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2009年7月25日土曜日

人生と音楽で大切にしているのは、自然であることです。―ラファウ・ブレハッチインタビュー(ポーランド)

ラファウ・ブレハッチがRMF Classic というポーランドのラジオ局のインタビューを受け、その内容が同ラジオ局のウェブサイトに7月24日に公開されました。
3枚目のCD "Chopin The Piano Concertos"の録音の状況などを話しています。


ブログのこの題名「人生と音楽で大切にしているのは自然さです。」のもとになった部分、
Zawsze stawiałem na naturalność w życiu i muzyce.

文字通りの意味は、「人生と音楽において、僕は常に自然さに立脚してきた。」or 「常に自然さを強調してきた。」
(だと思う。私はポーランド語の学習者ではないので。辞書をひいて、文法に従って並べただけです。)

あるいは、「自然さ」という言葉は日本語としてとても不自然なので、
「僕は常にナチュラルでありつづけようとしています。」「自然体を心がけてきました。」

でも、ブレハッチの雰囲気からして、もう少し「やまと言葉」で表現したいなあ、と思い、「大切にしている」としてみました。

ブログをアップしたあと、「あ、この表現は、今年ブレハッチが来日したとき雑誌に出たインタビュー記事と同じだ。」
と気づきました。

雑誌の表現をまねしたわけではないし、雑誌の方でブレハッチが原語で何と言っていたかももちろん知らないし、たまたまです。
でも彼の基本的な考え方はこういうことなのだと思います。


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人生と音楽においては、自然さを大切にしています。2つのコンチェルトの録音では、正直に、僕の心からまっすぐ流れ出るように演奏しました。
傑出したポーランド人ピアニストは、また勤勉な夏を過ごしている。ラファウ・ブレハッチはドイツ・グラモフォンからの3枚目のアルバム、ショパンの2つのコンチェルトの録音を終えた。録音セッションの裏話やショパン、今後の計画について、マグダ・ミシュカが話を聞いた。


***

-7月の始めにアムステルダムのコンセルトヘボウで演奏なさいました。世界でも屈指のホールですが、このような場所での演奏は、あなたにとって重要ですか。

もちろん重要です。このコンサートはドイツ・グラモフォンが録音しましたから、僕は幸運です。コンセルトヘボウでの演奏会は今回が4回目、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)との共演は2回目で、僕にとっては素晴らしい経験となりました。アムステルダムの聴衆を前にすると僕はいつも幸福な気持ちになります。


-アムステルダムの聴衆は率直ですか、それともあまり感情をあらわに表さないのでしょうか。

聴衆は熱意に満ちていますが、同時に洗練され音楽に精通しています。このホールではとても幅広いレパートリーが演奏されており、偉大な芸術家達が演奏を重ねてきました。このような聴衆に、今回も喜んでいただき、うれしいです。


-スタンディング・オベーションでしたね。

アムステルダムの聴衆は、僕が去年サンサーンスのピアノコンチェルトト短調を演奏したことを覚えていて、今回はショパンを心から歓迎してくれました。前半のコンチェルトヘ短調で既にスタンディング・オベーションでした。僕はオーケストラの団員がポーランドの民謡風の部分を演奏する様子を見て、とてもうれしくて楽しかったです。オケにとっても素晴らしい経験だったのでしょう。


-このホールは音響が良いことで有名ですが、ご自身でも感じましたか。

はい。音響はリハーサルの時も素晴らしかったです。聴衆がいないリハーサルの時と、音を聴衆に届ける本番と、両方録音しました。


-この会場のスピリットを感じましたか。巨匠が数多く演奏していますが。

歴史のあるホールではどこでもそういった雰囲気を常に感じます。
会場の魅力が僕の感情を盛り上げ(nastrajać、~の気分にさせる、楽器を調律する)、演奏や美しい解釈の発見を助けてくれます。ですから、こういう会場で録音することが大切だと思います。


-演奏会の後もアムステルダムに留まり、コンセルトヘボウで最新アルバムの録音を続けました。次のアルバムに向け、夏の間に取り組まれましたね。

そうですね。演奏シーズンは普通6月半ばに終わりますので、夏は演奏会活動は休みになります。オーケストラもこの時期空いていましたので、7月第一週に録音をするよう計画できたのです。僕は夏が好きです。新たなレパートリーに向けて取り組むように促されます。


-今度のアルバムはショパンの2つのコンチェルトです。これは欠くことのできない大切なステップですか。

アーチストの仕事は常に開拓し改善を目指すことです。確かにこのアルバムはショパンに関連した更なる一歩です。ショパンコンクール後の数年間、僕は2つのコンチェルトを、様々なオーケストラや指揮者と共演してきました。この経験は解釈・演奏に影響しています。今最も重要なのは、このプロジェクトの準備のために最善の方法を選ぶことです。僕とドイツ・グラモフォンは、僕が気持ちよく演奏できるオーケストラを選びました。僕にとってもDGにとっても、これはとても重要なことでした。


-コンクール以降、どんな風にショパン音楽へのアプローチが変わりましたか。

言葉で言うのはむずかしいのですが、アーチストとして成熟していく、自然なプロセスだと思っています。特定の作品をさまざまな異なった場で提示することで、その作品が、指だけではなく心と知性によって凝縮されていくのです。大きな変化というのはありません。僕は解釈上論議をかもすようなアイディアを支持したことは一度もありません。僕は常に人生と音楽において自然さを大切にしています。2つのコンチェルトの録音では、正直に、僕の心からまっすぐ流れ出るように演奏しました。僕はフレデリック・ショパンが寄り添うような感情を求めています。ショパンの様々な感情に入り込み、僕の経験のプリズムを通じてそれらを表現したいのです。


-あなたにとって2つのコンチェルトは、ショパン作品の中で最も重要ですか。

コンチェルトだけが最も重要ということはありません。ショパンの全ての作品はとても豊かです。全作品を全部取り出しても、20時間を超えません。せいぜい22時間程度です。しかし、どの曲も全て、本当に美しいのです。ショパンのコンチェルトは、オーケストラとともに演奏する曲という意味で価値があります。ドイツ・グラモフォンとショパンプロジェクトについて考え、議論したとき、ショパンのコンチェルトを取り上げよう、というアイディアを思いつきました。僕もグラモフォンも、2010年という年を強調したいと思いました。コンチェルトは僕の長年のレパートリーですので、僕はこれを演奏することに決めました。ステージで演奏を重ね経験をつんできた作品を録音することは意味があると思います。様々なディテールを追求し、深めて、解釈の核心をつかむことができますから。


-ほんの2,3ヶ月前、あなたは、新アルバムで共演するオケはサプライズですよ、でも最高の音楽家達です、とおっしゃっていました。RCOとの共演はどんな風に実現したのですか。

僕は1年前このオケと出会い、これはショパンのコンチェルトを演奏するにはドリーム・チームだと思いました。ベルベットのような音色や、気高い至高の響きに魅せられました。第一楽章を録音したとき、バスーンやフルート、ホルンの小さなソロ部分は、本物の若手による傑作でした。このような音楽家達と共演でき、録音された演奏を聴いていると、もう、本当にうれしくなります。


-オケはどんな人たちでしたか。

すごく暖かくて。1回目の録音セッションは6月30日、ちょうど僕の誕生日だったのですが、オケは僕を勝利のファンファーレで歓迎してくれました。若手の音楽家もたくさんいます。彼らはポーランド特有のリズム、例えばヘ短調コンチェルトのマズルカのようなリズムを演奏する喜びを引き出していました。すごく柔軟で、僕の意図を全部感じ取ってくれました。ソリスト、指揮者、オーケストラの絆はとても大切です。


-録音セッションはどんな感じで行われたのですか。

僕は朝8時にはコンセルトヘボウ入りしていました。もっと早い日もありました。セッションは朝10時に始まります。まずピアノが準備されました。録音開始の数日前に調律士と話す機会がありました。彼と良い関係ができて、おかげで、僕が望むようにそれぞれの曲に適切な形で調律してもらいました。


-ピアノはどうでしたか。

スタインウェイのコンサート用グランドピアノです。僕は本当に素晴らしい楽器に出会えて、アムステルダムで毎回このピアノで演奏してきました。4年近くになりますが、本当に素晴らしいピアノです。


-録音セッションの話に戻りましょう。

まずホ短調から始めて、次にヘ短調を行いました。休憩は25分、セッション全体の時間は3時間半、このような録音セッションを合計6回行いました。これには、演奏会前のゲネプロと演奏会も含まれます。相当、十分な時間がありましたので、プレッシャーを感じることなく実験することができました。例えば、ヘ短調コンチェルト2楽章の有名なレチタティーヴォは、3種類のバージョンを録音しました。3回とも、それぞれ少しずつ違います。いろいろなバージョンを録音して、自分たちに最も合ったものを選ぶ、というのはマエストロ、イェジー・セムコフのアイディアでした。


-ドイツ・グラモフォンとの数年間の協力で、どんな学びがありましたか。

録音プロセス全体をコントロールすることが重要だ、ということです。ポーランドに戻って録音したものから距離をしばらくおきました。その後、マテリアルを聴き、最良のものを選ぶためにハンブルクへ行きました。(注:この部分は、1,2枚目のCDの時のことと思われます。今回ハンブルクに行くのは、このインタビューの後になるでしょう。)同様に重要だったのは、ドイツ・グラモフォンの人々と、プロジェクトやレパートリーについて話し合うことでした。DGはドイツ、フランスといった市場や聴衆の趣向を熟知しています。このような指揮者やチームを選ぶ、ということも素晴らしいことでした。


-アムステルダムを観る時間はありましたか。

今回はありませんでした。以前は少し時間がとれました。アムステルダムは美術館も多く、とても面白い町です。今回は残念ながら時間がとれませんでした。録音セッションの時間は限られているので、終わるとピアノに戻って練習しました。音に取り組み、調律士と話し、午前中録音した部分について質問をしました。ただ、今回は両親と妹が一緒だったので、家族はアムステルダムの魅力を満喫することができました。


-ショパンイヤーが近づいてきました。世界中で様々なイベントが行われます。商業的な形でショパン物語とか、映画とか。どう思いますか。

いいと思いますよ。そういう方法が、普段音楽に関わりのない人たちにも接点を持たせるのであれば、いいアイディアだと思います。


-CDのプレミアは9月18日。今後の計画を聞かせてください。

2010年はコンサートを集中的に行います。ヨーロッパでも一連の演奏会を計画していますし、アメリカ、日本でも本格的なツアーを行います。CDの録音は2009年の後半に終わらせたかったのです。そうすれば2010年はコンサートに集中できますから。


-お時間、ありがとうございました。

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2009年7月18日土曜日

「ピアノとのかかわりは捨てません」―ラファウ・ブレハッチ、インタビュー(ポーランド)

「Wprost Light」09年7月12日号に掲載の、ラファウ・ブレハッチのインタビューです。

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「ピアノとの関わりは棄てません。」

2005年ショパンコンクールの覇者ラファウ・ブレハッチ、音楽への愛、コンサートの魔法、将来のプランを語る。


ラファウ・ブレハッチはこれまで一度も――幼いころからずっと――音楽への気持ちがくじけたことはないと言う。しかもそれは、両親から強制的にピアノを弾かされた、というのとは全然違う。子供の頃からすでに将来何をしたいのかわかっていた、と彼は言う。長時間連続してピアノの練習を続ける能力は、周囲を心から驚かせた。

だからと言って、彼がピアノのみに若い時間を費やしていたわけではない。普通に成長したんです、と彼は強調する。ボール遊びもしたし、自転車も乗り回した。

しかし、ある時点で、音楽の重要度が増し、彼にとって必要不可欠な要素となった。
ひとつの単純な事実が、将来の道を決めるのに最大の役割を果たした。この若い音楽家は、他の人々のために演奏することを、心から愛したのだ。

かつて演奏会を開き楽しんだ日々を、この若いピアニストは思い出す。ミサのような式典で伴奏をしたとき、わくわくするような雰囲気が湧き上がるのを感じた。

「演奏を始める前の、部屋に満ちわたる静けさに魅せられました。最初に鍵盤に触れる直前の静けさは、これから具体的な感情を伝えるのだ、という徴候であり、
鍵盤に触れた瞬間、僕は部屋の中の聴衆と交流していると感じます。
そして、最後には人々の拍手で報われるのです。」とブレハッチは語る。

この点は、今もかつてとあまり変わらない。
聴き手が満足すること、これが、この音楽家にとって最高の賞であり、さらに技術を磨くための動機付けとなる。

家族には昔からアマチュア音楽の伝統が続いていた、と、この音楽家は述懐する。祖父は音楽隊に属し地元の祝典で伴奏していたし、父とおじもピアノを弾いた。ラファウが生まれたとき、家にあったピアノが彼を迎えた。

幼いラファウはピアノによじ登ってはメロディを探り、両親はすぐに察した。5歳のとき、彼をナクウォの音楽センターにまず入れ、その後、ビドゴシチの音楽学校へ送った。

おそらく、この音楽家の子供たちも、同じ道を歩むことになるのかも知れない。
しかし、家庭を持つ予定は、今はない、と言う。

音楽に加え、彼は学問も吸収している―2008年より、トルンのニコラス・コペルニクス大学の哲学科博士課程で勉強している。

ラファウ・ブレハッチは友情について語ってくれた。彼と、クリスティアン・ツィメルマンをつなぐ友情である。
ショパンコンクールでの勝利の後、二人は7日間を共に過ごした。その間、多くの時間をショパン、ドビュッシー、ベートーベンを弾いて過ごした。そして、ツィメルマンはきっちりと勉強すべき音楽として、CD30枚をブレハッチのために探してくれた。

こうした親しい関係は、クラッシック音楽の世界では主流となっている。例えば、ツィメルマンが成功した直後、アルトゥール・ルービンシュタインと1週間滞在した、と言えば十分だろう。
むろん、プロの演奏家の環境では、友情もあれば、競争・ライバル関係も存在する。
しかし、この若いピアニストは特に気にしていない。

「様々な音楽解釈があるわけですから、いいことだと思います。絵画のギャラリーと同じように、聴き手は自分で好きな音楽を選べます。どの演奏家もそれぞれ聴衆がいるわけです。」と言う。

しかし、この音楽家は、ある一定の限界線を越えないことが重要だ、と指摘する。
自分は聴衆のために演奏するが、聴衆に支配されて弾かされるのではない、と。
また、大きなコンサートホールを離れ、ひとり自分自身のために弾くのも楽しみにしている、とこのピアニストは強調する。

もしコンサートをやめなければならないとしたら、それはとてもつらいことだろうが、自分は耐えられる。
しかし、ピアノとの触れ合いは、決して棄てることはないだろう、と。

ピアノ。ブレハッチは人生でピアノをとても愛しているが、それだけが音楽への関心の全てではない。彼はツィメルマンやバレンボイムのように、指揮棒を持ちたいとの誘惑にかられると言う。指揮についての知識をもつことで、音楽の解釈の助けになるし、協奏曲の際、ソリストからの要求をオーケストラに伝えやすくなるのでは、と彼は考える。

ブレハッチはオルガンの演奏も好きだと強調するが、ショパンコンクールの後はそのための時間が減ったとも言う。オルガンの音色や教会での演奏は、魂の輝きと平和な静けさを醸成すると考える。

クリスティアン・ツィメルマンは、ブレハッチが自分に続いてピアニストとしてのバトンを受け取ってくれるだろうと、以前、語った。ブレハッチは喜びを隠すことはなく、こう言った。

「とてもうれしい言葉です。僕の芸術家としてのあり方が適切だということの証明ですから。」
さらに、これはとても大きな決意と約束を伴うものだ、とも。

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2009年7月4日土曜日

ラファウ・ブレハッチ、ショパン協奏曲録音のための演奏会好評(オランダ、ポーランド)

日本時間の4日早朝に、コンセルトヘボウでの演奏会を鑑賞したオランダのファンの方からの感動のメールが届き、また、オランダの新聞Trouw紙のレビュー、オランダNRC紙のレビュー、ポーランドラジオのJacek Hawrylukのレビューが公開されましたので、英語訳をポストしました。ご覧ください。

極めて完成度の高い演奏会だったようで、Trouw紙は、24歳のブレハッチと81歳のセムコフの共生(Symbiosis)と、ブレハッチの深い内省的音楽性を高く評価、
ポーランドラジオのHawrylukは、ブレハッチの高貴で思慮深く、また新鮮で明るい音色をたたえ、特にソリストが自由に歌うことができる各2楽章での繊細でロマンチックな演奏を賞賛しています。

また両メディアとも、RCOの演奏の質の高さに言及、とりわけバスーンとホルンの美しさをたたえています。ブレハッチはバスーン、ホルン、フルートを賞賛しています。
HarwrylukはRCOのすべてのパートの音があるべき姿で聴こえる点を言及していますが、私も同じ感想をかねてから持っていたのでうれしかったです。

録音セッションは4日土曜日まで行われ、その後、ブレハッチが、録音されたものから最も良いセグメントを選び出す作業・試聴に入り、ドイツでのCD作製の詰めの作業にも参加したいとの意向を述べています。

コンチェルトの世界でのプレミアは、9月18日、との記述もありました。

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ラファウ・ブレハッチのショパン協奏曲録音のための演奏会に関する、レビュー(ポーランド)

ポーランドラジオのJacek Hawryluk が、7月2日のアムステルダムコンセルトヘボウでの演奏会について書いたレビューです。

もとレビューはこちらから。 

例によって、まず英語にしてから日本語化してます。和訳の精密さは、82%位だと思ってください。
Hawrylukはむずかしい単語をいくつも使っており、ポ英辞書に出ておらず、英語でどういう単語になるのか、具体的にイメージできない部分がたくさんありました。

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一度の演奏会でショパンのふたつのコンチェルト―ラファウ・ブレハッチは午前中、威信あるドイツのレーベル、ドイツ・グラモフォンからの新譜を録音、夜は今取り組んでいるものを聴衆に披露した。

「ここの聴衆は、僕の聴衆でした。」と演奏後、明らかにリラックスした雰囲気でブレハッチは言った。ここはアムステルダム・コンセルトヘボウ、ヨーロッパ屈指の演奏会場。ブレハッチにとって、ここでの演奏は4回目になる。

休暇の季節とはいえ、木曜日の夜にもかかわらず満席。前半、コンチェルト第2番へ短調作品21の演奏が終わるや、既にスタンディング・オベーションとなった。

後半、コンチェルトホ短調作品11を演奏し終えたときには、真の幸福感が満ち満ちた。ちょうど、私も覚えているが、このピアニストが圧倒的勝利を収めた2005年のコンクールと、似た雰囲気だった。


録音セッションはこのコンセルトヘボウで、火曜日(この日、6月30日は彼の誕生日だった)から、毎日午前中行われている。ブレハッチは、ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団と共に、ドイツグラモフォンからの3枚目のアルバムを録音する。ショパンの前奏曲、ウイーン古典派に続いて、再びのショパン。来る2010年のショパンイヤーを考えれば、当然なすべきこと。新譜は、イェジー・セムコフの指揮により、ふたつのコンチェルトが入る。

追加の“試み”として、二人のアーチストはともに今自らが取り組んでいるものを聴衆に見せようとした。プログラムの前半、後半ともに、まずモーツアルトの序曲でスタート。最初は堂々とした快速の「フィガロの結婚」、後半はより躍動感にあふれるトルコ風の「後宮からの誘拐」。

細かなディテールもきちんと聴こえる。だからこそ、アムステルダムの王立管弦楽団は、12月にイギリスの音楽誌「グラモフォン」の評論家から、世界の最優秀オーケストラとして顕彰された。(ベルリンフィルやウィーンフィルを抑えて、である。)演奏は清明かつ明瞭。オケの各パートの個々の部分が聴こえ、非のうちどころのない音調を創り出す。指揮者に喜びを感じさせる―彼は楽団員をちらっと見るだけで、ただちに理解できる。



7月2日、演奏会前のコンセルトヘボウ



ブレハッチとセムコフはコンチェルト2番へ短調から演奏を開始した。(年代的にはこちらのコンチェルトが先に作曲された。)二人とも、この偉大なチームを自由に使える機会をフルに活用しようとした。ポーランド人指揮者は、オケの各パートに対してゆったりと振り、アムステルダムの楽団員達に演奏の自由を与えた。こうして創り出された音は豊かで飽和して、まさにシンフォニック。セムコフはオーケストラに完全な権限を渡した。(この方法は1999年にクリスティアン・ツィメルマンが室内楽的な祝祭管弦楽団でとった方法と、根本的に異なる。)

ブレハッチもまた、自らの価値を証明した。彼は本物のヴィルトゥオーソ、高貴な熱意を持ち、思慮深く演奏する。型にはまりルーチンに損なわれることはない。弾けるような新鮮さと楽観的な音色―ショパンの初期の作品には理想的な長所を持っている。今なお、より良いテンポ・ルバートを探し、試している。(特に最終楽章で。)真ん中の自由な楽章で、ブレハッチは絶妙の演奏をした。親密な出来事(←恋のことだと思います。)の物語のための、繊細かつロマンチックな響き。ホ短調コンチェルトのクラコヴィアクでは、あたかもオーケストラに、このフレーズはこう弾くんだよ、と語りかけるようなダンスのリズムの演奏だった。

録音セッションは土曜日(7月4日)に終了する。
「これから、大変な作業が待っています。」とブレハッチは笑った。
「僕が、最も良いポーションを選んで、全体を構築します。試聴をし、提案もします。ドイツでの最終のディスクの作製にも参加したいと思っています。」

このピアニストは、レパートリーに対する構成の精密さを、おそらくクリスティアン・ツィメルマンから継承するだろう。ツィメルマンはいつも録音のモニターはかなりのこだわりを持っている。

ロイヤル・コンセルトヘボウの楽団員達は、ラファウが好きなようだ。相互の親しい関係が感じられた。
「このオケの演奏ときたら!」とブレハッチは賞賛する。
「ホルンはとても美しい演奏でした。バスーンフルートもきれいでした。両曲とも、2楽章が素晴らしかったと思います。演奏会では、とても自発的な雰囲気があって、録音のときの、ルールに従う感じとは違いますね。」

2つのコンチェルトの世界でのプレミアは、9月18日。もし、今週木曜日のアムステルダムの夜のようになってくれたら、喜ばしいのだが。この夜も最初はコンセルトヘボウの演奏で始まったけれど、皆の心に残っているのは、ピアニストがアンコールで美しく弾いたマズルカだ。もし、ドイツ・グラモフォンのプロデューサーを説得して、マズルカ全曲を録音することができるなら。。。これまでは、無理だったろうけれど。

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Jacek Hawryluk は、これまで、ブレハッチに対しては、「あら探し」的な書き方をしてきたそうです。例えば、2006年3月1日、ショパンの誕生日にワルシャワで行われた演奏会は、かなりの酷評だったとか。
(正確な文言は探さないと思い出せませんが、「音楽学校で勉強しなおす必要がある。」みたいなことだったかと思います。)
最近では、今年の3月に、ポーランドTVのインタビューで、粘着質の質問をしていました。

しかし、今回は、なだれのように賛辞がつぎつぎと出てくるので、意外でした。
彼自身も夢中になった感じです。
本当に良い演奏だったのだろうな、と、とてもうれしく思います。

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2009年7月3日金曜日

ラファウ・ブレハッチ、新CD「ショパン協奏曲」の録音、順調@アムステルダム

ラファウ・ブレハッチは、現在アムステルダムに滞在、秋に発売される新CDのための、ショパンの2つのピアノコンチェルトを録音しています。


6月26日にアムステルダム入りした後、翌日から準備を開始。
録音セッションが始まった彼の誕生日の6月30日には、コンチェルト2番の録音にとりくみました。

体調もよく、オーケストラ・指揮者(イェジー・セムコフ)、何よりコンセルトヘボウの楽器の調整が素晴らしく、良い音が出るということで、ベストの条件に喜んでいるとのこと。
調律担当の技術者Michel Brandjes を賞賛しています。


7月2日の夜、(日本時間3日早朝)、アムステルダム・コンセルトヘボウにて
ショパンの2つのコンチェルトの演奏会を、開催、録音も行われました。
チケットは2月末に完売したとのこと。
(私も覚えています。2月半ばに、チケットのサイトを見たところ、100席程度しか残っていませんでした。座席数2037席。)

2番→1番の順に演奏し、それぞれスタンディング・オベーションとブラボの大歓声を受けました。
アンコールは、ショパンマズルカ作品17の4。

これに先立ち、2日の午前9時半からはリハーサルが行われ、これも録音されましたが、非常にうまくいったそうです。

数日後、録音セッションを終えた後、ドイツ・デンマーク・スウェーデン経由で、プレスインタビューもこなしつつ、ポーランドに帰国するとのことです。

以上、海外のファン等からの情報をもとにまとめました。
詳細はこちら(英語)の、最新記事をいくつかご覧ください。  



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