Preludia - Unofficial website for Rafal Blechacz

Blog

2010年7月29日木曜日

ブレハッチと彼のスタインウェイ-オーストリアでのインタビュー (2007年秋)(2)

English

「私のアーカイブ」から;
オーストリアのスタインウェイの雑誌Klavier の2008年4月号に掲載された、ラファウ・ブレハッチのインタビュー(1)からの続きです。インタビューは2007年11月、ウィーンのコンツェルトハウスでのデビューリサイタルの翌日に行われたようです。(1)では、2006年の春に自分のスタインウェイをハンブルグで選んだ時のエピソードも語っていました。

インタビューは4ページからです。2つクリックしてください。

--あなたはポーランドの人口2万人の町で生まれ、育ちました。そして突然東京の大きなステージに現れることになりました。この2年間、常にカルチャーショックを感じていたのではないですか?

実際はそうでもありません。新しい都市や新しい人びとに出会って新しい文化を経験して、面白いです。例えば、日本の文化は私たちヨーロッパの文化とは随分違います。といっても、ツアーの間はミーティングやインタビュー、リハーサル、演奏会と、スケジュールがいっぱいなので、街を見る時間はあまりないのですが。もちろん最初は、巨大なコンサートホールに慣れる必要がありました。でも僕は大勢の人たちのために演奏するのが好きです。人びとのための演奏は、いつも喜びを与えてくれるし、今、世界の舞台でそれが続けられて、幸せです。

--日本では特筆すべきことはありましたか?

例えば、食べ物が全然違うので、まず慣れなければなりません。最初、それがちょっと大変でした(笑)。僕は寿司とか生の魚を喜んで食べる方ではないので、最初はポーランドの食べ物が恋しかったです。今は寿司も食べますが、最初はつらかったです。もう一度日本を訪れた時、名古屋にポーランド料理のレストランを見つけました。日本にはイタリア料理もアメリカ風のレストランもありますから、今はそんなに悪くないですよ。.

--聴衆はコンサートの舞台で貪欲にニューフェースを求めます。より若くて、華やかで、誰よりも速く大きな音で演奏して、―そういうことが、長年、成功のレシピと考えられていました。そこへあなたが突然出現しました。派手なところは全くなく、とても控えめで、ポーランドの小さな町からどこからともなく現れて、マスコミも一般聴衆もあなたの演奏の自然な感じ、誠実さ、優雅さ、安っぽいショー的要素が皆無なところに夢中になっています。あなたは、マーケットの中で欠けているものを発見したのでしょうか?

わかりません。何といったらいいでしょう。一番大切なのは、作品の中に自然さを探すことでしょう。僕は特別なことをして聴衆にショックを与えたいというタイプの演奏家ではありません。音楽的に根拠のないヴィルトゥオーソ的要素を見せようとか、自分をアピールしたいとかいうことは望んでいません。そういうことは、僕のパーソナリティとは合い入れません。

もちろん、ヴィルトゥオーソが必要で、それを見せなければならない曲というのもあります。でも僕にとって、ヴィルトゥオーソとかテクニークというのは、作品を支配するようなものではありません。僕は作品から音楽そのもの取り出して、自分はそれに従おうとしています。僕の意見では、音楽で一番大切なのは、作品にこめられている感情(感動)**です。


ウィーンのスタインウェイハウスで、チーフエンジニアの
 Stefan Knüpfer他ジャーナリストの質問に答えるブレハッチ


"僕は特別なことをして聴衆にショックを与えたり、
自分を見せつけるようなタイプの演奏家ではありません。"


--ショパンコンクール以降、あなたは何人かの有名なアーチストと対比されていますが、そのことで影響されていますか。音楽的にこのような比較を避けることはできるのでしょうか?

僕はまだキャリアの始まりのところにいますし、今後アーチストとしての大きなチャレンジが待ち受けていることにも気づいています。ビッグ・アーチストと比較していただけるなら、それは僕にとって喜ばしいことです。ただ、僕のキャリア・パスや演奏は僕独自のものだ、ということもわかっているし、他の人の演奏に影響されない自分のレパートリーを運用し、作品に対する独自のビジョンを持つべきだと思っています。

音楽では、演奏家が独自性を保つことはとても大切です。もちろん、他のアーチストの経験を生かしてもいます。彼らの録音を聴いて、良いインスピレーションを得ることもありますし、自分の解釈の探究の参考にすることもあります。しかし、全てのアーチストは自分の道を行くべきだと僕は思っています。そうすることによってのみ、その演奏は聴衆にとっても自分にとっても、良いものになると信じています。
(インタビュー終わり)

**
ラファウ・ブレハッチは、音楽について語る時、よくfeelingsとemotionsという言葉を使います。どちらも感情なのですが、emotionsの方がより深い感じ、「感動」という日本語が近いのだと思いますが、悟性に近い部分の心の動きをさしているように思います。

*****************************
以下は、このインタビューの前日、ウィーンコンツェルトハウスでのデビューリサイタルに関するレビューの抜粋です。ラファウ・ブレハッチ公式ウェブサイトより。


若き詩人の如く
ピアノ界のニューフェース。ブレハッチが他の若手ピアニスト達と決定的に違うのは、彼の類まれなる音のセンスの良さ。珍しい指の使い方(unusual finger execution)に加えて、彼は最高レベルの音楽性を示す。技術的には全てがパーフェクト、これに加え、ブレハッチは各フレーズにおいて、抜きん出たピアノタッチの音の美しさを見せる。色彩のパレットを壮大に輝かせることで見事にに雰囲気の濃淡を表わしている。ガラスのような完璧さではなく、豊かで情緒あふれる音を実現している。
Oliver A. Lang, Kronen Zeitung(オーストリア最大の日刊紙), 2007年11月20日

ウィーン、ラファウ・ブレハッチに魅了される
ラファウ・ブレハッチがコンツェルトハウスでデビュー、彼の初CDに対する良い印象を証明した。彼はショパンを、ポーランド的に、フランスの香りなしに演奏する。確固としたリズムを保持しながら、洗練されたルバートでピアノにメロディを歌わせることができる。彼の技術は完璧だが、それ自体は彼の目標ではない。繊細なピアノからフォルテシモに至るまでのダイナミクスを、急な爆発なしに弾きわける。各小曲を明瞭に語りながら、内部に神秘を感じさせ、これが、このアーチストを比類なきものにしている。神秘性なく単に音を鳴らすような多くのピアニストは職人にすぎない。
Karl Loebl, Oesterreich(「日刊オーストリア」、最近発刊), 2007年11月20日

ポーランド人アーチストにとって、ショパンを弾くことはあまりにも近すぎ、同時に困難だ。ラファウ・ブレハッチにとっても、それは言うまでも無い。彼はショパンを氷の宮殿から開放した。彼は強い打鍵もできるのだが、彼のショパンは官能的で地に足がつき、自己確信にあふれ、かつ神秘的で心の琴線に触れる。無駄話はしないのに、多くのことを語ってくれる。ラファウ・ブレハッチは自分の技術を顕示せず、快活さと賢明な魂で、自国の音楽の神聖さを復活させた。
Kurier(オーストリアの大衆紙), 2007年11月20日

もっと読む(コンセルトヘボウでのリサイタルデビューのレビューも載っています(日本語)

******************************
ラファウ・ブレハッチは今年の12月10日、ウィーンのコンツェルトハウスの大ホールで演奏(協奏曲)します。


*****************************
このウェブサイトに引用している画像・文章等は、著作権を有する所有者に属するものがあります。
このサイト www.blechaczinfo.com 独自の著作物を引用なさる場合は、事前に サイト管理人 にご相談くださいますよう、お願い申し上げます。