼は両親と同居している。妹もいる。「うーん、そうですね、当然ですが、分かれて住みたいと思うことも時々ありますよ。」と彼は認める。「でも、ツアーで空けることも多いので。それに、レパートリーをもっと広げたいと思っています。そっちの方が優先ですね。」

「コンクールで演奏家を比較することは、音楽の本来の性質とは相容れない。」


ラファウ・ブレハッチは世界中の一流のコンサートホールでリサイタルを開き、最も重要なオーケストラとソリストとして共演している。

「これは実現したかったことで、だから7年前にショパンコンクールに参加し、これが突破口となりました。しかし、頂点へつながる道はたくさんあるし、コンクールへの参加が全て、というわけではありません。

関連するストレスはうまくマネージすることができました。あらかじめ、自分自身と自分の演奏する曲に集中しようと決めていたので。他の演奏者は聴かなかったしテレビも見ず、ラジオも聞きませんでした。何にも、です。孤立していました。僕にはこれが完璧に機能しました。でも、基本的に僕はコンクールは好きじゃありません。コンクールで演奏家を比較することは、音楽の本来の性質とは相容れないと思います。」
自分の個性は、自分にとっては神聖なものだから、とブレハッチは言う。「音楽作品を、パーソナルな冒険として体験し、深めていくことですから。」

音楽の同一性を研究することに、彼は自由時間をあてている。哲学を学び、美学と音楽の哲学に焦点を当てた。ほら見て、と彼は指摘する。ポーランド人現象学者/美学者ロマン・インガルデンの著作はいつもかばんに入っている。

「インガルデンは音楽作品の同一性について、興味深いことを述べています。彼が言及している問題は、音楽家が解釈する際の解釈、解釈学、形而上学の役割などに関して、僕が抱いている問題意識に触れています。なぜですか?例えば、ショパンの幻想ポロネーズop61があります。このような作品は、あるいは他の偉大な音楽作品もそうですが、強い形而上的な(霊的な)感覚を、演奏者と聴き手の両方に要求します。この感覚が自然に湧き上がる場合もありますし、自分の中に必要な感覚を必要な時に呼び起こさせることもあります。

演奏中に思考や感情を明確に識別する必要性は、芸術的な観点から非常に有意義です、と彼は言う。
「インガルデンの生徒であるヴワディスワフ・ストゥルジェフスキは、優れた解釈を見つけることは常に弁証法的なプロセスであり、アーチストの内面の成長と変化に依存している、と書いています。
音楽作りとは、音楽作品が求めるものと、自分の芸術的自由との間の正しいバランスを追求することです。」

そして、ブレハッチは車に戻り、次の演奏会へと向かう。
「とても楽しみにしていますよ。」と言う。「今の生活は、子供の頃から好きだったことばかりです。コンサートでの演奏、特に期待感に満ちた緊張した雰囲気とかね。」と笑顔で言う。「聴衆が僕の演奏を待っている。そして、コンサートホールも大きくなってきました。」


5月11日、ブレハッチはベートーベンのピアノ協奏曲第3番で、ブレーメン・ドイツ室内フィルハーモニー管弦楽団のソリストをつとめる。 指揮:トレヴァー・ピノック、会場はコンセルトヘボウ・アムステルダム。情報はblechacz.netまで。
(End of the article)

*****

オランダ語の記事を、オランダのヤンさんが英訳してくださったものの和訳になります。
こちらのブログで何かを日本語にするときは、それなりにモト言語から外れないように解釈しようと努めていますが(もちろん専門じゃない言葉ばっかりなんですが)、今回は訳された英語がモトになっています。不明瞭な点は何ヶ所かあります。モトの単語も調べたり、ラファウはそもそもどんな英語で表現しただろうと想像したりしましたが。コンクールは好きではない、のところは、コンクールからは距離を置いている、とかコンクールはもういいです、という言い方のように思いますが、やや?です。

あまりインタビューを受けない、というのは、オランダではそうなっている、ということでしょうね。
彼がインタビューで哲学のことを比較的詳しく話すのが記事になるのは、ポーランド以外ではめずらしいと思います。彼は話したがっているけれど、あまり詳しく聞いてもらえないか、話してもきちんと文章化できる記者があまりいないのか。。今回はSpel女史が、うまくまとめていますね。上手なライターだなあ、と思いました。ラファウの雰囲気が伝わってきますね。

*****
Personal thanks:
ちょっと資料探しをしていて、以前ファンの方からいただいた、昔のTVの録画を見つけました。その中に、ラファウの2006年来日時のリサイタルの録画も入っているのに気づきました。
このリサイタル、海外の知り合いの人々にシェアしている間に、自分の分もなくしてしまい、あほやなあ、と残念がっていた分なのですが、青い鳥のように自分の部屋の引き出しにありました。
これをくださった方へ、(お元気ですか?)本当にどうもありがとうございました♥ 私がこのようなサイトを始めるきっかけとなった、思い出深いリサイタルです。


*****
インタビュー記事の、無断での使用はご遠慮ください。