Preludia - Unofficial website for Rafal Blechacz

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2010年5月27日木曜日

クラクフでの演奏会変更について

(English)
5月28日、クラクフにて予定されている演奏会、ショパン協奏曲2番のソリストは、ラファウ・ブレハッチの体調不良のため、インゴルフ・ヴンダーに代わりました。
代替として、ラファウ・ブレハッチは6月にソロリサイタルをクラクフにて行うとのことです。日程は未定。28日のチケットはソロリサイタルにそのまま有効です。
28日の演奏会を観る選択をした場合は、チケット代の差額が返還され、リサイタルのチケットを予約することも可能。
一日もはやく健康を回復されますように!

ヴンダーが見事な演奏で立派に代役を務めたとのニュースがありました(上記リンク)。


** 結局、クラクフのリサイタルもキャンセルになったということです。ポーランドの音楽ファンにとっては残念なことでした。(6月19日追記)





現地の新聞報道です。
Report by RMF classic as of May 25 about the concert at Philharmonic Hall Karol Szymanowski, Kraków on May 28.

"Due to illness Rafał Blechacz’s performance was canceled. The soloist during the concert on May 28, 2010 will be Ingolf Wunder. Tickets are valid for a recital by Rafał Blechacz, whose term will be announced shortly".


dziennik.krakow.pl reports that Blechacz will give a solo recital in Kraków in June. No specific date has been decided. The ticket for May 28 is valid for the recital.




We sincerely wish Rafał a quick and complete recovery!


Gazeta.pl Krakow on May 31, review of Wunder's performance (Polish) Wunder showed a great performance.

2010年5月25日火曜日

ラファウ・ブレハッチのインタビュー、「美学:音楽の哲学」(ポーランド)

(English)
5月22日、ポズナンにて演奏したラファウ・ブレハッチですが、前日に地元ラジオ局のインタビューを受けました。


Original interview (Polish)




哲学は僕を豊かにし成長を助けてくれます。


インタビュアー Alina Kurczewska、Marek Zaradniak
人生、ショパン、哲学について.


―とても忙しい生活ですね。夕べポズナンに着いて、金曜にはリハを2回。明日土曜日には18時からポズナン管弦楽団との演奏会です。いつもこんな感じですか?

いつもではありません。今回はたまたまです。こういう状況だと、鍛えられますよ。(今年は)年間の演奏会は45回までにしています。


―4年前、ドイツグラモフォンと契約なさいました。これまでの3枚のアルバムは大成功でした。契約が終わろうとしていますが、この後はどうなりますか。


次のプロジェクトのために、契約はすでに更新しました。次のアルバムはソロアルバムになる、とだけ言っておきましょう。


―ショパンコンクールの優勝者として、次の若い仲間たちへの助言はありますか。

ほかの人に助言を押し付けるつもりはありません。人それぞれ、性格は違いますから、各自が自分にとって最善のやり方や行動を自覚する必要があります。


―大規模な協奏曲より、室内楽の方が好きですか。

最近、僕はオーケストラとの共演より、ソロプログラムの方が多くなっています。両者は異なった状況で、比較はできません。僕はリサイタルが好きです。僕は本当に一人で聴衆と向き合います。オーケストラとの共演ですと、一緒にチームとして演奏しますが、これも楽しい経験です。オーケストラでありながら、リハでは彼らは最初の聴衆でもあるわけです。

―あなたの生活は音楽だけではありませんね。哲学の勉強をなさっています。トルンの大学で、博士論文を目指しています。ロマン・インガルデンと彼の受容理論に魅せられているとのことですが、なぜ、この論点を選んだのですか。

ロマン・インガルデンと現象学の潮流へと僕を導いてくださったのは、偉大なポーランド人現象学者であるAntoni Siemianowski 神父でした。このテーマに入り始めた時、僕の人間性を高め、演奏に影響するテーマだと気づきました。これらは全てつながっているのです。今は、音楽の哲学である美学に焦点をあてています。
(End)



ブレハッチ、ダブル・プラチナ・ディスクを受賞 (ポーランド語)



08年秋にトルンのニコラウス・コペルニクス大学の哲学科で博士課程の授業を聴講するようになって以降、ラファウ・ブレハッチは、音楽の哲学である美学にとりわけ関心があるとし、現象学・美学の権威であるインガルデンの名も何度かインタビューであげていました。
今回のインタビューでも、その話題が出ました。


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このウェブサイトに引用している画像・文章等は、著作権を有する所有者に属するものがあります。
このサイト www.blechaczinfo.com 独自の著作物を引用なさる場合は、事前に サイト管理人 にご相談くださいますよう、お願い申し上げます。

ラファウ・ブレハッチ、演奏会料を、ポーランドの洪水被害者に寄付

(English)
ラファウ・ブレハッチは、5月22日のポズナンでの演奏会の演奏料を、ポーランド南部を襲った洪水被害者のために寄付したそうです。

「ショパンの音楽には深い苦しみや悲しみだけでなく、希望があります。
今ポーランド人が味わっている、このつらい時期にこそ、必要な希望が。」
(ラファウ・ブレハッチ、演奏会後の発言。)




News from Poznań, May 22 (Polish)

Rafał Blechacz donated his concert fees to the flood victims
Poznań, 2010-05-22

Renowned Polish virtuoso Rafał Blechacz gave fees for the performance of Piano Concerto in Poznań for the people affected by the recent floods.
In Poznań Philharmonic filled to the brim, the artist played Piano Concerto in F minor on May 22, in celebration of the bicentennial of the birth of Fryderyk Chopin.


After the concert Blechacz noted that in Chopin's music there are a lot of pains and sorrows but also hope that in hard times currently experienced by the Poles is all very much needed.





(Appreciation to Karolina for sending us the important news.)


TVP1 news on May 21 about the flood (video)
(Thanks to Kuma for the info.)




「ラファウさんはポーランドの文化や音楽を世界に届ける、最善の大使です。。。シュヴェツィンゲン音楽祭でのリサイタルでは、最後だけでなく前半の終りにもスタンディング・オベーションが起こりました。当地では非常に稀なことだ、と現地の方に聞きました。。。彼の演奏は、聴き手の心をぐっと動かす”何か”があります。。。彼はとても謙虚で、成功に酔ったりしません。コンクールの前と同じ人格です。」
(アンジェイ・ハルフ、ワルシャワ・アーチスト・マネジメント)



"My opinion of Rafał is that he is the best ambassador of our art, music and culture, Poland in the world.
....In Schwetzingen he had standing ovation after the first part and at the end. People living there said that it is a rarity...He has in his interpretation "something" that extremely moves the listeners... Rafał is a very modest person, he isn't intoxicated with success, the same person now as before Chopin Competition".
(Andrzej Haluch, Director of Warsaw Artists Management.)←Thanks to Dana for the translation.




Rafał Blechacz and his young fan in Poznań
The words "hope and energy" popped up in my mind when seeing these two young Poles.
ポズナンにて、10代のファンの方と。
若さゆえの希望とエネルギーを感じました。

2010年5月21日金曜日

ラファウ・ブレハッチ、ウッチでの演奏会大成功(ポーランド)


ラファウ・ブレハッチ、ポーランドのウッチにてショパン協奏曲2番を演奏(アルトゥール・ルービンシュタイン・フィルハーモニー管弦楽団、指揮Christian Ehwald)。プログラム前半はブラームス交響曲第1番、後半がショパン協奏曲。補助席を出すほどの超満員で、演奏終了後、アンコールを演奏するごとにスタンディングオベーション。

22日にはポズナンでショパン協奏曲を演奏予定(ビゼー、フォーレのオケ曲が前半、ショパンは後半)。早々にチケットが売り切れたポズナンでは、前日21日の夕方、公開リハーサルを実施し、多くの視聴希望者を吸収します。(別の記事では、わずかに当日券あり、となっています。)22日には「ショパン協奏曲」CDのプラチナディスクと、フレデリック賞の授賞式も合わせて行われます。



以下は、ウッチでの成功を伝える英語Preludiaの記事です。
"Tonight Rafał Blechacz played Chopin's Piano Concerto No. 2 in Łódź Philharmony with Artur Rubinstein Philharmonic Orchestra of Łódź under the baton of Christian Ehwald.
He played in the 2nd part of the concert. Just finished half an hr ago.
The house was full and additional rows of seats had to be added.

When he finished the audience roared with applause and there was no end to the standing ovation. After the first encore there was again a standing ovation and again and again after two more encores.
A big success!

On Saturday Rafał plays the same Concerto in Poznań with the Poznań Philharmonic Orchestra under the baton of Michael Sanderling.
At the concert in Poznań Platinum Disk Award and two Fryderyk Awards will be handed over to Rafał by the President of Universal Music Poland.
Roman"


(The news received at 10:40pm, May 20 CET;
A sincere appreciation to Roman Frackowski for the wonderful news about the concerts AND the award giving!)




With Poznań Philharmonic
Received Platinum disc for CD "Preludes"
November, 2007



Preview of Poznan concert from Poznan naszemiasto (Polish)
"Since the tickets for the concert in Poznan have been sold out for months, a rehearsal will be held on the previous day or on May 21 with the public participation...His concerts always met with friendly reception by music lovers and critics who do not spare praise... They talk about the miracle pianist from Warsaw, highlight the natural elegance of the artist, his interpretations of Chopin are considered to be masterful, and some even say that Blechacz's music deserves the Nobel..."

Preview by Gazeta.pl Poznan (Polish)








2010年5月18日火曜日

コンセルトヘボウ・マスターピアニストシリーズでのブレハッチ―レビュー(オランダ)

5月9日、ブレハッチはアムステルダム・コンセルトヘボウのマスターピアニストシリーズで、2回目のリサイタルを弾きました。1回目は07年10月7日。コンチェルトも入れると、彼のお気に入りのこのホールでのコンサートは5回目となります。
以下は、アムステルダム最大の新聞De Telegraafに掲載された、Frederike Berntsenによるレビューです。オランダのファンであるヤンさんがわざわざ英語に訳して提供してくださいました。その和訳です。

ポズナン、2010年5月


ポーランド人マエストロのフレッシュな演奏

5年前、彼はワルシャワのショパンコンクールで優勝した。以来、ラファウ・ブレハッチは多くの重要なコンサートホールで演奏し、ドイツグラモフォンから何枚かのアルバムを発表した。日曜の夜、この若い才能はマスターピアニストシリーズ2回目のリサイタルを行った。

ピアノの学生にとって、コンセルトヘボウの大ホールでブレハッチを聴く、というのは絶対見逃せないだろう。わずか24歳でこれほどの才能。このピアニストにはテクニカルな限界は全くなく、舞台での演奏は感じがよく素晴らしい。良き聴き手としては、もう少し温かみとニュアンスがほしい、と思うところかもしれない。

モーツアルトのソナタk570では、彼はしっかりと手綱を握っていた。アダージョではより自由な演奏、一見シンプルなメロディにしなやかなラインと深い経験を喚起していた。ドビュッシーの「ピアノのために」では、冷静沈着なブレハッチのアプローチが、ときどき緩やかに塗った色彩や変化にとってかわった。アムステルダムのピアノシーズンのバッハといえば、パルティータはつきもの。既に今シーズンでは2番と6番の演奏があった。ブレハッチは1番を演奏した。

アムステルダム・コンセルトヘボウ
2009年7月2日
どのパルティータを選ぼうとも、いずれも美の奇跡だ。ブレハッチの解釈は良い意味でほがらかで、それは高速のテンポに表れ、バッハの音符の間の自然な静けさが幾分そこなわれていた。このポーランド人ピアニストは新鮮に、強烈なアクセントと類まれな感情表現で演奏した。ピアノ文学の宝石を扱うには、もう少しばかりの人生経験が必要だ。


ショパンのいくつかの作品は、彼の深く感じ取ったフレージングで響いた。バラード3番は比類ない演奏、また、魅力的な情熱がブレハッチのポロネーズの純粋な解釈を特徴づけた。人格と知性、水晶のように透明なタッチ。ラファウ・ブレハッチならではの能力である。
Frederike Berntsen





2010年5月14日金曜日

フレッド・チャイルド(アメリカ音楽ジャーナリスト)がブレハッチを称賛

English

「ラファウは比類なき若者だ――本物の芸術家で、ピアノの詩人。思慮深くて、自分の為すべきことを明瞭に語ることができる。今後も長く、彼の演奏を聴いていきたい。彼のバッハはまだ聴いたことがないけれど、うん、はやく聴いてみたいね!

・・・この特別なピアニストのための専用ウェブサイトを書いてくれて、ありがとう。」
(Fred Child:フレッド・チャイルド、パフォーマンス・トゥデイのホスト。

フレッド・チャイルドから頂いたメールです。
番組で、ブレハッチのアトランタでの演奏会から、ドビュッシーの「ピアノのために」を放送してくれたので、そのお礼と、「是非、同じ演奏会のバッハも放送してください!」と書いたメールを出したところ、びっくりするほど直ちにお返事をくださいました。

パフォーマンス・トゥデイ:アメリカの比較的高学歴層の幅広い支持を集めるクラッシック専門番組。ラファウ・ブレハッチは今年3月に、ワシントンDCのリサイタルの機会に同番組に出演。以後、ホストのフレッド・チャイルドは何度かブレハッチの音楽を紹介しています。)



以下は、メールをいただいた時に英語ブログに載せた記事です。

I listened to Rafał Blechacz's playing Pour le Piano by Debussy via Performance Today on May 10. I was so impressed that I e-mailed PT to thank Fred Child, the host of the program, for such a good selection. I also wrote that I enjoyed hearing Blechacz's interview in Washington DC with Fred Child for PT and made a request to air Blechacz's Bach 'cause it's really fabulous.

Unexpectedly, Fred Child gave me a reply mail very quickly.
Let me quote his mail.





(Quote)
Dear Akiko,
Thanks for your note, so glad you enjoyed hearing Rafal Blechacz on Performance Today.
He's a remarkable young man -- a real artist and poet at the piano, and quite thoughtful and articulate about his work, as well.
I look forward to hearing his playing for many years to come.
I haven't heard his Bach yet, but...can't wait to hear it!
All the best,
Fred Child
Host of Performance Today

(Unquote)


After getting his e-mail, I asked Fred Child for allowing me to post the e-mail on this blog.
He returned amazingly quickly.


(Quote)
Yes, you are welcome to quote my email on your blog.
Thank you for maintaining a website devoted to such a special pianist!
Cheers,
Fred Child

(Unquote)

Impressively, the way Fred Child deals with a small listener like me is caring and respectful, in the same manner when he talks with a distinguished, celebrated artist during his program.
Thank you very much, Fred Child.

2010年5月13日木曜日

ラファウ・ブレハッチ、けがのフレイレに代わり、シュヴェツィンゲン音楽祭に出演

ラファウ・ブレハッチは、5月14日、ドイツのシュヴェツィンゲン音楽祭にてリサイタルをすることになりました。当初演奏予定だったネルソン・フレイレが腱炎となり、代役ということで、12日にメディア発表になりました。
2006年のヴェルビエ音楽祭にて、ラファウ・ブレハッチが急病のランランの代役として急きょ演奏し強烈な印象を与えた際のレビューと、彼のインタビューを、以下にリンクしておきました。




On May 14, Rafał Blechacz will play a recital for Schwetzinger SWR Festspielen in place of Nelson Freire. The Brazilian pianist had to cancel his planned recital in the Festival due to the tendinitis. German media has reported that Freire will take a rest until August and the organizer was able to win Rafał Blechacz in his place.

@20:00 on May 14
venue: Rokokotheater, Schloss Schwetzingen


news from speyer-aktuell (German)
news from morgenweb.de (German)
Website of the festival-Blechacz's page (German)



Rokokotheater, Schloss Schwetzingen (←See beautiful pictures of the venue.)


For those who usually follow Blechacz's artistic performances, the news could be a reminiscence of his playing for the Verbier Festival in 2006, when Blechacz appeared instead of Lang Lang who became sick to make a sensational debut.

See a review & a short interview with Blechacz concerning the 2006 Verbier recital

2010年5月7日金曜日

イギリスのグラモフォン誌のレビュー―ブレハッチのワシントンDCでのリサイタルとCDショパン協奏曲について

(English)
ワシントン・ポスト紙の文化評論家であり、イギリスのグラモフォン誌のコラムニストである、フィリップ・ケニコットが、グラモフォン誌(2010年5月)に書いたレビュー記事です。
ラファウ・ブレハッチのCDショパン協奏曲(アメリカでは2月23日に発売)と、ブレハッチの2月27日のワシントンDCでのリサイタルについて書いています。


フィリップ・ケニコット

音楽の全体をつかむには、生演奏会と録音とのバランスが必要


散漫な心の動きに合わせて、耳も進化するのだろうか?
一週間ほど、ポーランドの天才児ラファウ・ブレハッチの新アルバム「ショパンピアノ協奏曲」を聴こうと試みた。一週間ずっと、よく意味がつかめなかった。犬が吠え、仕事が寄ってきて、リビングルームの隅ずみに埃が舞い、掃除機が響いた。そんなわけで、ブレハッチの演奏についてわかったのは、何とも表現しがたい、ということだけだった。最良の演奏というのは、言葉で言い表すのがむずかしいことが多い。大きなアピールのある演奏だとわかりやすい。攻撃的な面白さのあるカリスマ的、激しく、劇的な演奏ならば。しかし、繊細なアプローチで、細部にわたるニュアンスで満ちた演奏というのは、大層な言葉で断定しても、カバーしきれない。


繊細なアプローチは、大層な言葉で断定しても、カバーしきれない。


日常の注意を散漫にさせる事項から切り離されているリサイタル会場で、ブレハッチの演奏は天啓だった。明瞭、精巧、テンポとダイナミクスの自己規律と成熟度は衝撃だった。もちろんラジオや録音でぞっとする声を聴かせるが、ライブだと完全に魅了できる歌手がいる。しかしそれは、マイクのちょっとした動作にすぎない。ブレハッチは違う。彼の音楽性は、正しいレパートリーで、正しい条件のもとで開花する。そして、正しい条件のうちもっとも重要なのは、聴き手のマインドだ。

ショパンの協奏曲は社会の財産、外向的な楽譜、ヴィルトゥオーソの伝統に基づく音楽だ。そのうちのひとつはフリードリヒ・カルクブレンナーに献呈されており、1830年のショパンの意識や熱意がどこにあったのかが示されている。ブレハッチは確固とした詩心と透明な心で演奏し、利己的な自己主張に屈することはない。荒々しさや尊大さ、感傷は皆無だ。.あたかも、アルフレッド・ブレンデルがベートーベンを弾くかのように、これら協奏曲を演奏している。

このことは、安易な追従を求める耳を失望させることになる。もし数週間後に同じピアニストが別のショパンを演奏するのを聴かなかったなら、―それは全く違うショパンだったが―、たぶん私はこのCDをどこかにしまいなくして、未消化のまま終わったろう。しかし、彼のリサイタルが、全部を変えてしまった。

2005年のショパンコンクールの優勝者ブレハッチは、学生のような風貌だった。彼のリサイタルプログラムも課題曲のような広範なもの(バッハ、モーツアルト、ドビュッシー、ショパン)で、あたかも賞をとろうとする学生のようだった。聴衆を前にした彼のひかえめな雰囲気は、彼の演奏の謙虚さにも反映していた。彼は最善の意味で篤学で、探求し追求していたが、常にテキストの範囲の中にいた。バルザックの「幻滅」にある、安っぽい知識人のみかけだおしを恥と感じる、熱意に満ちた少数の詩人、哲学者、科学者のことを、ずっと考えていた。パリのエスプリではないにせよ、どこかで、ブレハッチの名を記した屋根裏部屋があるように感じた。

リサイタルで彼が選んだのは、暗くプライベートなショパンの側面。ピアノ協奏曲のどこでも聴くことのできない、発作的な内向きに黙想するショパンだ。「幻想ポロネーズ」―ショパンが有名なポーランドのダンスとともに演奏した、あの奇妙で巧妙なゲームを、本当に理解できる演奏者が一体何人いるだろうか。病的なまでの内省に満ちた激情の中、ポロネーズはむしろ破壊されている。ブレハッチは、この断片からなる曲をつなぎ合わせ、一貫性のある、微小な動きを観るため身を乗り出させるようなドラマに仕上げていた。




ラファウ・ブレハッチ:際立った成熟度

彼はバラード変イ長調とスケルツォホ短調でも同じように、純朴と激情とのくっきりとしたコントラストを巧みに表した。両作品とも、不思議なほどピアニスティックだが、形式的ではない。ブレハッチのテクニックは明瞭さや各音符の独自性、ショパンが音のあいまいさを求めていると思われる時でさえ純粋なアーティキュレーションを強調する。彼は、これらの作品で管弦楽的な豊かさを示唆することには興味がないようだ。ピアノで十分なのだ。ピアノのテクスチャーと可能性があれば、ショパンが譜面に残したものを全て捉えるのに十分だ。


彼が唯一のアンコールにマズルカ作品17-4を選んだのも驚くに値しない。私たちは十分にブレハッチに称賛の意を贈り、彼はショパンのもっとも苦しみに満ちた絶望的な小さなエッセイで、聴衆に報いることにした。このチョイスは、彼がいかに深くこの作曲家を理解しているかを十二分に物語っていると感じる。彼が求めているショパンは、若いショーマン、完ぺきなパリの細密画を描く名匠としてのショパンではない。彼は、ポーランド人としてのショパンに興味があり、従って、この生誕200周年の機会に、この主題に関し若いポーランド人の演奏を聴けるのは良いことだ。


もう一度、ショパン協奏曲の録音を聴いてみる。まったく違って聴こえた。私はオーケストラの前奏は不要に気を散らされるようで、はやくブレハッチが聴きたくてうずうずした。ブレハッチだけが聴きたい。彼の演奏が、初めて、輪郭を持って立ち現れた。彼のせいではなかった。私がいけなかったのである。録音が醸し出す空虚な世界に何時間も過ごしがちな私たちにとって、コンサートホールに定期的に詣でるのは重要だ。そこで生まれるアーチストと聴衆との絆によってこそ、私たちは音楽の全領域に適応した耳で聴くことができるようになる。



フィリップ・ケニコットの、ワシントンDCのリサイタルに関するレビュー(ワシントン・ポスト紙)
それに対する読者のコメント

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