Preludia - Unofficial website for Rafal Blechacz

Blog

2009年5月24日日曜日

ラファウ・ブレハッチインタビュー「夢を追いかけて」(ポーランド)

逐語訳ではなく、サマリーというか、まるまった訳になっています。


オリジナル記事(ポーランド語)





YouTubeのオリジナル画面 (↑これより大きな画面です。)
タイトル:
Rafał Blechacz gra specjalnie dla czytelników "Gazety Pomorskiej"
(ラファウ・ブレハッチ、Gazeta Pomorskaの読者のために特別に演奏。)


ラファウ・ブレハッチ:夢を追い続けて (ビデオ)
インタビューアー:Adam Willma
2009年5月22日付け


携帯電話のない生活でも平気ですか。
はい、家にはもちろん携帯はありますが。仕事の連絡はワルシャワのマネージャー(secretariat)が管理しています。

インターネットを使わないとしたら?
それは無理です。インターネットを使って演奏会のオファーや録音時の連絡を取り合っていますので、ツアーの時もパソコンを世界中持ち歩いています。

友人のメールは読んでいますか。
読みます。郵便でもたくさん手紙がきます。
Rafał Blechacz, Nakło nad Noteciąという宛名で着きますので。

ファンクラブがいくつかあるそうですね。
オフィシャルなファンクラブはショパンコンクールの後できて、約1000人の(or多くの)会員がいます。世界各国でなじみのファンのチームに会えるのがいいですね。

スケジュールはどうなっていますか。
2005年のコンクールの直後、日本のエージェントからいただいた5年カレンダーがいっぱいになって新しいのを買いました。2012年まで埋まっています。

はめをはずすような時間がないのでは?
普通の時間ー家族と過ごしたり、学校、レパートリーを広げる時間はとるようにしています。はめをはずすこともありますが、これは、皆さんが知らなくてもいいことですね(笑)。カメラや好奇の目にさらされるのでは、と心配することなく、プライベートや家族との時間をとることは大切です。コンクールの直後にこれを悟りました。ガードに守られていても、人が押し寄せ、エレベータの各階で写真をとられ、妹はめがねをなくしました(笑)。今は、うまくバランスがとれるようになりました。

純粋な芸術から、ビジネスへと移る道をどう振り返りますか。
コンクールの直後は、誰もが音楽でなくビジネスのことばかり話して、怖かったです。映画やコマーシャルに出演、というのも含め、様々なオファーがあったので、どこが信頼できるのか、自分で調べなければなりませんでした。今はしくみもわかり、僕の仕事をオーガナイズする人も見つかり、平穏に計画をたてることができます。最近、アムステルダムで、12カ国のエージェントの代表者が集まるミーティングがDG主催でありました。普段メールで連絡をとっている相手方が全員集まるという画期的な会議で、注意深く演奏会や録音についての計画の概要を考えることができました。コンクールの直後はツィメルマンがいろいろアドバイスしてくださいましたし、彼の経験を知ることで、年間の演奏会は40回まで、というのが自分にとって一番バランスがとれるとわかりました。中には年間100回も演奏しているアーチストもいますが、僕は演奏が義務になり、機械的に弾いてしまうのはいやでした。これまでは大丈夫でしたが、時々体が警告ランプをつけることもあります。

賞賛の言葉には心動かない?
同じような賛辞は頻繁に耳にします。でも人が感じたことを言うのは自然なことです。ポーランド人、とくに外国に住むポーランド人は、僕の成功を愛国主義的な目で見ていることに気づきました。

高等教育機関がクラッシック音楽の勉強の機会を提供する一方、受講生は減ってきています。若い音楽家から助言を求められたことはありますか。
最近ロンドンで、ある女の子が、音楽の道と医学の道とどちらに進むか、ジレンマを感じているといってアドバイスを求めてきました。僕の場合はいつもピアノが弾きたくて弾いてきたので、そういうジレンマはありません。そういうジレンマのある人にとっては、音楽の道が正しいかどうかは疑わしいと思います。ツィメルマンも言っているとおり、直感はとても大切です。音楽にとって直感はとても重要で、解釈を深めようとすると、直感に頼ることになります。いい例がショパンのルバート、捕らえにくいテンポです。説明は最後までできないのですが、僕はこうするのがいい、他のテンポは違うと、ただそのように感じるのです。

1日でゴールドディスク、2週間でプラチナディスク。しかし、マーケットでは常に新譜が出されています。あなたのレーベル、ドイツグラモフォンは、マウリツィオ・ポリーニやマルタ・アルゲリッチ、クリスチャン・ツィメルマンがいます。
そういうことは考えず、自分に集中した方がいいと思っています。コンクールの時も他の演奏は聴きませんでした。もちろん前奏曲の録音の前、DGでの最近の録音状況を調べました。各地で有力アーチストとすれ違うこともあります。去年NYで演奏したときは、ツィメルマンと会う機会がありましたし、彼は前年の僕の東京でのリサイタルを観に来ました。NYの演奏会の同じ日、同じ時間に、アルゲリッチがプロコフィエフを弾いていましたし、今回のパリの演奏会の日には、ユンディ・リーがサル・プレイエルで演奏していました。

フィットネスしていますか。
以前ほど走らなくなりましたが、定期的に運動するよう、心がけています。
最近はノルディック・ウォーキングが気に入っています。

飛行機ではどんな本を読みますか。
哲学の本を何冊か。トルンのニコラス・コペルニクス大学のドクターコースで勉強を始めました。授業はゆったりしていますが、必要な文献は全部読むようにしており、満足感もあります。次のCDのブックレットには、僕と、哲学者Władysław Stróżewski教授との対談が入ることになると思います。哲学の勉強は、音楽の意味の根幹を捕えるのに役立っています。飛行機では寝ていることが多いかな。可能な限り、車で移動するようにしています。リラックスできるし、飛行機より短時間で着く場合もありますから。

車内では何を聴いていますか。
自分のCDは聴かないようにして(笑)、でもDGから録音がOKか訊かれている場合は聴きます。

頻繁に修正をなさいますね。
はい、でも修正は録音の時だけです。録音したものを1日の違う時間帯に何回か聴いて、ディテールをつかみます。録音が終了した後は、修正はしません。あまりニュアンスにフォーカスしすぎて、音符ごとにソフトだとか大きいとかこだわると、音楽が語る全体像が見えなくなってしまうので意味がありません。個々の音でなく音楽を聴くべきです。だから僕は車中で良い音楽を聴くようにしています。自然の雑音があるので、細部でなく音楽に集中できるからです。しかし、時にはストップウオッチを使って、曲の間の休止時間を測ることもあります。ハイドンのソナタがそうでした。第一楽章の最後は変ホ長調の和音で終わり、第二楽章はホ長調の和音で始まります。ハイドンがこのような”不協和音”を取り入れたのは驚きですが、ここで休止が長すぎると、聴き手は半音の移動に気づきません。また、休止が短すぎると、音が十分ふくらまず、調子の変化に聴き手はついていけません。1秒より短い時間が、音楽の質を決めてしまうことがよくあります。録音の方法にも注意すべきです。マウリツィオ・ポリーニはマイクとマイクの間隔を少しばかり長めにとるのが好みです。これでコンサートホールにいるような効果があります。僕はもう少し間隔を狭くします。その方が、ダイナミクスがもたらすニュアンス、”マイクロ・ダイナミクス”を表現できるし、これは通常のコンサートホールでは追求することができません。解決方法はいろいろありますが、普通は6本のマイクで録音するとして、うち何本かはピアノから8メートル離して設置し、自然の反響を集めるようにします。(マイクの設置位置に)適切な割合を選ぶのは、ちょっとした技なんですよ。

ツィメルマンは自分のピアノを持ち込みますが、あなたは各会場の楽器を使っています。不慣れな楽器は大変ではないですか。
グランドピアノはサプライズが多くて、古い楽器の方が新しい楽器よりきれいに響くこともあります。メンテナンスや保管場所、部屋の温度などが影響しています。僕はオルレン社が資金を出してくれた自分のスタインウェイが気に入っていますが、ツアーで一番気に入ったのは、アムステルダムコンセルトヘボウの楽器です。素晴らしい調整がなされ、まさにマジシャンの手技です。この楽器で、今後のCDを録音するんですよ。

オランダの聴衆もお好きだそうですね。
類まれなる聴衆だと思っています。オランダは、小さな町でも音楽への関心がとても高く、人々は真剣に静かに聴いて、自然な反応をしてくれます。ドイツの聴衆も同じです。以前、ドイツに行く前、この国の聴衆は距離感があって冷たい、演奏が気に入ったとしても反応がないのでわからない、と聞いていたんです。でも行ってみて驚きました。歓声、スタンディング・オベーション、そしてアンコール。今では、ドイツの聴衆は大好きです。作品をよく知っていて、真剣に集中して聴き、演奏者に惜しみない反応を返してくれます。

偉大な音楽の遺産が生まれたようなコンサートホールにもいかれましたね。そういうのを感じましたか。
気づいて、わくわくして、いつも喜びでいっぱいです。2回目以降はそうでもなくなりますけど(笑)。

パリでの2回連続の成功で、のぼせてしまうこともあるでしょうか。
そのことはよく認識しています。努力や自己犠牲があったがゆえに、成功すると、そういった誘惑に屈することがあると。音楽家は成功でのぼせてしまうと、すでにアーチストとして失敗する運命にあるでしょう。将来や、まだまだ克服すべき問題が見えなくなってしまいますから。

グローバルな危機で演奏活動に影響はありますか。
幸いありません。話題には出ていますが。

また、音楽業界では、CDというメディアが緩慢な死に至るのではと心配しています。音楽の販売はますますインターネットにシフトしています。
そのとおりです。僕は2枚のCDを録音したとき、インターネットでのみ入手できる短いトラックをそれぞれにつけました。この販売方法はアメリカではとても人気がありますし、ヨーロッパでも普及は時間の問題ですね。

あなたの音楽はオンラインの海賊版でも聴くことができます。
大勢の方からそのことを言われます。でも僕に何ができるでしょう。これが現実というものです。
それよりも、僕は、自分のコンサートをアマチュアの聴衆がこっそり録画して、インターネット上に公開していることの方が心配です。録音の音の質がとても悪いんです。

ツィメルマンが最近アメリカで、戦争への関与を批判し物議をかもしました。あなたは現実に対して発言しないのですか。
クリスチャンは52歳、僕は23歳ですよ。クリスチャンは常に自分の考えを述べ、紛争の平和的・外交的な解決を求める発言をしてきました。2年前、アーヘンの演奏会で、彼は聴衆に向かって、武装紛争に無駄な支出をするのでなく、(演奏会場だった)学校の音響の改善に使うべきだ、と言いました。彼はその勇気によって認識されているし、彼の言葉はマスコミを通じて世界に聞かれていると思います。

あなたは政治的メッセージは発信しないのですか。
しませんが、ときどき政治から逃れるのがむずかしいと感じています。

作曲はやめてしまったのですか。
以前、ピアノ曲やピアノ三重奏を作ったことがあります。今は時間がないのと、作りたい気持ちがないのと。自分の心の状態に反することをするのは無意味ですから。

あなたの心の状態がクラッシック以外の音楽を受け入れることはありますか。ジャズとのフュージョンをしている演奏家もいますが。
そうした実験はいいことだと思います。そうして出来上がった音楽は多くの人々の関心をあつめるでしょうから。僕は(ジャズ等は)必要ないと思っていますが、例えばガーシュウィンの音は面白いな、と思っています。たぶん近いうちに、アンコールでガーシュウィンを弾けたらと思います。最近パリでMark Tomaszewski と会い、有名なデュオ Marek and Wacekの話をする機会がありました。技術や即興について興味深い話が聞けました。

今後20年のシナリオは演奏ツアーや新しい曲、CDといったところでしょうか。
10年前、世界各地で人々のためにピアノが弾けたら、幸せだろうなあ、と言っていました。今、このシナリオが実行できています。この先20年、もし聴衆のために演奏することができ、同じ理由でやはり僕は幸せだと思うことができれば幸いです。

新しいレパートリーの準備はどのようにしていますか。
ツアーの合間の時間を使って、家でも練習しています。夕方や夜が多いです。

ご家族はつま先で歩いているのでは。
両親は気配でわかってくれます。さらに発展し演奏家として創造できる良い環境に恵まれ、うれしく思っています。

最新スケジュールでは、次に何が聴けますか。
ショパンの2つのピアノコンチェルト、これは3枚目のCDのために録音されます。録音で共演したいオーケストラと指揮者について、ドイツグラモフォンは僕が選べるようにしてくれました。そこで、僕の大好きなアムステルダムのコンセルトヘボウ管弦楽団を選びました。このオケはユニークな色彩とベルベットのような音を出すことができます。きつ過ぎず、渋すぎない音、ショパンのコンチェルトにとってはパーフェクトです。団員はショパンの移ろうリズムを言葉なしに感じる素晴らしい感覚を持ち、ソリストへの反応もとても柔軟です。素晴らしいアドベンチャーになることを期待しています。さらに、指揮者はイェジー・セムコフ、是非共演したいとずっと望んできました。またひとつ、僕の夢を実現することになります。


***********************

このウェブサイトに引用している画像・文章等は、著作権を有する所有者に属するものがあります。
このサイト www.blechaczinfo.com 独自の著作物を引用なさる場合は、事前に サイト管理人 にご相談くださいますよう、お願い申し上げます。