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2009年12月26日土曜日

ラファウ・ブレハッチがパラグライダーでグランド・キャニオンを飛ぶ・・(インタビュー、ドイツ)

ドイツの雑誌KlassikAkzenteに、2008年の始めに掲載されたインタビュー、
時期的には、CDショパン前奏曲がリリースされた直後くらいの頃です。
Preludiaに去年の9月ごろアップしました。
ドイツのファンの方が紹介してくださって、英訳もつくってくださいました。

読んでいただければわかりますが、一風変わったインタビューで、とても面白いです。この雑誌ではいろいろなアーチストに同じ質問でインタビューを行っているそうです。

紹介してくれたドイツの方は、この記事を最初読んだ時、ラファウ・ブレハッチを知らなかったそうです。読んでみて、「若いのに、なんて洗練された、成熟した答え方をするのだろう!」と興味を持ち、Youtubeで彼の演奏を探して、一挙に好きになったのだそうです。

これをPreludiaで読んだポーランドの少なくとも2人が、ラファウが言及していたポーランドの作曲家ロマン・マチエイェフスキのレクイエムのCDを購入したそうです。
「あなたにも、ほしかったら送ってあげる」、と言われたのですが、忙しくて返事しそびれていたのを1年もたって思い出しました(笑)。







KA:KlassikAkzent
RB:Rafal Blechacz


KA:音楽は聖なる芸術ですか。
RB:全くその通りだと思います。
音楽は天界と地上との間に架け橋をかけるものだと、常に確信しています。

KA:自分で選べるとしたら、どの時代に生きたいですか。
RB:僕はヨハン・セバスティアン・バッハのちょうど300年後に生まれました。(注:バッハは1685年生まれ)その機会がいいと思います。

KA:過去の作曲家に、自分のための作曲を依頼できるとしたら、誰にしますか。
RB:疑いなく、バッハです。

KA:音楽以外に冒険できるとしたら、何をしますか。
RB:いつか、バラクライダーでグランド・キャニオンの上空を飛んでみたい。
ちょっとばかげてますか?

KA:理想的な聴衆とは?
RB:演奏中咳をせず、携帯の電源は切り、お菓子の袋を開かず、寝ない聴衆。
つまり音楽をちゃんと聴く聴衆。
でも、これは無理だって知ってますけど。

KA:どの画家だったらモデルになってもいいですか。もう亡くなった画家でもいいです。
(注:どの画家なら、長時間彼のために座ってあげてもいいですか?というのが直訳です。)

RB:最近、アムステルダムでリサイタルのあとヴァン・ゴッホ美術館に行きました。これまで見たことのないような作品をたくさん見て、とても感動しました。ゴッホだったらモデルになってもいいかな。でも、彼が耳を切れって要求しなければですが。


KA:音楽におけるあなたの信条とは?
RB:FLFです!つまり、freedom, love, friendship(自由、愛、友情)。

KA:音楽における出会いでもっともわくわくしたのは?
RB:クリスティアン・ツィメルマンと1週間一緒に音楽する機会があったんです。すごい特権でしょう?一緒にいろいろな作品を演奏して、実験もしてみました。これは本当にありえない体験だったと思います。

KA:この人に出会ってみたい、というのを想像でアレンジしてみてください。
RB:いつか法王ベネディクト16世のために演奏できるなら、とても幸運だと思います。

KA:あなたの考えで、現在過小評価されている作曲家もしくは作品はありますか。
RB:そうですね、概ね過小評価されているのはポーランド人の作曲家、ロマン・マチエイェフスキと、彼のレクイエムだと思います。僕がこれまで聴くことができた音楽作品の中で、最も胸躍る曲のひとつです。

KA:次の4種類の気質のうち、あなたに当てはまるのはどれですか。
楽観的、憂鬱、きむずかしい、鈍重。

RB:ヒッポクラテスの分類に従えば、僕は憂鬱かつ鈍重ということになります。でも、どれが僕に一番近いかを特定するのはむずかしいですね。今日の僕は鈍重かもしれません。たくさんの質問に答えるのが億劫になっていますから。

KA:あなたとスポーツのスタジアムで出会うことはありえますか。
RB:スポーツは見るだけです。なので、スポーツイベントの時僕に会うとしたら、テレビで面白いスポーツ番組を見ているときですよ。

KA:あなたの音叉のそばにある本とベッドサイド・テーブルに置いてある本を教えてください。
RB:仕事のために、作曲家のすべての伝記ですね。彼らの作品をよりよく理解するためです。
自分の楽しみのためには、最近20世紀のポーランド人哲学者の重要な本を何冊か読んでいます。
例えば、タタルキェヴィチとかコタルビンスキです。

KA:あなたの食卓に決してのらない食べ物は?
RB:消化に悪いものや脂っこいものは摂らないようにしています。これまで食べなかったし、今後も決して食べないであろうものはポークナックル(ドイツの肉料理)です。ごめんなさい!

KA:どの曲を弾くと汗をかきますか(弾くのが大変ですか)。
RB:真夏にエアコンが故障したコンサートホールで弾かなければいけない時です。
真面目な話、どの曲を弾くかではなく、どんな風に弾くか、だと思います。
素晴らしく演奏されたラフマニノフのピアノコンチェルト第2番を聞いて、何度も何度も泣いたことがあります。

KA: 演奏に対する評価で、これだけは聞きたくない、というのはありますか。
RB: ああ、ラファウ、素敵!人生で聴いた中で最高の演奏だったわ!

KA:おとぎ話の人物で、自分に似ていると思うのは?
RB: 星の王子様かな?

KA:オスカー・ワイルドは、「誘惑から逃れる唯一の方法、それは誘惑に屈することだ。」と言いました。コメントを。

RB: オスカー・ワイルドの警句は称賛しますし、それが誘惑を克服する一番簡単な方法だと僕も思います。
例えばポーランドでは、禁断の木の実は一層甘いと言われています。
でも、ある程度の誘惑や禁断の部分は触れないままにしておいた方が、人生はより面白く、
人はより創造的に想像力豊かになると思います。


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オスカー・ワイルドの質問への答えなど、酸いも甘いも嚙み分けた人生の達人が話しているかのようですね。
脱帽です。 


ヒッポクラテスの四体液説による人間の4種類の気質:
血液が多い人は楽天的 sanguineous、
粘液が多い人は鈍重 phlegmatic、
黒胆汁が多い人は憂鬱 melancholic、
黄胆汁が多い人は気むずかしい choleric
という気質の分類になるそうです。
ラファウは自分のことを、憂鬱かつ鈍重と言ってます。わかるような、わからないような。。


ラファウ・ブレハッチが哲学の本を読んでいる、と初めて見たのは07年の来日パンフでした。(っていうか、私はその直前に彼のことを知ったので、それ以前のことはあまり知りません。)
Preludiaを書き始めてから彼のインタビューに登場した哲学者をざっと見てみますと、

プラトン・ソクラテスは中学高校時代に勉強済み(らしい)。

「音楽の哲学」としての美学を学んでいます、と頻繁に発言。例えば、
ヴワディスワフ・ストゥルジェフスキ教授 Władysław Stróżewskiの個人教授を長く受けてきた。ラファウの最新CDに解説を書かれた先生。この先生の著書「創造に関する弁証法」(Dialektyka twórczości)を愛読している。

フッサール(1859年-1938年)Husserl, the phenomenologistオーストリア生まれのドイツ人哲学者の現象学
ロマン・インガルデン(1893年-1970年)Roman Witold Ingarden ポーランドの、哲学・現象学・美学者。

axiology 価値学 の本も読んでいる。

今回のインタビューに登場したのは、ともにポーランドの哲学者。
タタルキェヴィチ(1886-1980)Władysław Tatarkiewicz 哲学史、美術史、倫理学
コタルビンスキ (1886-1981)Tadeusz Kotarbiński 「具体主義」ConcretismまたはReism の創始者。

タタルキェヴィチについては、07年の来日パンフでも「最近読みました。」と言及していました。(パンフではタタールキエヴィッツと表記されています。)


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