Preludia - Unofficial website for Rafal Blechacz

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2009年12月29日火曜日

アルトゥール・ルービンシュタイン国際青少年ピアノ・コンクール(2002年)での、ラファウ・ブレハッチ

Archive from Arthur Rubinstein Competition (Poland)という記事を英語のブログに書きました。その日本語です。
2002年にラファウ・ブレハッチがアルトゥール・ルービンシュタイン国際青少年ピアノ・コンクールで第2位を獲得した際の、審査員のコメントを抜粋したものです。
8年前のラファウ・ブレハッチの演奏に対するコメントですが、すでに巨大な才能を静かに発揮している様子が記述されています。
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konkursmuzyczny.plは、アルトゥール・ルービンシュタイン国際青少年ピアノ・コンクールの情報を提供している。先ごろ、ラファウ・ブレハッチが2002年、同コンクールでで第2位を受賞した際の、ヤン・ポピス氏のコメントを、同サイトのhistoryページで見た。

残念ながら、この記事はサイトから削除されてしまい(historyを始め、サイトは全般的に工事中の様子)、しかし、このポピス氏の発言は残しておこうと思う。


以下、ポピス氏のコメントを含む、上記サイトで見た、関連部分の抜粋。

(本コンクールの歴史を通じ、)疑いようのない成功例は、16歳のラファウ・ブレハッチだ。この稀にみる才能に恵まれた(ビドゴシチの)国立音楽高等学校の生徒は、ポポヴァ・ズイドロン氏に師事。2002年の本コンクールに出場し、第2位を獲得、以後、国際的なアーチストとしてのキャリアを歩むきっかけとなった。ヤン・ポピス氏が当時、この若き俊英を、次のように語っている。


「我々ポーランド人にとって、ラファウ・ブレハッチが今年のコンクールでファイナリストとなり第2位を獲得したことは、望外の喜びだ。アルトゥール・ルービンシュタイン音楽学校のディレクター、エヴァ・ポスピエフ氏が10年前にこのルービンシュタイン国際青少年ピアノ・コンクールを開始した、その努力が見事に結実したといえる。

大変はにかみやで、とても小さくて可愛らしい、しかし極めて才能あふれるラファウが、このコンクールや課題曲、受賞者のことを知り、2002年に出場し、そしてこれほどの高い賞を得た。

彼の才能は本当に特別だ。しかし、舞台に現れるや、爆発的な才能を見せつけて聴衆をひれ伏させるような、目立つタイプの才能ではないと思う。


彼はもっと内省的な、しかしとても自然で高貴な、音楽の本質に深く浸透するようなタイプで、その点では今回のコンクールで右に出る者はいなかった。

また、最近ラファウのピアニズムは確固としたものになってきた。大曲も素晴らしくこなすようになった。

ラファウはロバート・シューマンのソナタト短調を弾き、ショパンのスケルツォロ短調も素晴らしい演奏をした。

多くの参加者がシマノフスキの曲を演奏したが、変奏曲変ロ短調作品3については、ラファウほど美しく、オリジナリティと洞察力にあふれた解釈は、このコンクール期間中聴くことはなかった。

ラファウは極めて多面にわたる才能を持ち、ナチュラルで深みがあり、真の卓越性を備えたピアニストだ。

今後、彼の音楽性は飛躍的な進歩を見せることだろう。しかし現在すでに彼は聴き手を感動させ、審査員が特に高く評価するような、非常に高いレベルの芸術性に達している。」

(ヤン・ポピス、2002)


 "Pure Beauty!"

と評されるブレハッチの演奏だが、この言葉は2005年のショパンコンクールの際、ヤン・ポピス氏がまず用いた。

今回、2005年ショパンコンクールの最終日のGazeta(05年10月22日付け)に掲載されたポピス氏の寄稿文を読み直してみた。ラファウ・ブレハッチについて、私が様々な情報ソースを集めて知りえた基礎的情報、当時のレパートリー等が、すでに網羅的に書かれていたことに気付いた。なので、ブレハッチをきちんと理解したいと思う方は、この文章をもう一度読まれたるのが効率的なのではないか、と思う。

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このサイト www.blechaczinfo.com 独自の著作物を引用なさる場合は、事前に サイト管理人 にご相談くださいますよう、お願い申し上げます。

2009年12月28日月曜日

CDショパン協奏曲プロモーションビデオでの、ラファウ・ブレハッチの発言



このビデオでのラファウ・ブレハッチの発言は、こんな感じです。

「このアルバムで、大切な記念の年を祝福したいと考えました。
よく知られているように、2010年はフレデリック・ショパンのとても大切な生誕記念の年ですので、
僕は何かショパンの曲を献呈したいと考え、2つのピアノ協奏曲を録音しようと決めました。


ショパンの音楽―彼の各作品にこめられているショパンのさまざまな感情や情緒的側面は、
僕の心に、パーソナリティに、とても似ています。
人は生きていく上で、いろいろな感情を体験します。
そうした感情を音楽で表現できることを、僕はいつもとてもうれしく思います。


ショパンは18歳か19歳のときに2つの協奏曲を作曲しました。ショパンにとってはとても喜びに満ちた時期でした。
まだ祖国に暮らし、家族―両親や妹たちに囲まれ、友達も大勢いました。
恋もしていました。それが協奏曲の中で、とりわけ第2楽章で聴こえてきます。
本当に信じられないくらい美しい楽章です。

僕の役割は、ピアニストとしての役割は、ショパンの感情、ショパンの心に自らを同化させて、
彼の感情を新たに再現することなのだと思っています。


協奏曲の第3楽章は特別です。というのは、ポーランドの民族音楽に鼓舞された音楽になっています。
例えばヘ短調協奏曲ではマズルカが、ホ短調協奏曲では、ポーランドの典型的なクラコーヴィアクのリズムが聴こえてきます。
独特のリズムを聴くことができますよ。」

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2009年12月26日土曜日

ラファウ・ブレハッチがパラグライダーでグランド・キャニオンを飛ぶ・・(インタビュー、ドイツ)

ドイツの雑誌KlassikAkzenteに、2008年の始めに掲載されたインタビュー、
時期的には、CDショパン前奏曲がリリースされた直後くらいの頃です。
Preludiaに去年の9月ごろアップしました。
ドイツのファンの方が紹介してくださって、英訳もつくってくださいました。

読んでいただければわかりますが、一風変わったインタビューで、とても面白いです。この雑誌ではいろいろなアーチストに同じ質問でインタビューを行っているそうです。

紹介してくれたドイツの方は、この記事を最初読んだ時、ラファウ・ブレハッチを知らなかったそうです。読んでみて、「若いのに、なんて洗練された、成熟した答え方をするのだろう!」と興味を持ち、Youtubeで彼の演奏を探して、一挙に好きになったのだそうです。

これをPreludiaで読んだポーランドの少なくとも2人が、ラファウが言及していたポーランドの作曲家ロマン・マチエイェフスキのレクイエムのCDを購入したそうです。
「あなたにも、ほしかったら送ってあげる」、と言われたのですが、忙しくて返事しそびれていたのを1年もたって思い出しました(笑)。







KA:KlassikAkzent
RB:Rafal Blechacz


KA:音楽は聖なる芸術ですか。
RB:全くその通りだと思います。
音楽は天界と地上との間に架け橋をかけるものだと、常に確信しています。

KA:自分で選べるとしたら、どの時代に生きたいですか。
RB:僕はヨハン・セバスティアン・バッハのちょうど300年後に生まれました。(注:バッハは1685年生まれ)その機会がいいと思います。

KA:過去の作曲家に、自分のための作曲を依頼できるとしたら、誰にしますか。
RB:疑いなく、バッハです。

KA:音楽以外に冒険できるとしたら、何をしますか。
RB:いつか、バラクライダーでグランド・キャニオンの上空を飛んでみたい。
ちょっとばかげてますか?

KA:理想的な聴衆とは?
RB:演奏中咳をせず、携帯の電源は切り、お菓子の袋を開かず、寝ない聴衆。
つまり音楽をちゃんと聴く聴衆。
でも、これは無理だって知ってますけど。

KA:どの画家だったらモデルになってもいいですか。もう亡くなった画家でもいいです。
(注:どの画家なら、長時間彼のために座ってあげてもいいですか?というのが直訳です。)

RB:最近、アムステルダムでリサイタルのあとヴァン・ゴッホ美術館に行きました。これまで見たことのないような作品をたくさん見て、とても感動しました。ゴッホだったらモデルになってもいいかな。でも、彼が耳を切れって要求しなければですが。


KA:音楽におけるあなたの信条とは?
RB:FLFです!つまり、freedom, love, friendship(自由、愛、友情)。

KA:音楽における出会いでもっともわくわくしたのは?
RB:クリスティアン・ツィメルマンと1週間一緒に音楽する機会があったんです。すごい特権でしょう?一緒にいろいろな作品を演奏して、実験もしてみました。これは本当にありえない体験だったと思います。

KA:この人に出会ってみたい、というのを想像でアレンジしてみてください。
RB:いつか法王ベネディクト16世のために演奏できるなら、とても幸運だと思います。

KA:あなたの考えで、現在過小評価されている作曲家もしくは作品はありますか。
RB:そうですね、概ね過小評価されているのはポーランド人の作曲家、ロマン・マチエイェフスキと、彼のレクイエムだと思います。僕がこれまで聴くことができた音楽作品の中で、最も胸躍る曲のひとつです。

KA:次の4種類の気質のうち、あなたに当てはまるのはどれですか。
楽観的、憂鬱、きむずかしい、鈍重。

RB:ヒッポクラテスの分類に従えば、僕は憂鬱かつ鈍重ということになります。でも、どれが僕に一番近いかを特定するのはむずかしいですね。今日の僕は鈍重かもしれません。たくさんの質問に答えるのが億劫になっていますから。

KA:あなたとスポーツのスタジアムで出会うことはありえますか。
RB:スポーツは見るだけです。なので、スポーツイベントの時僕に会うとしたら、テレビで面白いスポーツ番組を見ているときですよ。

KA:あなたの音叉のそばにある本とベッドサイド・テーブルに置いてある本を教えてください。
RB:仕事のために、作曲家のすべての伝記ですね。彼らの作品をよりよく理解するためです。
自分の楽しみのためには、最近20世紀のポーランド人哲学者の重要な本を何冊か読んでいます。
例えば、タタルキェヴィチとかコタルビンスキです。

KA:あなたの食卓に決してのらない食べ物は?
RB:消化に悪いものや脂っこいものは摂らないようにしています。これまで食べなかったし、今後も決して食べないであろうものはポークナックル(ドイツの肉料理)です。ごめんなさい!

KA:どの曲を弾くと汗をかきますか(弾くのが大変ですか)。
RB:真夏にエアコンが故障したコンサートホールで弾かなければいけない時です。
真面目な話、どの曲を弾くかではなく、どんな風に弾くか、だと思います。
素晴らしく演奏されたラフマニノフのピアノコンチェルト第2番を聞いて、何度も何度も泣いたことがあります。

KA: 演奏に対する評価で、これだけは聞きたくない、というのはありますか。
RB: ああ、ラファウ、素敵!人生で聴いた中で最高の演奏だったわ!

KA:おとぎ話の人物で、自分に似ていると思うのは?
RB: 星の王子様かな?

KA:オスカー・ワイルドは、「誘惑から逃れる唯一の方法、それは誘惑に屈することだ。」と言いました。コメントを。

RB: オスカー・ワイルドの警句は称賛しますし、それが誘惑を克服する一番簡単な方法だと僕も思います。
例えばポーランドでは、禁断の木の実は一層甘いと言われています。
でも、ある程度の誘惑や禁断の部分は触れないままにしておいた方が、人生はより面白く、
人はより創造的に想像力豊かになると思います。


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オスカー・ワイルドの質問への答えなど、酸いも甘いも嚙み分けた人生の達人が話しているかのようですね。
脱帽です。 


ヒッポクラテスの四体液説による人間の4種類の気質:
血液が多い人は楽天的 sanguineous、
粘液が多い人は鈍重 phlegmatic、
黒胆汁が多い人は憂鬱 melancholic、
黄胆汁が多い人は気むずかしい choleric
という気質の分類になるそうです。
ラファウは自分のことを、憂鬱かつ鈍重と言ってます。わかるような、わからないような。。


ラファウ・ブレハッチが哲学の本を読んでいる、と初めて見たのは07年の来日パンフでした。(っていうか、私はその直前に彼のことを知ったので、それ以前のことはあまり知りません。)
Preludiaを書き始めてから彼のインタビューに登場した哲学者をざっと見てみますと、

プラトン・ソクラテスは中学高校時代に勉強済み(らしい)。

「音楽の哲学」としての美学を学んでいます、と頻繁に発言。例えば、
ヴワディスワフ・ストゥルジェフスキ教授 Władysław Stróżewskiの個人教授を長く受けてきた。ラファウの最新CDに解説を書かれた先生。この先生の著書「創造に関する弁証法」(Dialektyka twórczości)を愛読している。

フッサール(1859年-1938年)Husserl, the phenomenologistオーストリア生まれのドイツ人哲学者の現象学
ロマン・インガルデン(1893年-1970年)Roman Witold Ingarden ポーランドの、哲学・現象学・美学者。

axiology 価値学 の本も読んでいる。

今回のインタビューに登場したのは、ともにポーランドの哲学者。
タタルキェヴィチ(1886-1980)Władysław Tatarkiewicz 哲学史、美術史、倫理学
コタルビンスキ (1886-1981)Tadeusz Kotarbiński 「具体主義」ConcretismまたはReism の創始者。

タタルキェヴィチについては、07年の来日パンフでも「最近読みました。」と言及していました。(パンフではタタールキエヴィッツと表記されています。)


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2009年12月14日月曜日

ブレハッチCDショパン協奏曲のライナーノーツの幻の部分

以前、ショパン・コンチェルトのCDのライナーノーツで、まとめの部分のパラグラフ、ラファウ・ブレハッチの人となりが書かれた一番大切な部分が、まるまるカットされてしまったので、カットされた「まぼろしの部分」をアップします。。。と書きながら、
忘れていました。。。

遅ればせながら、アップします。


・・さらに特筆すべきは、ショパンの2つのコンチェルトを演奏した別の機会のことだ。ラファウの異なった顔を示すこの演奏会は、国立フィルハーモニー管弦楽団、アントニ・ヴィットの指揮により、ピアニストの地元ナクウォ・ナド・ノテチョンで開かれた。当地では適当なコンサートホールがないため、演奏会は教会で行われた。このピアニストの、生まれ故郷に対するとびきりの感謝の印であり、小さな町の住民達にとって、類まれなる経験となった。
(たしかここまではCDに入っていますね。)



ナクウォの教区教会にて、2006年9月2日



ラファウ・ブレハッチは世界で最も素晴らしい若手ピアニストの1人である。類まれなる才能に加え、彼の卓越した知性は、演奏する音楽の深部の理解を助け、彼の高い認識力は、解釈する音楽作品の美的・精神的な局面を確実に把握させる。彼はショパンと同質の感受性を具えていると言われ、おそらくそれゆえにブレハッチは、この同国の作曲家の作品を解釈するよう運命付けられているのだろう。さらにショパンを演奏することで、その前後に生きた作曲家への門戸も開かれた。ブレハッチが古典派やロマン派のレパートリーに加え、ドビュッシーやシマノフスキに注力するのも、従って当然の流れなのだ。彼の才能や人格の特徴は、芸術家的側面と形而上学的・宗教的な側面も併せ持った、深い精神性に根ざしている。彼の多岐に渡る関心の対象には哲学も含まれ、音楽的努力はオルガン音楽のレパートリーにも及ぶ。ラファウ・ブレハッチを個人的に知る人々は、彼の魅力と、何よりも、名声を得てもそこなわれることのない彼の謙虚さに心うたれる。

ヴワディスワフ・ストゥルジェフスキ




マエストロ・セムコフと。


原文(英語、ドイツ語、フランス語)
左のINSIGHTSをクリックしてください。

原文(ポーランド語)


日本版のCDを人にあげてしまったので手元になく、CDに入っていた訳との連続性がとれていません。ちょっと堅すぎるかも知れません。。



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2009年11月25日水曜日

ブレハッチのCD「ショパン協奏曲」のボーナストラック―マズルカ作品17-4

ラファウ・ブレハッチのアルバム「ショパンピアノ協奏曲1,2番」には、ボーナストラックとして、ショパンのマズルカ第13番(作品17-4)が付いており、オンラインで(iTunesで)提供されています。

iTunes Storeのブレハッチのページでご確認ください。150円です。

7月2日のアムステルダム・コンセルトヘボウでの録音のための演奏会の際演奏したアンコールだと思われます。

iTunes をインストールしているかどうか記憶にない場合は、Preludiaにスペインのサイトのリンクをつけておきましたので、そこからアクセスしてみてください。インストールしてあれば日本のiTunesにつながります。  

2009年11月24日火曜日

文春文庫「新版クラシックCDの名盤・演奏家篇」がブレハッチを絶賛

今月発売になった、文春文庫「新版クラシックCDの名盤」、9年ぶりの改定だそうですが、「演奏家篇」で、いわゆる巨匠たち(取り上げられたピアニストの半分近くはもうこの世にいません。)に並んで、ラファウ・ブレハッチが加わっていました。
宇野功芳氏が「ブレハッチも入れるべき。」と号令をかけたようです。

宇野功芳、中野雄、福島章恭各氏が、さまざまな演奏家に関して、「歯に絹を着せぬ」評価を、まさに「言いたい放題」で述べている中(ここまで言うか!?というのも有り)、ラファウ・ブレハッチに関しては3氏とも「大絶賛」、ネガティブな表現はひとつもありません。
3氏が述べている内容は、「そうよ、そのとおり!」と、ブレハッチのピアノが好きな方であれば、ひざをたたいて、大きくうなずくような表現ばかりです。

「(アルゲリッチ、ポリーニの)衝撃的な想い出がブレハッチのウィーン古典派を聴いたときよみがえった。強靭でありながら、少しも耳障りではない打鍵。指先が鍵盤の芯を常に理想的な強度でとらえているのであろう。それも技巧や美音を誇示するためでなく、譜面に刻印されたハイドン、ベートーヴェン、モーツアルトの音楽的なメッセージを正確に、しかも演奏者自身の言葉で語りつくすために。
ショパンの前奏曲集はコルトー以来の名演である。・・・・協奏曲集も素晴らしい出来。
大変なピアニストが現れたものである。」(中野氏)

「(モーツアルトの)K311の第2楽章など聴いていると、モーツアルトが微笑みながら涙する心に直に触れたようで、胸がいっぱいになってしまう。」(福島氏:彼はデビューアルバム「ピアノリサイタル」も高く評価しています。)

宇野氏の内容は、すでにサンケイ新聞等で書かれていることと大体同じです。
「異常なテクニック!・・・・最弱音のデリカシーにしびれた。・・・」など。

いつもはブレハッチの記事を見つけるとまずPreludiaに、なのですが、これは是非まず日本の方々に読んでいただきたい、と願い、アップします。


普段本はアマゾン等でデリバリーしてもらうことが多いのですが、この本は早く読みたくて、本屋に行きました。今日は貴重なオフ日というか仕事の準備日なのですが、この記事Preludia向けにどう扱おう。。。と、うれしいけどまた頭痛のタネが増えました。

宇野氏はモーツアルトを聴くまでブレハッチの名前も知らなかったそうで(笑)、「優勝したからどうなのだ。・・・・僕は最初の30秒でブレハッチのものすごいうまさと音楽性がわかった。・・・・信用できるのは自分の耳だけ。大切なのは音楽そのものだから。」

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2009年11月13日金曜日

Chopin Complete Edition ドイツ・グラモフォンから発売

ショパンのの全曲集がドイツグラモフォンから発売になりました。
ドイツ、イタリアのサイトで見かけました。
日本ではどうなっているのか、知りません。
ピアノの演奏者は、イタリアの広告サイトによれば、アラウ、アルゲリッチ、ピリス、ウゴルスキ、アシュケナージ、ポリーニ、ユンディ・リー、ブレハッチ、ツィメルマン、プレトニョフ、
ドイツの広告サイトによれば、アルゲリッチ、アラウ、ポリーニ、ツィメルマン、ブレハッチ他。
実際はもっと多くの演奏家のものが入っています。

前奏曲はブレハッチです。他は、グラモフォンのサイトに詳細情報が載っています。ノクターンはop62も含めピリス、コンチェルトとバラードはツィメルマン、エチュード・ポロネーズ・スケルツォはポリーニ、マズルカはアシュケナージなどなど。

ドイツ・グラモフォンのサイトや、ドイツのサイトで、各トラックを1分ずつ試聴できます。前奏曲はそれぞれが短いので、たくさん聴けてしまい、いいのかなあ。

歌曲(CD17)はこれまで聴いたことなくて、めずらしく思いました。なんだか当時に思いをはせたりして。
最近聴いて「いいな」と思ったピアノ三重奏は、CD16にありました。  

2009年11月10日火曜日

「ショパン協奏曲と信仰」―ラファウ・ブレハッチインタビュー(ポーランド)

ポーランドのNasz Dziennik に、2009年9月26日付けで掲載された、ラファウ・ブレハッチのインタビューです。
インタビューは9月18日にポーランドでCDが発売された直後に行われた模様です。
ちょっと古いですが、アムステルダムでのCD録音や、信仰心について語っており、現在アベイラブルな彼のインタビューとしては、一番最近のもののひとつです。
やはり記録として残しておきたく、アップいたします。

Preludiaにアップした英語

ポーランド語のオリジナル記事のリンクもついています。



2007年11月、ポズナンにて。


ショパン協奏曲と信仰について
Arkadiusz Jędrasik神父が、名ピアニスト、ラファウ・ブレハッチに訊く。



―ドイツ・グラモフォンからの新譜がポーランド市場に出たばかりです。今回はフレデリック・ショパンのピアノ協奏曲ですが、なぜこの曲を選んだのですか。

3枚目のアルバムはオーケストラとの共演にしようと、以前から考えていました。今回のアルバムでは、来る2010年のショパン・イヤーに是非ハイライトをあてたいと思いました。この作曲家による、ピアノとオーケストラのための代表作ですので、この2つの協奏曲に決めました。

―ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、指揮者はイェジー・セムコフと共演しようと思ったのはなぜですか。

ドイツ・グラモフォンと話し合いを始めた頃から、ショパン・イヤーの記念にショパン協奏曲を録音したいという希望を出していましたが、オーケストラと指揮者については、自分一番合ったところと、という段階でした。その後3年間、幸運なことに、世界中の様々なオーケストラや指揮者と、フレデリック・ショパンの2つの協奏曲を共演する機会がありました。

アムステルダムのコンセルトヘボウと初めて共演したとき、サンサーンスのピアノ協奏曲ト短調だったのですが、このオーケストラならば、ショパンの協奏曲は素晴らしい響きになるだろうと感じました。このオーケストラのベルベットのような暖かく、とてもソフトな音、とりわけ弦と木管の色彩に魅了されました。この独特の音色なら、ショパンの協奏曲の雰囲気やオーラと調和するだろうと。ショパンのピアノ作品にはテンポ・ルバートが頻繁に使われますが、その際オーケストラは柔軟に対応し、ソリストに細やかについていく必要があります。アムステルダムのオーケストラはその点うってつけでした。楽団員たちは完ぺきに僕を理解し感じてくれました。また録音場所は音響が素晴らしいコンセルトヘボウで、あのホールのピアノと専用の調律師で、という部分も、僕にとってはとても重要でした。

―録音に先立つ準備の段階で、オーケストラからの協力をどのように得ましたか。

共演にあたり一番重要だったのは、ショパン協奏曲を僕の解釈で展開しても何ら問題ないオーケストラと指揮者を選ぶ、ということでした。解釈のテーマをめぐり、マエストロ・セムコフと何度もミーティングを持ち話し合いました。十分時間をかけて話し合い、録音のため入念に準備しました。ゲネプロと演奏会を含め、合計6回の録音セッションを行いました。こんなに素晴らしいホールで、良いオーケストラとこんなに時間をかけて録音できるというのは、めったにない恵まれた環境だったと言えます。これは僕にとってとても意味がありました。心理的なプレッシャーを受けることなく、2つの協奏曲を丁寧に録音でき、実験や確認もできました。すべて落ち着いて計画し、音楽に集中することができました。

僕たちはまずホ短調を、次にヘ短調を録音しました。録音セッションの雰囲気はとても明るく、楽団員達は、とくに有名な部分は、演奏をとことん楽しんでいました。録音マテリアルを視聴したとき、ホ短調協奏曲については、演奏会でのライブ録音を採用しようと、自分で決めました。

―イェジー・セムコフはいかがでしたか。他の指揮者とどんなところが違っていましたか。

マエストロはカリスマ的な指揮者です。彼が魔法を発散させ、チームは感化されました。マエストロは確信に満ち、とても説得力のある話し方なので、オーケストラは注意深く彼に耳を傾けました。皆イェジー・セムコフをとても敬愛し、コミュニケーションは完ぺきでした。マエストロは僕の解釈を理解し、何も押し付けようとしませんでした。アゴーギクでもダイナミクスでも、僕の考えは全部スコアに注意深く書き込んでいたのです。録音セッションが始まる頃は、オーケストラは全部準備ができていました。このマエストロと演奏できてとても気持ちよく演奏できました。


―このアルバムはショパンの死(原文通り)200周年を記念する意味もあります。前回のショパンコンクールで優勝したことで、あなたのピアニストとしてのキャリアのドアが広く開かれました。ショパンの音楽は、演奏する国で、どんな風に受け止められていますか。

ショパンの作品はどこの国でも高く評価されています。最も顕著なのは日本でしょう。日本ではショパンの音楽はほとんど神を崇拝するレベルに達しています。初めての日本ツアーでは、担当エージェントの要請で、オールショパンプログラムになりました。僕のファンクラブさえ、あるんですよ。

ドイツやその他ヨーロッパ各国でも、ショパン音楽は歓迎されます。最近スペインでショパンの曲を弾く機会がありました。スペインの聴衆はとても自発的に反応し、とりわけバラードと幻想ポロネーズでは顕著でした。マズルカも別の感情引き起こしました。典型的なポーランドのダンスであるにもかかわらず、マズルカはどの国でも聴衆の心を動かし、心の琴線に触れるようです。

―ショパンの曲は(多くの演奏者によって)磨かれ、広く知られています。ショパンの曲を解釈するカギをどうやって見出しましたか。

もちろん、私たちはいろいろな録音を聴くことができますので、作品の版や個別の解釈に感動を得ることもあるでしょう。他のアーチストの考え方にヒントを得て自分の創作的解釈に生かすこともできると思います。

でも僕は、創作者自身が楽譜に残したものに忠実であるべきだ、と思います。 ときには、作曲家の手紙を読み、彼のスタイルや演奏法について弟子たちが書き残したものを読むことによって、作曲家の人格に深く浸透し、インスピレーションを追求することもできます。こうした解釈を追求する上で大きな役割を果たすのが、音楽家の直感です。あるフラグメントの音色はまさにこのようにあるべきで、他のあり方とは違う、と直感が教えてくれるのです。時には自分の直感を信頼して、心が求めることに従う必要があります。

わずか18歳19歳だった若い作曲家の心に、この2つのコンチェルトのような、こんなに美しくて深い音楽が生まれたなんて、ただもう畏れ入るばかりです。

―ショパンの録音で、最も感化を受けたのはどれですか。

ショパン音楽ということであれば、アルトゥール・ルービンシュタインの録音ですね。若い頃の、熱意やエネルギー・自発性が湧き上がるような録音、それから、ルービンシュタインが70歳の頃の、とても成熟して思慮に満ち美しい演奏も。ルービンシュタインからは、威厳ある芸術性が流れ出しています。子供の頃から彼のこうした録音に魅了されたのを覚えています。それから、もちろんクリスティアン・ツィメルマンやマウリツィオ・ポリーニのショパン、クラウディオ・アラウのコンチェルトの録音も。時々マルタ・アルゲリッチの録音に手を伸ばすこともあります。彼女はいつも強い情熱を発散させており、そこからインスピレーションを受けることもあります。


―お話を聞いていると、あなたにとってポーランド人の作曲家では、ショパンが最も重要なのですね。他にインスピレーションを感じる音楽家はいますか。

なんと言っても、カロル・シマノフスキです。本当に美しい音楽です。ここ何シーズンか、世界のいろいろな国のコンサートで、シマノフスキの作品、変奏曲op3を弾きました。シマノフスキはどの国でもあまり知られていませんが、どの国の演奏会で弾いてもとても良い反応でした。シマノフスキの音楽は多様性があり、いろいろな感情や多くの異なった特徴が表現されています。どの演奏会でも、聴衆はとても気に入ってくれました。

―では、シマノフスキの音楽を解釈するカギとは?

ショパン音楽のプロセスと同様、いろいろな方向から追求しています。良い解釈をするためには、自分の直感が助けになりますし、様々な録音に動かされることもあります。たとえば、イェジー・ゴジシェフスキ先生のシマノフスキ作品の録音は、大変美しく興味深いものです。変奏曲op3を開拓する上で、先生からインスピレーションを得て随分助けになった時期がありました。

シマノフスキの音楽には印象主義の要素が多く含まれています。特に、この作曲家の作品の第2期はそうですね。従って、クロード・ドビュッシーの音楽は、このポーランド人作曲家の作品を解釈する上でとても参考になります。シマノフスキでは色彩がとりわけ大切なのですが、適切な色彩を探すとき、ドビュッシーは大きくものを言います。感情や強い表情の表現を助けてくれるのです。

さらに、すべての音楽家にとって、解釈する際一番大切なことは、自然体でいることです。自然な状態でいると、説得力が高まり、真実を表現できますし、聴衆にもよく伝わります。音楽を愛する人々の心を、すっと捕えることができるのです。

―さて、コンサートピアニストとしての生活の中で、プライベートな時間を持ちリラックスすることはできますか。


もちろんです。プライベートな時間は持つようにしています。音楽に埋没しないで他のことをする時間を持つことはとても大切です。そのため、1年のうちどの演奏会に出演するのか決め、計画をしっかりとたてる必要があります。ここはコンサートのための時間、ここはレパートリーを広げるための時間、ここは次のアルバムの録音のための時間、というように。

生活のほとんどは音楽に費やしますが、他の方々と同様、僕も立ち止まって自分を振り返ったりリラックスする時間が必要です。皆さんと同じように、休日には出かけて息抜きをし、考え事をしてリラックスします。コンサートの後は静かに過ごすのが好きです。演奏を終えて車に乗って行くと、とてもくつろぎます。ヨーロッパで演奏するときはたいていいつも車で移動しています。飛行機だとサプライズや冒険がありますけど――飛行機の遅延とか荷物がなくなるとか。車の方が便利だし自由に動き回れます。ドア・ツー・ドアで旅を計画して実行できますから。

―家族とはどのくらい一緒に過ごしていますか。

僕にとって家族は本当に大切です。だから、可能な場合は演奏旅行も一緒に出かけるようにしています。今回のアムステルダムは、家族全員で――両親と妹と一緒に過ごしました。そういえば、初めての日本ツアーは一カ月以上にわたりましたが、やはり家族が同行しました。緊張感や様々なストレスを感じた後、話をして一緒に過ごすことができる人がそばにいることはとても大切です。他の演奏家を見ても、皆さん自分に近い人をツアーに同行させています。ホテルで一人ぼっちというのは、つらいと思います。

―信仰心はあなたに影響を与えていますか。あなたの人生に、どの程度助けになっていますか。

信仰は僕の人生で非常に重要な部分です。演奏者としての生活で、神への信仰は僕の心を大いに支えてくれます。日々の生活を生き抜く上で、困難な時は常に信仰に助けられています。ショパンコンクールの期間中も、祈りが僕を力強く支え、信仰心が僕の気力をつないでくれました。僕の人生において、神への信仰は、僕の力の源です。

―来年の演奏会の計画はどのようになっていますか。

まずは、来年のショパンイヤーの計画があります。2010年はヨーロッパ、アメリカ、日本をツアーしますので、忙しくなります。1年に3つの大陸を周るわけです。だから、演奏会に十分時間がかけられるように、ショパン協奏曲のCDは今完成させたかったのです。演奏会の曲目ですか?ショパンだけではなく、演奏会の前半には、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトそしてクロード・ドビュッシーの曲を演奏します。また、現在、シマノフスキにも取り組んでいます。シマノフスキの音楽はショパンほど有名ではないし頻繁に演奏されませんが、聴衆の反応がとても良いのです。世界にシマノフスキを広めるのは、価値ある仕事だと思っています。ポーランドでは来年の2月と5月に、ショパンのコンチェルトを何回か演奏します。


―次のCDは、どのような曲になりますか。

まず、良い録音になるよう頑張ります。ショパンの協奏曲の後のCDは、ソロアルバムを計画しています。曲目についてはまだ言えません。ドイツ・グラモフォンと、さらに3枚のCDについて契約をしました。

―ありがとうございました。成功を続けられますよう、祈ります。

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2009年11月5日木曜日

ドイツ・グラモフォン111周年にを祝して、ブレハッチのご挨拶




英語





ポーランド語
"Wszystkiego najlepszego dla Deutsche Grammophon." = "All the best for Deutsche Grammophon."



ドイツ・グラモフォンの111周年に対する、ラファウ・ブレハッチの挨拶のYouTubeのビデオです。


彼が所属するレーベル、ドイツ・グラモフォンは1898年12月にハノーバーに設立され、今年2009年が111周年にあたります。

ドイツ・グラモフォンの111周年のウェブサイト

111周年を記念して、グラモフォン所属アーチストの録音のスペシャルボックスや書籍を発売したり、
(例えば、6CDボックスには、ブレハッチの「ショパン前奏曲ト長調が含まれています。)
録音に対する人気投票を行ったり、
また、所属アーチストのご挨拶サイト:Artist Greetingsもあります。

YouTubeにも、deutschegrammophon1の名で、ドイツ・グラモフォンが所属アーチストのご挨拶ビデオや演奏ビデオをいくつか公開しています。
ブレハッチのご挨拶ビデオは、英語版が11月3日に、ポーランド語版が10月26日にそれぞれ公開されました。


グラモフォンのArtist Greetinsのサイトに載った、ラファウ・ブレハッチの挨拶文を紹介します。(9月の半ばにアップされました。)


「ドイツ・グラモフォンと初めて出遭ったのは18年前、クリスマス・プレゼントでもらった、ベートーベンの交響曲田園、
ウィーンフィル、指揮:レナード・バーンスタインでした。

当時は音楽学校の1年目でしたが、僕のクラッシック音楽のコレクションはすでに大きなものでした。
僕が頻繁に選んで聴いていたCDには、決まって黄色のカルトゥーシュ(ロゴ)がついている、と、ほどなく気づきました。

このロゴが、このイエローレーベルの録音であれば、最高の芸術的クオリティや喜び、感動が期待できるぞ、 と教えてくれたのです。

ドイツグラモフォンの所属アーチストとして、111周年を伴に祝福できることは
この上ない喜びです。

この3桁の数字は、グラモフォンのクラッシック音楽への忠誠を、3重に確認するものです。
つまり、音楽、プロフェッショナリズム、そして世界中の何百万人もの音楽愛好家と音楽の美しさを共有する強い意思への忠誠が、
この数字に表現されているのです。

伝統の尊重と、完璧さの飽くなき追求により、ドイツ・グラモフォンは、今から111年後も
この表現を体現し続けているだろうと、堅く信じています。
ラファウ・ブレハッチ」




ラファウ・ブレハッチとDGとの出会い―田園―は、5歳のとき、ということになります。
うちにも、彼の言うDGのベートーベンの田園、バーンスタイン+ウィーンフィルのCDがあったような、と探しましたが、残念、田園はありませんでした。。
DGのCDはとてもたくさんあるのですが。。バーンスタインのベートーベンもたくさんあるのですが。。



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2009年10月18日日曜日

心打たれるブレハッチの新アルバム―レビュー(ポーランド)

ラファウ・ブレハッチの新アルバム「ショパンピアノ協奏曲」について、
ポーランドのGazeta Prawna に10月10日付けで掲載された、Tomasz Sztuka氏のレビューです。

もとのレビューのURL:
http://www.gazetaprawna.pl/tagi/kultura
スクロール・ダウンしてラファウ・ブレハッチの写真のところでクリックしてください。

英語化した記事はこちらです。

例によって、モトがポーランド語で、私はポーランド語を正式に学んだことはありません。
なので解釈率8割程度、のおおらかさでご覧くださいませ。





心打たれるブレハッチの新アルバム
Tomasz Sztuka

2005年、ラファウ・ブレハッチのショパンピアノ協奏曲ホ短調の演奏を聴いた時、彼はきっとコンクールで優勝するだろう、また音楽愛好家の心をつかむだろうと確信した。今振り返ると、その2つとも実現したわけだ。最近彼はショパンの2つの協奏曲のCDをリリースした。

ブレハッチはポーランド音楽を「商品輸出」する最初の事例となった。彼は栄誉あるドイツ・グラモフォンと有利な契約を交わし-これまでこれを可能としたのはクリスティアン・ツィメルマンだけだった― 世界へ飛翔した。9月後半にリリースされたショパン協奏曲の録音は、ブレハッチの才能と深い解釈力の証明だ。ブレハッチの音楽は彼の内面の希求を明瞭に示し、それを外に向けて豊かに表現している。彼のスタイルは従って、その徹底した完璧さゆえ「機械的」とよく言われるツィメルマンとは異なる。

ブレハッチはショパン弾きとして分類されないよう、努力している。

ショパンの前奏曲の録音(2007年)をDGからリリースしてほどなく、ハイドン、モーツアルト、ベートーベンのソナタ集を録音、極めて高い評価を得た。ショパンの協奏曲を、中心的アーチストとして録音した背景には、来るショパンイヤーとの関係がある。

彼がポーランドのこの作曲家に戻った理由は、2005年の成功後、聴衆が2つの協奏曲の完全録音を望んでいた、その願いに答える意味合いもあったのだろう。

彼の演奏はひけらかさない。革命的な特徴もない。

私たちの若いピアニストは、少なからず過去の演奏を参考にしている。
彼は伝統を重んじる一方で、自分独自の考え抜いたスタイルも保っている。最高度の軽やかさ、新鮮さ、同時にショパンの伝統への忠実さ、こうした特徴は、古いけれど模範となるかつての演奏 ―ヴィトルト・ロビツキ指揮、ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団、レギナ・スメンジャンカ(ヘ短調)、ハリーナ・チェルニー=ステファンスカ(ホ短調)の演奏を思い出させる。2つの協奏曲とも1959年に録音された。

ブレハッチの協奏曲ホ短調は、最近DGから出されたユンディ・リー(フィルハーモニア管弦楽団、アンドリュー・ディヴィス指揮)の録音よりはるかに優れている。後者では、指揮者が解釈の正確さよりも音量を重視している。

この新譜で特筆すべきは、オーケストラ、ピアニスト、指揮者が完璧に調和していることだ。

どの演奏者も目立とうとしていない。ピアニストは自分が優先されるような勢いを得ようとはしていない。ラン・ランなど、他の多くの録音ではありがちなことだが。
ブレハッチは安っぽいトリックなど使わない。奇をてらうこともしない。彼は威厳ある演奏をし、卓越したオランダのオーケストラが同等の立場で演奏することを許した。

演奏者間の一貫性がない例として、オルガ・カーン、ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団、アントニ・ヴィト指揮(Harmonia Mundi、2006年)がある。ピアニストの流麗な演奏が、重厚なオーケストラから浮いてしまっている。

ブレハッチは協奏曲の録音に際し、自分で指揮者と好みのオーケストラを選ぶという、類まれな機会を得た。彼の選択は極めて正確なことが証明された。

2008年12月、威信あるプロフェッショナルな「グラモフォン」誌は、オランダのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団を世界で最良のオーケストラと評価した。

最近演奏頻度の減った、ポーランド生まれの偉大な指揮者イェジー・セムコフは、ショパンの2つの協奏曲からもっとも大切なものを引き出した。若々しい軽やかさ、ときに大胆さも。常に適切なテンポを保ち、はったりや虚勢がないこと。
このアルバムでは、他の録音では聴こえない音符が、楽譜からきちんと取り出されていると、時々感じる。消えてしまったり、紛れ込んだり、テンポに押されて最後まで響かせることができなかった音が、ちゃんと存在するのだ。ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の清らかな楽器の音色が大きく寄与していることは間違いない。
(以下、ショパンについて、省略)

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2009年10月11日日曜日

ラファウ・ブレハッチCD「ショパン前奏曲」欧州版の解説(07年10月)

English

ラファウ・ブレハッチの「ショパンプレリュードのCD(欧州版)」のライナーノーツにある解説もアップしておきます。
「ソナタ集」同様、これも日本版では、載らなかったものです。
やはり以前、多くのファンの方に見ていただいた内容ですが、最近の愛好家の方にも見ていただきたく、アップいたします。
特に新たに内容を見直すことは、していません。文章は2年前、写真も去年のままです。


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ショパンを弾いていると心がくつろぐ

若きポーランド人ピアニスト、ドイツ・グラモフォンデビュー

2005年10月、ポーランド北部の小さな町ナクウォ出身のひかえめな若者――心を深く集中させ、素直で、過ぎた謙虚さをそなえた若者が――第15回ショパン国際ピアノコンクールのためワルシャワに到着した。
私が彼を知ったのはその3ヶ月前で、他の参加コンテスタントは誰も知らなかったが、コンクールではラファウ・ブレハッチが最も卓越した演奏者のひとりだと確信していた。
類まれなる技術を持って――煌き、正確で輝くようなその技術と供に、彼の演奏は詩情、成熟、均衡、集中を感じさせる。


1975年にクリスティアン・ツィメルマンが第9回コンクールで優勝して以降、ポーランド人アーチストが、かくも新鮮なアプローチ、心を揺さぶるパーソナリティ、何よりも解釈上の誠実さで聴き手の心を深く魅了しつつ現出したのは初めてだった。
ラファウ・ブレハッチのこれら特徴は、彼のまれにみる音楽・作曲家に対する謙虚さと相まって、初めてショパンに関わって以来の特徴となっており、2005年ワルシャワでは、この特徴により主要な賞を独占することとなった。
彼の例外的な才能を顕彰するため、審査員はコンクール史上初めて第2位を授与しないことを決めた。
その場にいて彼を見、彼の音楽を聴いたならば、彼の演奏がショパン的理想に極めて近いものであることが確信できたはずだ。




「これまで長く、自然な過程をたどってきました。」とラファウは言う。

「まず、ノクターンop32-1ロ長調から始まりました。
しかし、私のショパン観は、他の作曲家の曲、とりわけバッハ、3大ウイーン古典派の作曲家、そしてドビュッシーを弾くことで豊かになりました。
ドビュッシーでは色彩のコントロールと音の造型がとても重要でした。」


コンクール後のリサイタルで、ブレハッチのウイーン古典派の演奏に私は感銘を受けた。
微妙な感情の均衡の表現は、これほど若い演奏家にはほぼ不可能だと思っていた。
しかし、作曲家と演奏者との融合――いわば同質の精神が合体したと、直ちに感じ取ることができたのはショパンだった。


「はい、ショパンを弾いていると、私は心がくつろぎます。」と彼は言う。

「何か直感的に、潜在意識のどこかで、こんな音になるはずだというものを感じるのです。」


主要な文化の中心地から遠く離れて育ったことで、ブレハッチはあるべき方向へ導かれ成長することができた。
両親は音楽家ではないが、彼が作品に没頭できる、理想的な環境を与えた。
彼に録音を買い、ピアノのレッスンに車で送り迎えし、コンサートに連れて行った。
彼はビドゴシチに通い、そこで、最初はアルトゥール・ルービンシュタインハイスクールでJacek Polanskiに師事、その後、ビドゴシチ音楽アカデミーで、Katarzyna Popowa-Zydronに師事し、2007年6月末、彼女のもとで学業を修了した。


「先生が芸術の門を開いてくださったのです。
特にドビュッシーを経験させてくださったことでピアニスティックな音色の色彩が極めて重要だとわかりました。
これによって、ショパンへの準備ができました。

先生の指導のもとショパンの音楽を学び始め、先生と一緒にコンクールのプログラムを検討しました。

ポーランド人にとってショパンコンクールは神聖なものではありますが、先生と私はこのコンクールを私の成長のための1つの段階ととらえていました。
コンサートキャリアを積むきっかけとなるコンクールは他にもたくさんあるでしょう。
Popowa-Zydron先生は常にこのことをおっしゃっていました。

「コンクールには全部失敗するかもしれない、でも、一番大切なのは音楽への愛を失わないことです。」とも。」


ブレハッチが学んだビドゴシチの音楽アカデミー



ワルシャワでは、ラファウは注意深く組み立てた自らのプログラムに完全に没頭していた。彼の演奏にはためらいや不自然さは微塵もなかった。
あの前例のない成功に面食らっていたのは彼ひとりかもしれない。


「ここまで来られるとは思いませんでした。」と彼は言った。

「たぶん、周囲の喧騒に全く関わらなかったからだと思います。
私は演奏を終えるたびに、ナクウォの自宅に帰っていました。

休息をとり、森を歩き、ラジオを聞いたり新聞を読んだりはしませんでした。

自分の最大の夢が実現したのだと実感し始めたのは、後で家に帰ってからでした。その時になって、今後多くの新たな挑戦に直面することになるのだとわかってきました。

クリスティアン・ツィメルマンが素晴しいお祝いの手紙を送ってくださり、自分を頼りにするよう言ってくださいました。
最近、2人で数日間を過ごす機会があり、たくさん話したり、演奏したりしました。真の友人を得たように感じています。」



ワルシャワでの勝利により数多くのリサイタルや招待の依頼が押し寄せる中、ブレハッチはドイツ・グラモフォンから接触を受けることとなった。


「今後自分の音楽があらゆる人々の聴けるところとなり、分析・批判の対象となる、というのは、わくわくするような、しかしちょっと大変なことでもあります。

大いなる責任を伴うことですので、コンクールの時と同様、肉体的・精神的に最大限の準備ができた状態で録音にのぞみました。」



なぜ、このピアニストはデビューCDにプレリュードを選んだのだろうか?

「プレリュードは限りなく魅力的です。多様さの中に多くのアイディアを抱含しています。
私はop28の各曲を1つのユニットとして、内部の緊張とドラマを持った全体として形作ろうとしました。

ノクターンop62は長年親しんできた曲であり、私はこの多様な顔をもつ傑作をどう解釈するか、納得できる方法を発見することができました。
これら2つの作品では、ショパンは和声(harmony)でも色彩でも同時代を大きく先取りしていました。
ロ長調(op62-1)は印象派への比喩を促すものです。」


ショパンの演奏では、古典的スタイルとロマン派的スタイルのどちらを好むのか、と尋ねたところ、ブレハッチは躊躇なく、前者を選んだ。


「外向的解釈だけでなく、内心の規律を働かせた内性的(introverted)解釈でも、聴く人を満足させることができます。
私の解釈は、いわゆるメンデルスゾーン的観点と呼べるものに近いものです。
おそらくこれは、早い時期に古典のレパートリーを経験したことが影響しているでしょう。

私は常に、できる限りのディテイルを表現しながらも、音楽のフォルムはそこなわないように努力してきました。
すべてを明瞭にそのまま表現した方が、作品にこめられた種々の感情をずっと簡単に表現できるでしょう。

だからといって私がロマン派的スタイルを拒んでいるわけではありません。
私はロシアの何人かのピアニストのように外向的ではありませんが、いつか、ラフマニノフを弾く日がくると思っています。」
(Adam Rozlach:2007年8月)
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DGのサイト同一の英語が載っています。
このページの左側のINSIGHTSをクリックしてください。



解説者のAdam Rozlachは、Preludiaではもはやおなじみの名前です。ポーランドラジオでショパンの番組を持っており、ラファウ・ブレハッチのシンパの音楽ジャーナリスト、今回のコンチェルトのCDも、何度もインタビュー等でとりあげてくれました。


Adam Rozlach が、ショパンコンクールの結果が出た2005年10月22日付けのコンクールのGazetaに寄せたコメントです。
• What kind of competition was it?
It was Rafał Blechacz’s competition.

• What should be changed in the competition formula?
The main thing is the jurors. It can’t continue like this, because it’s a crime. It can’t be that the finalists include mainly students of the jurors.

I want to emphasize, during this competition nobody played Chopin like Blechacz did, and nobody was as close to Chopin as he was. This was a historic performance, we were witnesses to a great moment, I can say this without a shadow of a doubt.


Adam Rozlachは、メールの問い合わせにもすみやかに丁寧に誠実に答えてくれるそうです。ポーランドのダナさんは、彼が番組で述べた内容に疑問(不満)があり、問い合わせをしたのがきっかけで、時々メールを交換しているそうで、彼女のラファウ音楽に対する意見が、別の演奏家の特集のときに番組で読まれた、と言ってました。Rozlachに限らず、彼女はいろいろな評論家に対してメールで意見を言うことがあり、概ね返事は来るそうです。書いてある中身は、評論家によってさまざまで、失礼なレビューを書く人は、メールも失礼だったりするようです。
でも、そういう交流がもてて、うらやましい気がします。


また、昨日Preludiaにアップしたインタビュー、見てくださった方、どうもありがとうございました。
私は、
「録音マテリアルを聴いた後、ホ短調コンチェルトは、演奏会のライブ録音をCDに出そうと決めました。」
とラファウ・ブレハッチが自ら述べている部分が見られて、うれしかったです。

伝えられているように、6日間も録音セッションを持ち、演奏会の当日(7月2日)は、午前中のゲネプロもCD用に録音したとのこと。通常の演奏会とは異なる緊張感と、1演奏会で2つのコンチェルトという厳しい環境で、しかもホ短調はプログラムの最後に演奏したことを考えると、ラファウ・ブレハッチらしい、さっぱりとした決断だと思いました。
この録音のためのコンセルトヘボウの演奏会では、ソリストと指揮者のステージへの出入りに、通常の階段は使いませんでした。ステージの下手(向かって右)のオケの出入り口から、お二人とも出入りしたそうです。


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2009年10月10日土曜日

ラファウ・ブレハッチ、古典派ソナタ集CDに関するインタビュービデオ

グラモフォンのプロモビデオの元ビデオでの、ラファウ・ブレハッチの発言です。(2008年) 
ビデオのリンクは無効になっています
昨日の、ブレハッチの書いた解説と同様、そろそろ時効かと思い、アップします。多くのファンの方にはすでに回覧している内容ですが、最近彼の音楽が好きになった方のためにアップします。わりと荒っぽい訳ですが、改めて見直すことはしていません。


また、Preludiaの方に、9月末に公表されたブレハッチのインタビュー(ポーランドのメディアと)の前半をアップしておきました。
日本のことも、いつものようにうれしそうに話しておられます。

「ショパンの作品はどこの国でも高く評価されています。最も顕著なのは日本でしょう。日本ではショパンの音楽はほとんど神を崇拝するレベルに達しています。初めての日本ツアーでは、担当エージェントの要請で、オールショパンプログラムになりました。僕のファンクラブさえ、あるんですよ。」


私は彼の言葉を取り扱うごとに、演奏を聴いたときと同じくらい、いつもawe and admirationの心境になります。
飽きずにブログを続けているのは、私にとってはカリスマ的なこのアーチストから、毎回何かを学べるからだと思います。
今回も、なるほど、と感心する部分が2,3箇所ありました。
ポーランドでのインタビューは、こちらから。



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ショパンコンクール後最初の録音がショパンというのは、私にとって自然なことでした。でも、2枚目のCDでは、異なったスタイル・作曲家を見せたいと思い、ハイドン、モーツアルト、ベートーベンを選びました。ハイドン後期のソナタと、ベートーベン初期のソナタです。ハイドンとモーツアルトの関係や、特にハイドン後期の作品とルートヴィヒ・ヴァン・ベートーベン初期の作品との関係を示したかったのです。

このレパートリーは、いつ頃から弾いていましたか?
思い起こせば、音楽教育を受け始めたのは、6歳の時ですが、モーツアルトの作品や、もちろんバッハの作品と、他にもいろいろ、カール・チェルニーなど勉強しました。モーツアルトの作品は本当にとっても好きでした。初めて人前で弾いたモーツアルトの作品は、変奏曲ハ長調でした。皆さん喜んでくれて、とても素敵な作品です。コンクールの前も、モーツアルトやハイドンの曲はたくさん弾きました。ハイドンの変ホ長調ソナタは、日本の浜松国際コンクールで弾きました。2003年でした。ベートーベンのソナタもコンクールで、たしか初めての国際ピアノコンクールで弾きました。2002年、ビドゴシチでの青少年のためのルービンシュタインコンクールでした。ビドゴシチは私が音楽教育を受けた都市です。そしてこのソナタを国際コンクールの際演奏しました。しかし、モーツアルトのソナタK311は、2005年のショパンコンクール優勝の直後から弾き始めました。今コンサートシーズン、今年は、このソナタを何回も、ヨーロッパやアメリカ、日本でのリサイタルで弾きました。これら3つのソナタは、こうやって経験をつんできたと思っていますので、これらの作品をCDに入れようと決めました。

ショパンとウィーン古典派の関係について。
古典派の作品、特にハイドンとモーツアルトは、ショパン音楽を理解する上でとても重要だと思います。ショパンがモーツアルトのオペラを愛していたことはよく知られています。また、ショパンの2番目のピアノ教師ヨーゼフ・エルスナーは、ハイドンの弟子だったことも興味深いです。またショパンは古典派のソナタ、スタイルを熟知し、そのスタイルを愛していました。古典派音楽はショパンの初期の作品に影響を与え、例えばソナタ第1番ハ短調や、ピアノ三重奏ト短調でそれが示されています。
こうした作品は、例えばソナタ2,3番に比べるとあまり有名ではありません。しかし、特別な古典的雰囲気が興味深く、フォルムは典型的な古典音楽です。とても面白いです。

なぜこれら3人の作曲家を1枚のCDにまとめようと思ったのか。
ハイドンとモーツアルトの特別な関係、ハイドン後期の作品とルートヴィヒ・ヴァン・ベートーベンの初期の作品との関係を示したかったのです。この2人の作品には、交響楽や弦楽四重奏の影響が聴こえます。これを証明するような興味深い部分やポリフォニックの要素が多く見られます。ハイドン後期の、ベートーベンの初期の作品に与えた強い影響を明らかにしたかったのです。この作品には交響曲や四重奏的な要素が各所で聴こえます。例えばベートーベンのソナタ第1楽章の最初の部分は典型的な四重奏の雰囲気ですし、1楽章の繰り返しの部分は典型的な交響楽のトゥッティです。他にも、交響曲と弦楽四重奏の経験による影響を示す箇所がたくさんあります。私のCDの主なテーマはソナタなんですよ。CDのまさにタイトルなのですが、3人の偉大な作曲家、ハイドン、ベートーベン、モーツアルトを通じて、ソナタの異なった存在を示したいと思いました。もちろんソナタは、古典派の時代の典型的な音楽の形式でした。古典派の時代にとても人気のある形式でした。この形式を使った、最も偉大な作曲家がハイドン、ベートーベン、モーツアルトでした。私はこれら3人の作曲家をCDに選びましたが、このCDの主なテーマがソナタ、というわけです。

これは、ヴィルトゥオーソ音楽ですか?
各ソナタにそれぞれ典型的なヴィルトゥオーソ的要素が含まれています。たとえば、ハイドンのソナタの終楽章はとてもヴィルトゥオーソ的ですし、モーツアルトのソナタも、特に第1楽章はそうですね。しかし、ただヴィルトゥオーソというだけでなく、モーツアルトの作品では彼がオペラをとても愛していたことがよくわかります。例えば、第2楽章では、たくさんの声楽的な美しい要素が。。。(ビデオはここで終わっています) 



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2,3ヶ月前、お友達に教わって、ショパンのピアノ三重奏を聴いてみる機会がありました。ベートーベンみたいで、ベートーベン好きな私としてはとてもうれしかったです。このインタビューでのブレハッチの発言がなかったら、またブレハッチを通じてショパンを尊敬する彼女とお知り合いにならなかったら、この曲を聴こうとは思わなかったでしょう。
(チェロはヨーヨーマ、ピアノはエマニュエル・アックス。先月ニューヨークフィルの演奏会に行ったとき、エマニュエル・アックスのソロでベートーベンのコンチェルト4番を聴く機会がありました。当然ながら、ブレハッチの来日公演のときのベートーベン4番と、どうしても比べてしまいました。
ソナタ1番も、今回もう一度聴いてみました。手元にあるのは、ダン・タイ・ソンさんの録音―ショパンの3つのソナタ集です。これもブレハッチを初めて知ったとき、いろいろな演奏家のピアノソナタ3番を聴き比べたとき購入したものです。)
私自身はラファウ・ブレハッチのショパンにのみ傾倒しているわけではなく、どちらかというと、モーツァルトやベートーベンの方が好きです。まだ限られた曲しか聴いたことがありませんが。モーツァルトはコンチェルトも含め全曲録音してくれないかなあ、ベートーベンのコンチェルトも。。。と願ってはいるものの、プライオリティを考えるとむずかしいでしょうね。
「ラファウはカメレオンのように、演奏するごとに、その作曲家自身になりきる。」とポーランドのオラさんが言っていました。ほんとにそう思います。 

2009年10月9日金曜日

古典派ソナタ集CD(欧州版、アメリカ版)ライナーノーツ用に、ブレハッチが書いた解説

「ウィーン古典派ソナタ集CD」(欧州・アメリカ・ポーランド版)のライナーノーツに載っていた、ラファウ・ブレハッチによる解説です。 日本盤にはこの解説は入りませんでした。
ポーランド語のみ、オンライン上に存在しています。
内輪のファンの方にのみ回覧し、ブログでは去年鍵付きにしていましたが、リリースから1年以上たちますのでそろそろ時効かと思い、アップします。
ラファウ・ブレハッチのピアノが好きな方に、彼の考えていたことを理解していただければ。。



プログラムについての所感
ラファウ・ブレハッチ


ハイドン後期のソナタ変ホ長調と、ベートーベンのソナタ第2番とを連続させることで、私はこの2人の作曲家の関連と、
ハイドンの音楽が彼の若き後輩の初期の作品に与えた強い影響に、聴き手の注目を集めようとした。
ハイドンのスタイルは、ベートーベンにとって、自分自身の音を求め育成するための模範であり判断基準だった。
鍵盤曲の作曲において、二人の作曲家は、他の楽器のジャンルでの作曲経験を広く生かした。
変ホ長調ソナタの様々な音域での、主要なテクスチュア、流れ、声部を注意深く見るならば、
交響曲や弦楽四重奏的考え方の存在に気づく。
ハイドンの他のソナタを分析する際も、同様のプロセスが観察できる。

私は古典派ソナタのある種のパッセージを弾く時はいつも、様々な他の楽器の音色を想像して楽しんでいる。
ハイドン、モーツァルト、ベートーベンに取り組む際、アーティキュレーションやペダリング、音色に迷いがある時はいつも、
作品の全体または部分を心の中で「オーケストラ化」することにしている。
この「内心の楽器編成」をすると、解釈に関する迷いが消える。
ある種のオクターブは(レチタティーヴォ)セッコで、別のパッセージは豊かで温かいソノリティをもったチェロのように、
(例えば、変ホ長調ソナタのアダージョの中間部分)弾くべきとわかっているが、
別のフレーズはクラリネットの音を模倣するし、別の低音のある種の音は明らかにバスーンを再現することになる。
ハイドンのソナタ第3楽章は、極めてオーケストラ的な性格を持つ。
聴いていると、トゥッティの音や、もう少し小規模な楽器群(木管や弦)の音を容易に想像できる。

変ホ長調ソナタの一楽章に見られるような、速い音の連続を弾くとき、
私は弦楽器の典型的なフィギュレーション(装飾的表現)を連想する。
つまり、16分音符や32分音符でさえも、個々の音が全て重要であり、聴こえなければならない。
音符ひとつが欠けたとしても構造全体を乱してしまう。――これは真珠の首飾りに似ている。
すなわち、真珠一粒という各要素が、それぞれにおいて完璧であり注目に値するが、
同時に、他の真珠とまとまることによって調和ある全体を創り出すことで、私たちに強い印象を与えるのと同じだ。
この「真珠のような」音の連続のフレーズを思い描くことによって、機械的で単に技術に走った、
エチュードのような速いフィギュレーション法を避ける手段となる。

もちろん、このソナタには、多くのスフォルツァンドや著しいダイナミクスの対比によって表現される勝利の雰囲気から、
最終章や第1楽章第2主題でのユーモアやウィットにいたるまで、種々様々な異なった雰囲気が含まれている。
ハイドンがほぼ同時期に書いた交響曲「ロンドン」や、イギリス滞在時代に作曲した他の音楽にも共通の精神が見られる。

類似の質感は、ベートーベンのイ長調ソナタでも聴くことができる。
これはハイドンに献呈され、ハイドンの変ホ長調ソナタとほぼ同時期に、ベートーベンがハイドンの下で学んでいた短い期間に作曲された。
第1楽章の最初の部分、特に9から20小節と、166から185小節までは弦楽四重奏のように私には思える。
20小節で最初のモチーフがフォルテで繰り返される部分は、私にとっては疑いなくオーケストラのトゥッティに他ならない。
しかし、典型的なピアニスティックな要素も、この作品には明瞭に存在し、その感情的で表現豊かな特徴は、
成熟し、反逆的で英雄的なベートーベンを予見させる。
(例えば、最終楽章ロンドの中間部のスタッカートの部分や、多くの和声の変化(harmonic changes)を伴う、情熱的な第1楽章の再現部など。)

モーツァルトのソナタニ長調k311は、オペラや交響曲を明確に考慮するモーツァルト独自の
本当にユニークなピアニスティック・スタイルの典型例だ。
第2楽章の痛いほどに美しい声楽のような主題は、特別に感動的で心を平穏にし、
オペラこそモーツァルトの真なる愛の対象だったことが、明瞭に示されている。
中間の楽章は作品の“心”だと、私は常々感じている。
この楽章において、作曲家も演奏者も、自身の魂の最も深い部分に潜む全てのものを、音で顕在化させる機会を得る。
名状しがたい魂の奥底のものを、全て明瞭に表現する自由を得るのだ。

今述べたことは、ロマン派の作品のことだろうか。そうではない。
古典派の作曲家が、ロマン派の作曲家とは異なった喜び、悲しみ、希望、絶望感を感じていたと推測するのは間違いだろう。
感情の基本的な性質はいつも同じだ。表現の仕方が変わるのみだ。
バロック、古典派、ロマン派、そして印象派の作品も含め、レパートリーを弾いていると、様式やアプローチはそれぞれ独自ではあるが、どの作曲家も伝える本質、感情、喜怒哀楽は常に同じだと感じる。

(ラファウ・ブレハッチ)


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ラファウ・ブレハッチが書いた原稿はもっと長いものだったのですが、編集の都合でカットされてしまったそうです(笑)。そういえば、ハイドンの記述が、他より長めですね。
そういえば、今年のショパン・コンチェルトのライナーノーツも、まとめの部分のパラグラフ、ラファウ・ブレハッチの人となりが書かれた一番大切な部分が、まるまるカットされてしまったこと、以前に書きました。
カットされた「まぼろしの部分」、来週になるかもしれませんが、アップしますね。 



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2009年9月18日金曜日

ラファウ・ブレハッチ新譜ショパン協奏曲発売前に、好意的なレビュー続々(ポーランド)

ラファウ・ブレハッチの新アルバム「ショパンピアノ協奏曲」は、ポーランドでは本日9月18日に発売となります。

発売前から、すでにいくつかのレビューが、ポーランドのサイトで見られました。
by Magdalena Talik
 by Jacek Marczynski, Father Arkadiusz Jędrasik



いずれも(予想通り)好意的な内容で、ポイントとしては、


・ブレハッチの音自体の美しさ。
・他のピアニストには存在しない、ブレハッチとショパンとの同質性。若々しさ。
・(イギリスの「グラモフォン誌」の評価から)現在世界最高とされているオーケストラとの共演の妙味。
・イェジー・セムコフとの共生。「これがショパンの音、これこそポーランドの音。」(Magdalena Talik)

といったところでしょうか。

Magdalena Talikは、RCOをオーケストラとして選んだことからもわかるとおり、ドイツ・グラモフォンがラファウ・ブレハッチに相当の投資をしていること、
ラン・ラン等、他の若手ピアニストとブレハッチとの違いを書いています。


「ラン・ランの若くアグレッシブな演奏とは異なり、また、多くの若手演奏家が、無理やり個性を見せようと頑張っているのとも異なり、ブレハッチの演奏は、ピアニズムの伝統に根付いている。もし覆面で聴けば、かつてのいずれかの巨匠の演奏と思ってしまうだろう。だからと言って、彼が誰かを模倣しているのではない。彼は自身の見識と技術によって、ショパン独特のテンポや音楽、ダンスのリズムを難なく、自由に、自然に弾きこなす。例えば、ヘ短調3楽章の湧き上がる喜びのマズルカのリズム、それとは対照的な2楽章の郷愁を誘う、とても美しいラルゲット。」





ラファウ・ブレハッチの記事を日々追っていると、ラン・ランとの比較を書いたものに時々出遭います。2人とも、ドイツ・グラモフォンの有望若手ということで。。

私はラン・ランも別に嫌いではなく、でも違うカテゴリーの音楽として、あるいは素晴らしいエンターテイナーとして気軽に受け止めていますが、ポーランドのファンの方で、明確に拒絶反応を示している方もいます。ラン・ランのライブ(ベルリンフィル、オザワとの共演)にも行って、録音も何回か聴いての結論だそうです。


プロモーション・ビデオを見ると、ラファウの2番に対する思いとか、レビューで書かれていることがらが、なるほど、よくわかる気がします。

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2009年9月4日金曜日

ショパンに囚われてはいないーラファウ・ブレハッチ、インタビュー

ラファウ・ブレハッチの、Dziennikという日刊紙とのインタビューです。
インタビューはアムステルダムの録音から帰国の直後、7月9日ビドゴシチにて行われ、8月16日に同紙のオンライン版で公表されました。

題名は、"nie jestem więźniem Chopina (I'm not a prisoner of Chopin)" ですが、私はそれ以外の部分、たとえば、ポーランドの作曲家だからスラブ的に演奏する、というのでなく、あくまでも自分の直感に従って曲を捉えることが大切、というような部分に興味を持ちました。

モトはポーランド語ですので、例によって正確度は80%位、というようなおおらかさでご覧いただければ幸いです。


**
私たちは彼が20歳の時、2005年のショパンコンクールで出遭った。今日、彼は大人になり、音楽的にも成熟し、世界中で演奏会を開いている。最近アムステルダムで、コンセルトヘボウ管弦楽団とレコーディングを終えたばかりだ。「ショパン弾き」のレッテルをどう感じているのか、なぜDodaやFeelと共演しなかったのか、ラファウ・ブレハッチが話してくれた。

(きりん注:Dodaは女性、Feelは男性の、いずれもポーランドの人気歌手。PreludiaにFeelのリンクをはってあります。)


(インタビューの始めの部分で、ラファウ・ブレハッチはコンセルトヘボウ管弦楽団を賞賛していますが、他のインタビューで何度も語っている内容なので、省略します。)


―クリスティアン・ツィメルマンやピョートル・アンデルシェフスキのように、指揮棒を持とうとしたことはないのですか。

小さい頃、ピアニストになりたいなあ、と思っていました。その後の年月と経験を経て、この選択が正しいと確信しました。

様々な音楽分野を探求することは、相矛盾するものではありません。20世紀以降、音楽が専門分化するようになりましたが、それ以前の時代、音楽家になるということは、いくつかの楽器をほぼ流暢に弾きこなし、作曲の経験もある、ということを意味していました。

最近は、かつての伝統に少しずつ戻りつつあるようですね。クリスティアン・ツィメルマンもピアノの後ろから指揮しようと決めました。

正直言うと、1つの素晴らしいチームを指揮するという考えは、とても魅力的です。マエストロ・セムコフの技を間近に見たとき、純粋に魅了されました。

でも、今僕はピアノに集中しています。今後のキャリアがどの方向に向かうのか、時間が答えてくれるでしょう。



―ショパンの前奏曲に取り組みながら、他の巨匠、特にロシアのものも聴いていらっしゃいました。ロシアの演奏家はコンチェルトの解釈に影響しましたか。

はい、特にネイガウス先生のロシア学派に大変感銘を受けています。モスクワ音楽院のコンサートホールで演奏した時、これまでの経験の中で、最もストレスを感じ、また、最も感激しました。それまでこのホールで弾いた先達は、ルービンシュタイン、リヒター、ギレリス、そしてグールドがいます。

自分としては強いて何かの伝統や学派に属する必要はないとも思っています。音楽解釈にとって最も価値があるのは、楽譜に書かれた作曲家のアイディアを読み取ることです。2番目に大切なのは、自分自身の直感、これによって、音符の間に隠れた部分を理解することができます。これは自分の直感であって、ある地域や時代に特有の考え方ではありません。

何が言いたいかというと、僕がよく対比されるクリスティアン・ツィメルマンも、ヨーロッパの同じ地域の出身ですが、彼をいわゆる東欧的なステレオタイプに結びつけるような要素はほとんどありません。さらに、今日、傑出したポーランド人作曲家の作品の演奏を見るならば、過度にロマンチックで、「スラブ的」に偏ったものが多く見られます。

もう少し説明しましょう。ある作品について他の演奏家の録音を聴く場合、僕は自分なりの解釈やビジョンが固まってから参考に聴いています。できれば、そうすることによって、否定するのでなく、肯定したいと思っています。

(きりん注:この部分は自信がないので、原文も載せておきますね。
[Wyjaśnię jeszcze, że po cudze nagrania sięgam zazwyczaj wtedy, gdy mam już w myślach gotową wizję danego utworu – i raczej po to, by się w niej utwierdzić, niż jej zaprzeczyć.] )

もちろん、ショパンのコンチェルトですと非常に人気の高い作品ですので、こうした外部からのインスピレーションをほぼ必ず受けることになります。僕も子供の頃からたくさんの録音を聴いてきたし、膨大なコレクションとなっています。

おそらく、僕が最も親近感をもつ解釈はルービンシュタインでしょう。彼の若い頃の自発的で感情豊かな演奏ではなく、人生の終焉に近い頃の演奏―深く集中し、美しい音を抽出したような演奏です。



―アムステルダムや他の音楽都市で、あなたの常連客がいらっしゃいますね。演奏するのに、どこが一番好きですか?

それはドイツでしょう。ドイツでは、音楽という芸術を醸成するユニークな伝統があります。
ドイツで思うのは、美しく音響も素晴らしいホールのこと、また、何よりも聴衆の理解力が抜きん出ていることです。

特に、夜の演奏会は神聖な感じがします。聴衆はきちんと正装し、誠実に集中して音楽を聴きます。言うまでもなく、これは演奏者の状態に最高にプラスに影響します。

もちろんポーランドで弾くのも好きですよ。僕の「最初の聴衆」は、いつもとても暖かく迎えてくれます。

ちょっと珍しいことがありました。僕の最初のショパンのCDは、ポップソングのチャートでも上位になりました。2008年にはTop Trendyにも招待され、DodaやFeelといった歌手の近くで演奏するかもしれなかったんですよ。でも時期がドイツ・グラモフォンの2枚目のCDの録音を重なったので、実現しませんでした。



―ポーランドではいつ演奏会があるでしょう。

ショパンイヤーでは多くの機会がありますので、うれしく思っています。ショパン生誕の日である2月22日には、アントニ・ヴィット指揮、国立フィルハーモニー管弦楽団と共演します。その後、ほとんどの主要都市でコンチェルトを弾く予定です。



―ショパン弾きの立場に捕えられている、とは感じませんか。

それは全然ありません。僕のウィーン古典派やリスト、ドビュッシーに対する聴衆の熱意ある反応を見ても明らかです。

実際、ショパンに専心取り組んだのは、コンクールの直前の2,3年だけです。それ以前は、ハイドン、モーツアルト、ベートーベンにほとんど集中していました。2枚目のアルバムで古典派に還ることができて、とてもうれしかったです。

ショパンのピアノ協奏曲のCDについての質問だとしたら、これは僕が自発的に決めたことです。この作曲家の生誕200年を祝福したいという、強い思いに突き動かされました。

その後の2枚のアルバムは、もっと後期のレパートリーのものにすると決めていますが、今は詳細は言えません。



@ ポズナンにて、2007年11月



「ドイツの聴衆が好き。」というラファウ・ブレハッチの発言は、これまでも2,3回目にしたことがあります。彼が好きな聴衆は、1.ドイツ、2.オランダのようです。
聴衆の態度や理解度で演奏者が大きく影響されるというのはわかりますが、「服装」も良い雰囲気をつくるのに大切な要素なのだ、と今回気づきました。きちんとした服装は、演奏者への敬意を表すものですね。私はこの点はいつもいいかげんなので、反省いたしました。
実際、聴衆からの反応で(と言っても、静かに聴いてるだけなのですが)ラファウ・ブレハッチが非常にポジティブに感化されるのを、アメリカの会場で目撃したことがあります。いずれも、耳の肥えた都市の聴衆で、純粋に、静かに、音楽を楽しんでいる雰囲気。終演時は、みんな笑顔でした。


ドイツの演奏会は多数ありましたが、とりあえず、すぐ思い出すビジュアルは今年3月のケルンです。夜の演奏会です。
(服装は、普通だと思いますが。)
このビデオを見ると、彼が最近発言している、
「(異なった舞台で何度も演奏することで)作品が、指だけでなく心の中で凝結してきた。」
(utwór krzepnie w palcach, ale też w sercu i umyśle.)
という感じがなんだかわかる気がします。

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2009年9月1日火曜日

ラファウ・ブレハッチ、ポーランドラジオとのインタビュー、CDショパン協奏曲について

2009年8月9日にポーランドラジオ2で放送された、ラファウ・ブレハッチのインタビューです。
インタビューは、7月の上旬か中旬に行われたようで、録音を終えたばかりの新CDについて、将来について、語っています。
ポーランドの、ラファウ大好きなダナさんとオラさんが英語にしてくださったものを、今日、ちょっと時間ができたので、記録としてアップします。
それ以前のインタビュー等と重複する部分はカットされています。

ブレハッチは今後、少なくとも2年位は新CDを録音する予定がないと予想されるので、記念です。

インタビューの英語 人物等のリンクがつけてありますので、参考にどうぞご覧ください。




RB: Rafał Blechacz
JH: Jacek Hawryluk (interviewer)


RB:オーケストラについては、1年前ロイヤル・コンセルトヘボウ(RCO)との共演の後、自分で決めました。イェジー・セムコフの名が心に浮かんだのも、ちょうどその時です。うれしいことに、僕の選択は受け入れられました。ショパンのコンチェルトの特別な雰囲気を考えると、どうしてもポーランド人の指揮者が良いと思いました。また、指揮者には僕の解釈を受け入れてほしい、とも思いました。

RCOは、短いフラグメントでも木管楽器を明瞭に聴かせるというセムコフの提案を喜んで受け入れました。

録音セッションは午前10時に始まり、午後1時か1時半まで毎日行われ、間にピアノや楽器のチューニングのため15分の休憩がとられました。1週間にわたって取り組みました。午後はマエストロ・セムコフや、コンマス、ピアノの調律士といろいろ相談しました。

マエストロ・セムコフとは、アムステルダムでの最終レコーディングに先だって、ポーランドで何度かお会いしました。僕たちはピアノの傍で、2つのコンチェルトの解釈についてかなり時間をかけて話し合いました。マエストロは、アゴーギクや色彩、ダイナミクスの変化についての僕の提案を注意深く聞いてくださいました。

僕はRCOの音色の質に魅せられました。また、演奏中、RCOが常に僕についてきてくれたのでとても心地よく感じました。2つのコンチェルトの特に第2楽章では、RCOととても美しく対話することができました。


JH: RCOは、ポーランドの舞踊をうまく表現できた?

RB: (笑いながら)RCOは第3楽章の演奏をとても楽しんでいましたよ。ポーランドの踊りをいい雰囲気で演奏するために、僕たちはたくさん時間をかけました。特にテンポとリズムに注意を払いました。録音されたこの部分を試聴したときは、RCOはうまく演奏したなあ、と感心しました。
RCOの素晴らしい楽団員たちは、僕たちの―僕とセムコフのアイディアを、何の問題もなくすぐに理解しました。

マエストロ・セムコフは、オケにあらゆる可能性を表現するよう、特に2つのコンチェルトの出だし部分では、何度も弾かせてくれました。ホールの完璧な音響も深いインスピレーションを与えました。

僕にとっても、2つのコンチェルトの最初のオケの部分はとても重要です。これによって、コンチェルトがこれからどう展開するのか決まりますから。この最初のオーケストラの美しい音色と、それが持つ可能性を聴かないとすれば、大きな損失だと思いますよ。

(同感です。視聴の1番目がほとんどオケだけでがっかりした、という声も聴きましたが、コンセルトヘボウの端正な演奏を楽しんだ方が得ですよ。きりん)



JH:君はクリスティアン・ツィメルマンが好きだけど、今回の演奏はツィメルマンのものとは随分違うね。ツィメルマンの演奏の、何を参考にしたの?

RB:1999年のツィメルマンの解釈は、彼独自のものですが、今日伝説のように考えられています。多くの指揮者やソリストに感化を与えています。
チューリッヒのトーンハレでコンチェルトを演奏したとき、マエストロのディビッド・ジンマンがツィメルマンのこのCDを聴くよう、オケに指示しました。僕はツィメルマンのそれ以前の演奏も聴いたことがあります。ピアニストが年月をかけ熟成していく証しだと思っています。

僕の解釈は良い意味でもっと若々しいものです。自分自身を表現したかったんですね。ツィメルマンの演奏のどこが影響したか、ちょっと特定できません。ただ、2曲とも、3楽章はルービンシュタインの解釈の影響を確かに受けています。他のピアニストでは、アルゲリッチや、アラウの演奏を聴きました。

マエストロ・セムコフは僕のアイディアを受け入れ、ご自分の考え方に固執しませんでした。僕についてきてくれました。マエストロはオケのパートではご自分のアイディアを実行しましたが、ピアノ部分では僕の演奏に美しい伴奏をつけてくれました。

ドイツ・グラモフォンとの最初の契約が順調に終了し、うれしく思っています。10日ほどしたら、僕はハンブルグへ行き、録音を全部聴きなおして、最良のものを選びます。編集作業にも最後まで立ち会います。

(きりん注:ハンブルグでの作業は、8月中旬にめでたく終了した、と報道されています。)

グラモフォンとは、3枚のアルバムを対象とした、新たな契約にサインしました。次のアルバムはショパンではありません。ポーランドの別の作曲家の作品その他が含まれます。こうした作品は、まもなく自分のコンサートで演奏する予定です。新CDののための、それ以外のマテリアルもすでに用意しましたが、今は、新CDについては話したくありません。


JH: 今はどんな風に勉強しているの?先生についているの?それとも独学?

RB:今は1人でやっています。常時見てくれる先生はいません。しかし、どのピアニストもそうでしょうが、「第2の耳」で確認したり、インスピレーションを得る、ということは必要です。なので、ツィメルマンやポリーニといった偉大なアーチストとお会いすることを重視しています。今度、コンサートでイタリアに行く際、マリア・ティーポと会うことになっています。自分が取り組んでいる作品に十分時間をかけ、作品への自分の見解を持ち、その上でその作品についてディスカッションすることは重要だと思います。


JH: 哲学の勉強を始めたと聞いたけど、勉強時間はとれるの?

RB:哲学の勉強は僕にとって、ピアノを離れてリラックスするとても良い方法です。1年目の課程は修了しました。ツアーの際本を持ち歩いて読む、というのが、僕の勉強方法です。僕は音楽の哲学に夢中で、哲学が僕の音楽学を支えているわけです。ロマン・インガルデンとヴワディスワフ・ストゥルジェフスキを読みました。ストゥルジェフスキ先生の「創造に関する弁証法」(Dialektyka twórczości)は、様々な芸術の解釈の考え方に関するものですが、非常に興味深かったです。

もしかすると、将来書くことになる学位論文は、特定の音楽作品の正しい解釈、という問題を扱うことになるかもしれません。


(きりん注:このストゥルジェフスキ先生とのインタビューが、新CDのライナーノーツに入るということです。日本版はどうなのか知りませんが。)


JH:ショパン年の2010ですが、将来の計画は?

RB:そのためにショパンの2つのコンチェルトは先に録音を済ませておきたかったのです。2010年は多くの演奏会で弾きますので、レコーディングの時間がとれませんから。3つの大陸を回ることになります。

しかし、僕は2011年の準備も、始めています。2011年は何回か、アメリカで演奏する予定で、フィラデルフィア管弦楽団とリストの2つのコンチェルトで共演します。指揮は、シャルル・デュトワです。デュトワとは、すでにショパンコンチェルト第1番で共演しており、素晴らしい経験でした。


JH:来年はワルシャワのショパンコンクールもあるれど、コンクールのことはよく思い出す?それとも君の光り輝くキャリアや将来の方が関心があるのだろうか?

RB: 僕はどちらかというと未来を見ています。でも時々、僕の人生を変えることになった瞬間のことも思い出します。今でもホ短調のコンチェルトを弾いていて最後の2ページになると、意識の深いところでコンクールの記憶がよみがえってきます。特にあの嵐のような拍手は忘れられません。.


JH: コンクールの時の演奏と、今回のアムステルダムでの演奏は、全く違う世界のもの、という印象を持ったよ。

RB: それは、僕の音楽家として、また人間としての成長の結果だと思います。様々な多くのピアノ作品やコンチェルトを、世界中のいろいろなオーケストラや指揮者と演奏してきた、その結果であることは、間違いありません。そのお陰で、自分の演奏する音楽が、「手や指と共に成長し」、心の中で成熟し、ゆっくりと、自然に変化してきているのでしょう。


JH:どうもありがとう。ポーランドラジオ2は、君の成功を祈ります。
RB:ありがとうございました。

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2009年8月19日水曜日

ラファウ・ブレハッチのCD「ショパン協奏曲」が、ドイツグラモフォンのサイトで視聴できます。

今回も海外の音楽ファンの方に教わりました。

ラファウ・ブレハッチの新CD「ショパン協奏曲第1番・第2番」、
ドイツグラモフォンのサイトで試聴できるそうです。
1番、2番とも、第1、3楽章の一部が聴けます。

こちらです。


視聴したラファウ大好きさん達から、即日届いたメールより(引用させていただきます。アリガトウ)

……特にNo.2、それこそ"Maturity"な演奏だと思いました。このNo.2は、NYでの演奏しか聴いたことないから、特に感動!!
あんなに澄んだ音、どうやったら出せるんだろう?オーケストラ、会場、指揮者が良いだけじゃあの音はだせないぞ~!まさしく、ラファウパワー!ラファウワールド!!ラファウマジック!!!早くCD聴きたいですね!!!! (アメリカ)


素敵!2番の1楽章を聴いていて、いつのまにか笑顔になっている私。笑顔が止まらない。私の大好きな楽章だけど、どの音もこれまでで一番綺麗。1番の3楽章はエネルギッシュでわくわくしました。本当とってもうれしいです。予想してたより、ずーーと美しい演奏。ラファウって天才!でもフランスではCDの発売は来年の2月か3月なんです。辛抱強く、待ちます。(フランス)


もう、ノンストップで聞きました。ラファウの演奏、すごい!!!!
ショパンのような演奏、しかも若い時代のショパンの演奏ね。
ディテイルまでちゃんと聴けました。
ポポヴァ・ズイドロン先生が、以前、ドゥシキニでおっしゃっていました。
「すでにこんなに美しく弾くラファウ。50歳になる頃は、一体どんな演奏をするのかしら?」
私は、すでに思います。コンクールから4年でこんなに進化したラファウは、今から4年後、どんな演奏をするのかしら?(ポーランド)




ユニバーサルのサイトに、ようやく新CDの情報がアップされました。
10月7日の発売です。
すでにたくさんのサイトで宣伝されてますので、予約済みの方も多いと思いますが。。

ご存知のように、ライブとゲネを含め、1回3時間~3時間半の録音セッションを6回も続けた中から選び出した、エッセンスの結晶です。アーチスト達の汗とこだわりと喜びを、ありがたく受け止めたいなあ、と思っています。



さて、他のラファウ大好きさん達と同様、きりんも、結構ショック状態です。
ピアノってこんな風に弾けるものなの?
オケもすごい。ソリストが言ってたとおり。
ファゴットもホルンも、こんな風に吹けるものなんですか?

本当に、ラファウ・ブレハッチはこんなに若いのにとってもmatureになってしまって、この先どうなるのか心配。
と、以前、彼のモーツアルトを聞いた評論家の宇野さんも書いてましたね。  



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2009年8月13日木曜日

ラファウ・ブレハッチ、ポーランドラジオ2のインタビューを聴いて(雑感)

8月9日、ポーランドラジオ2にて、ラファウ・ブレハッチのインタビューが放送されました。7月に録音した新CD "Chopin, The Piano Concertos"(邦題:ショパンピアノ協奏曲第1番&第2番)について、哲学の勉強について、今後の予定などの部分を、ポーランドのファンの方が英語にしてくれ、ポストしておきました。(前半です。後半は明日。)

インタビューは30分位あり、おおむね、既に他のインタビューで話しているラインだったそうで、新し目のところだけピックアップしてもらいました。
今回は英語が堪能な方が関与したので、読みやすい英語になっています。




(↓関連インタビュー等です。ご参考)

CD録音のため行われたアムステルダムでの演奏会に関するレビュー(日本語)
このレビューアーが、今回のインタビューを担当しました。

RMF classicとのインタビュー(日本語)

ポーランドラジオ1とのインタビュー(英語) 7月に放送←こちらのページから、ラジオ局のアーカイブで、ラファウ・ブレハッチのインタビュー(音声)の前半が聞けます。




英語はちょっと。。。という方も、上記日本語分だけ見ていただければ、ブレハッチの最近の発言のポイントはつかめると思います。今後リリースに向け、もっと多くのインタビュー等出てくると思いますが、基本線は常にこのへんだと思います。

今回のポーランドラジオ2とのインタビューでは、2011年にアメリカで、リストのコンチェルトを演奏する旨、再度発言がありました。「リストのコンチェルト」は今回も複数形になっていました。デュトワとの再共演を楽しみにしているそうです。初共演は2008年11月ロンドンでした。

DGとの新契約に基づく新CDについては、「ポーランドの作曲家の曲が入る。ショパンではない。その他の曲も含め、現在取り組んでいる。まもなく、演奏会でも演奏を始める。」とのこと。しかし、「詳細はまだ言いたくない。」そうです。想像はつくのですが、書くことはひかえましょう。


今回のインタビュー、私はラファウ・ブレハッチの話し方に非常に感銘を受けました。声のトーンが明るくて、とても聞きやすいのです。
いえ、ポーランド語を聞いて理解できるのではありません。が、英語スピーカーからの類推で、彼がどのような話し方をするタイプなのか想像できます。滑舌がよいのでききとりやすく(おそらく!)、文章もそのまま書き下してもちゃんと読めるような、正しい造りの文章なのだろうな、と想像します。繰り返し発言している内容なので、言いよどみがなく、説得力があるのでしょう。

本をよく読む人なので、語彙も洗練されているのでは。
と想像していたら、ポーランド系の方が、こう言ってました。

...yes Rafal is very assuring during interviews and very smooth
and communicative and well versed. He talks without hesitation and in a
very good literary Polish.

確かに自信に満ち、自分の話すべきことが明確なので少しの迷いもない感じ。
書き言葉のようにきれいな文章。

今回は、さらに、電話を通じてのインタビューでしたので、一層意識してクリアーな話し方をしていたようです。


日本語に変換したものを見ていただくだけでもわかるのですが、ショパンの曲に対するご自身の進化・深化に関することがらも、非常に緻密で詳細な説明をしています。この方はよく、「音楽のいいところは、言葉を使わないところ。」と、言葉の有限性と対比する形で音楽の無限の素晴らしさを表現していますが、実際、極めて繊細に言語を使って思考する人だと思います。哲学を専攻しているのだから当然といえば当然なのでしょうけど。目に見えないものの価値を言葉で説明しなくてはいけませんから。おおざっぱな人間は、従って、彼の話を聞いても、表面だけ見て、ディテールまで意識が向かないこともあるだろうな、といろんなインタビューを見ていて感じます。

「年を重ねるごとの、音楽家としての自然な成熟に伴い、自分の演奏も変わっている。」ということを最近ときどき発言しています。
演奏も、演奏家としても、(おそらくはひとりの人間としても)ほんの数年の間に変わってきているなあ、と、彼方で見ていて思います。



声のトーンに興味のある方は、上記ポーランドラジオ1のアーカイブで、彼の声を聞いてみてください。インタビュアーのおじさまの、ぐにゃっとした語りとは異なり、しゃきしゃき話しています。


ラファウ・ブレハッチは英語で話す場合も、一音一音が響くような発音です。(まるで彼のピアノのよう。)母国語の影響か、母音はあまり幅広くないのですが、子音は意識的にはっきりとキレイに発音する人だと思います。落ち着いたアルト、というイメージ。(男性にアルトは変かもしれないけど、とんがった声じゃないということ。)  



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2009年8月5日水曜日

ラファウ・ブレハッチのモーツアルトソナタ第16番(ボーナストラック)

ラファウ・ブレハッチのCD「ソナタ集」のオンライン版には、オンライン版のみアベイラブルなボーナストラック「モーツァルトソナタ第16番ハ長調1楽章」が入っています。
以前このことを知って、フランスのサイトから(フランスのファンの方の協力によって)ゲットし、ブログにも書いたことがあるのですが、日本で入手できるかどうか、わかりませんでした。
先ほど、別の用でi-Tunesを見ていたら、日本のi-Tunesで購入できることがわかりました。
i-Tunesの「ウィーン古典派ソナタ集」のところで150円で買えます。
(国内版だけです。輸入版にはこの曲は含まれていません。)
本当に素敵な清涼な演奏です。是非是非、お聴きください。

2009年7月25日土曜日

人生と音楽で大切にしているのは、自然であることです。―ラファウ・ブレハッチインタビュー(ポーランド)

ラファウ・ブレハッチがRMF Classic というポーランドのラジオ局のインタビューを受け、その内容が同ラジオ局のウェブサイトに7月24日に公開されました。
3枚目のCD "Chopin The Piano Concertos"の録音の状況などを話しています。


ブログのこの題名「人生と音楽で大切にしているのは自然さです。」のもとになった部分、
Zawsze stawiałem na naturalność w życiu i muzyce.

文字通りの意味は、「人生と音楽において、僕は常に自然さに立脚してきた。」or 「常に自然さを強調してきた。」
(だと思う。私はポーランド語の学習者ではないので。辞書をひいて、文法に従って並べただけです。)

あるいは、「自然さ」という言葉は日本語としてとても不自然なので、
「僕は常にナチュラルでありつづけようとしています。」「自然体を心がけてきました。」

でも、ブレハッチの雰囲気からして、もう少し「やまと言葉」で表現したいなあ、と思い、「大切にしている」としてみました。

ブログをアップしたあと、「あ、この表現は、今年ブレハッチが来日したとき雑誌に出たインタビュー記事と同じだ。」
と気づきました。

雑誌の表現をまねしたわけではないし、雑誌の方でブレハッチが原語で何と言っていたかももちろん知らないし、たまたまです。
でも彼の基本的な考え方はこういうことなのだと思います。


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人生と音楽においては、自然さを大切にしています。2つのコンチェルトの録音では、正直に、僕の心からまっすぐ流れ出るように演奏しました。
傑出したポーランド人ピアニストは、また勤勉な夏を過ごしている。ラファウ・ブレハッチはドイツ・グラモフォンからの3枚目のアルバム、ショパンの2つのコンチェルトの録音を終えた。録音セッションの裏話やショパン、今後の計画について、マグダ・ミシュカが話を聞いた。


***

-7月の始めにアムステルダムのコンセルトヘボウで演奏なさいました。世界でも屈指のホールですが、このような場所での演奏は、あなたにとって重要ですか。

もちろん重要です。このコンサートはドイツ・グラモフォンが録音しましたから、僕は幸運です。コンセルトヘボウでの演奏会は今回が4回目、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(RCO)との共演は2回目で、僕にとっては素晴らしい経験となりました。アムステルダムの聴衆を前にすると僕はいつも幸福な気持ちになります。


-アムステルダムの聴衆は率直ですか、それともあまり感情をあらわに表さないのでしょうか。

聴衆は熱意に満ちていますが、同時に洗練され音楽に精通しています。このホールではとても幅広いレパートリーが演奏されており、偉大な芸術家達が演奏を重ねてきました。このような聴衆に、今回も喜んでいただき、うれしいです。


-スタンディング・オベーションでしたね。

アムステルダムの聴衆は、僕が去年サンサーンスのピアノコンチェルトト短調を演奏したことを覚えていて、今回はショパンを心から歓迎してくれました。前半のコンチェルトヘ短調で既にスタンディング・オベーションでした。僕はオーケストラの団員がポーランドの民謡風の部分を演奏する様子を見て、とてもうれしくて楽しかったです。オケにとっても素晴らしい経験だったのでしょう。


-このホールは音響が良いことで有名ですが、ご自身でも感じましたか。

はい。音響はリハーサルの時も素晴らしかったです。聴衆がいないリハーサルの時と、音を聴衆に届ける本番と、両方録音しました。


-この会場のスピリットを感じましたか。巨匠が数多く演奏していますが。

歴史のあるホールではどこでもそういった雰囲気を常に感じます。
会場の魅力が僕の感情を盛り上げ(nastrajać、~の気分にさせる、楽器を調律する)、演奏や美しい解釈の発見を助けてくれます。ですから、こういう会場で録音することが大切だと思います。


-演奏会の後もアムステルダムに留まり、コンセルトヘボウで最新アルバムの録音を続けました。次のアルバムに向け、夏の間に取り組まれましたね。

そうですね。演奏シーズンは普通6月半ばに終わりますので、夏は演奏会活動は休みになります。オーケストラもこの時期空いていましたので、7月第一週に録音をするよう計画できたのです。僕は夏が好きです。新たなレパートリーに向けて取り組むように促されます。


-今度のアルバムはショパンの2つのコンチェルトです。これは欠くことのできない大切なステップですか。

アーチストの仕事は常に開拓し改善を目指すことです。確かにこのアルバムはショパンに関連した更なる一歩です。ショパンコンクール後の数年間、僕は2つのコンチェルトを、様々なオーケストラや指揮者と共演してきました。この経験は解釈・演奏に影響しています。今最も重要なのは、このプロジェクトの準備のために最善の方法を選ぶことです。僕とドイツ・グラモフォンは、僕が気持ちよく演奏できるオーケストラを選びました。僕にとってもDGにとっても、これはとても重要なことでした。


-コンクール以降、どんな風にショパン音楽へのアプローチが変わりましたか。

言葉で言うのはむずかしいのですが、アーチストとして成熟していく、自然なプロセスだと思っています。特定の作品をさまざまな異なった場で提示することで、その作品が、指だけではなく心と知性によって凝縮されていくのです。大きな変化というのはありません。僕は解釈上論議をかもすようなアイディアを支持したことは一度もありません。僕は常に人生と音楽において自然さを大切にしています。2つのコンチェルトの録音では、正直に、僕の心からまっすぐ流れ出るように演奏しました。僕はフレデリック・ショパンが寄り添うような感情を求めています。ショパンの様々な感情に入り込み、僕の経験のプリズムを通じてそれらを表現したいのです。


-あなたにとって2つのコンチェルトは、ショパン作品の中で最も重要ですか。

コンチェルトだけが最も重要ということはありません。ショパンの全ての作品はとても豊かです。全作品を全部取り出しても、20時間を超えません。せいぜい22時間程度です。しかし、どの曲も全て、本当に美しいのです。ショパンのコンチェルトは、オーケストラとともに演奏する曲という意味で価値があります。ドイツ・グラモフォンとショパンプロジェクトについて考え、議論したとき、ショパンのコンチェルトを取り上げよう、というアイディアを思いつきました。僕もグラモフォンも、2010年という年を強調したいと思いました。コンチェルトは僕の長年のレパートリーですので、僕はこれを演奏することに決めました。ステージで演奏を重ね経験をつんできた作品を録音することは意味があると思います。様々なディテールを追求し、深めて、解釈の核心をつかむことができますから。


-ほんの2,3ヶ月前、あなたは、新アルバムで共演するオケはサプライズですよ、でも最高の音楽家達です、とおっしゃっていました。RCOとの共演はどんな風に実現したのですか。

僕は1年前このオケと出会い、これはショパンのコンチェルトを演奏するにはドリーム・チームだと思いました。ベルベットのような音色や、気高い至高の響きに魅せられました。第一楽章を録音したとき、バスーンやフルート、ホルンの小さなソロ部分は、本物の若手による傑作でした。このような音楽家達と共演でき、録音された演奏を聴いていると、もう、本当にうれしくなります。


-オケはどんな人たちでしたか。

すごく暖かくて。1回目の録音セッションは6月30日、ちょうど僕の誕生日だったのですが、オケは僕を勝利のファンファーレで歓迎してくれました。若手の音楽家もたくさんいます。彼らはポーランド特有のリズム、例えばヘ短調コンチェルトのマズルカのようなリズムを演奏する喜びを引き出していました。すごく柔軟で、僕の意図を全部感じ取ってくれました。ソリスト、指揮者、オーケストラの絆はとても大切です。


-録音セッションはどんな感じで行われたのですか。

僕は朝8時にはコンセルトヘボウ入りしていました。もっと早い日もありました。セッションは朝10時に始まります。まずピアノが準備されました。録音開始の数日前に調律士と話す機会がありました。彼と良い関係ができて、おかげで、僕が望むようにそれぞれの曲に適切な形で調律してもらいました。


-ピアノはどうでしたか。

スタインウェイのコンサート用グランドピアノです。僕は本当に素晴らしい楽器に出会えて、アムステルダムで毎回このピアノで演奏してきました。4年近くになりますが、本当に素晴らしいピアノです。


-録音セッションの話に戻りましょう。

まずホ短調から始めて、次にヘ短調を行いました。休憩は25分、セッション全体の時間は3時間半、このような録音セッションを合計6回行いました。これには、演奏会前のゲネプロと演奏会も含まれます。相当、十分な時間がありましたので、プレッシャーを感じることなく実験することができました。例えば、ヘ短調コンチェルト2楽章の有名なレチタティーヴォは、3種類のバージョンを録音しました。3回とも、それぞれ少しずつ違います。いろいろなバージョンを録音して、自分たちに最も合ったものを選ぶ、というのはマエストロ、イェジー・セムコフのアイディアでした。


-ドイツ・グラモフォンとの数年間の協力で、どんな学びがありましたか。

録音プロセス全体をコントロールすることが重要だ、ということです。ポーランドに戻って録音したものから距離をしばらくおきました。その後、マテリアルを聴き、最良のものを選ぶためにハンブルクへ行きました。(注:この部分は、1,2枚目のCDの時のことと思われます。今回ハンブルクに行くのは、このインタビューの後になるでしょう。)同様に重要だったのは、ドイツ・グラモフォンの人々と、プロジェクトやレパートリーについて話し合うことでした。DGはドイツ、フランスといった市場や聴衆の趣向を熟知しています。このような指揮者やチームを選ぶ、ということも素晴らしいことでした。


-アムステルダムを観る時間はありましたか。

今回はありませんでした。以前は少し時間がとれました。アムステルダムは美術館も多く、とても面白い町です。今回は残念ながら時間がとれませんでした。録音セッションの時間は限られているので、終わるとピアノに戻って練習しました。音に取り組み、調律士と話し、午前中録音した部分について質問をしました。ただ、今回は両親と妹が一緒だったので、家族はアムステルダムの魅力を満喫することができました。


-ショパンイヤーが近づいてきました。世界中で様々なイベントが行われます。商業的な形でショパン物語とか、映画とか。どう思いますか。

いいと思いますよ。そういう方法が、普段音楽に関わりのない人たちにも接点を持たせるのであれば、いいアイディアだと思います。


-CDのプレミアは9月18日。今後の計画を聞かせてください。

2010年はコンサートを集中的に行います。ヨーロッパでも一連の演奏会を計画していますし、アメリカ、日本でも本格的なツアーを行います。CDの録音は2009年の後半に終わらせたかったのです。そうすれば2010年はコンサートに集中できますから。


-お時間、ありがとうございました。

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2009年7月18日土曜日

「ピアノとのかかわりは捨てません」―ラファウ・ブレハッチ、インタビュー(ポーランド)

「Wprost Light」09年7月12日号に掲載の、ラファウ・ブレハッチのインタビューです。

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「ピアノとの関わりは棄てません。」

2005年ショパンコンクールの覇者ラファウ・ブレハッチ、音楽への愛、コンサートの魔法、将来のプランを語る。


ラファウ・ブレハッチはこれまで一度も――幼いころからずっと――音楽への気持ちがくじけたことはないと言う。しかもそれは、両親から強制的にピアノを弾かされた、というのとは全然違う。子供の頃からすでに将来何をしたいのかわかっていた、と彼は言う。長時間連続してピアノの練習を続ける能力は、周囲を心から驚かせた。

だからと言って、彼がピアノのみに若い時間を費やしていたわけではない。普通に成長したんです、と彼は強調する。ボール遊びもしたし、自転車も乗り回した。

しかし、ある時点で、音楽の重要度が増し、彼にとって必要不可欠な要素となった。
ひとつの単純な事実が、将来の道を決めるのに最大の役割を果たした。この若い音楽家は、他の人々のために演奏することを、心から愛したのだ。

かつて演奏会を開き楽しんだ日々を、この若いピアニストは思い出す。ミサのような式典で伴奏をしたとき、わくわくするような雰囲気が湧き上がるのを感じた。

「演奏を始める前の、部屋に満ちわたる静けさに魅せられました。最初に鍵盤に触れる直前の静けさは、これから具体的な感情を伝えるのだ、という徴候であり、
鍵盤に触れた瞬間、僕は部屋の中の聴衆と交流していると感じます。
そして、最後には人々の拍手で報われるのです。」とブレハッチは語る。

この点は、今もかつてとあまり変わらない。
聴き手が満足すること、これが、この音楽家にとって最高の賞であり、さらに技術を磨くための動機付けとなる。

家族には昔からアマチュア音楽の伝統が続いていた、と、この音楽家は述懐する。祖父は音楽隊に属し地元の祝典で伴奏していたし、父とおじもピアノを弾いた。ラファウが生まれたとき、家にあったピアノが彼を迎えた。

幼いラファウはピアノによじ登ってはメロディを探り、両親はすぐに察した。5歳のとき、彼をナクウォの音楽センターにまず入れ、その後、ビドゴシチの音楽学校へ送った。

おそらく、この音楽家の子供たちも、同じ道を歩むことになるのかも知れない。
しかし、家庭を持つ予定は、今はない、と言う。

音楽に加え、彼は学問も吸収している―2008年より、トルンのニコラス・コペルニクス大学の哲学科博士課程で勉強している。

ラファウ・ブレハッチは友情について語ってくれた。彼と、クリスティアン・ツィメルマンをつなぐ友情である。
ショパンコンクールでの勝利の後、二人は7日間を共に過ごした。その間、多くの時間をショパン、ドビュッシー、ベートーベンを弾いて過ごした。そして、ツィメルマンはきっちりと勉強すべき音楽として、CD30枚をブレハッチのために探してくれた。

こうした親しい関係は、クラッシック音楽の世界では主流となっている。例えば、ツィメルマンが成功した直後、アルトゥール・ルービンシュタインと1週間滞在した、と言えば十分だろう。
むろん、プロの演奏家の環境では、友情もあれば、競争・ライバル関係も存在する。
しかし、この若いピアニストは特に気にしていない。

「様々な音楽解釈があるわけですから、いいことだと思います。絵画のギャラリーと同じように、聴き手は自分で好きな音楽を選べます。どの演奏家もそれぞれ聴衆がいるわけです。」と言う。

しかし、この音楽家は、ある一定の限界線を越えないことが重要だ、と指摘する。
自分は聴衆のために演奏するが、聴衆に支配されて弾かされるのではない、と。
また、大きなコンサートホールを離れ、ひとり自分自身のために弾くのも楽しみにしている、とこのピアニストは強調する。

もしコンサートをやめなければならないとしたら、それはとてもつらいことだろうが、自分は耐えられる。
しかし、ピアノとの触れ合いは、決して棄てることはないだろう、と。

ピアノ。ブレハッチは人生でピアノをとても愛しているが、それだけが音楽への関心の全てではない。彼はツィメルマンやバレンボイムのように、指揮棒を持ちたいとの誘惑にかられると言う。指揮についての知識をもつことで、音楽の解釈の助けになるし、協奏曲の際、ソリストからの要求をオーケストラに伝えやすくなるのでは、と彼は考える。

ブレハッチはオルガンの演奏も好きだと強調するが、ショパンコンクールの後はそのための時間が減ったとも言う。オルガンの音色や教会での演奏は、魂の輝きと平和な静けさを醸成すると考える。

クリスティアン・ツィメルマンは、ブレハッチが自分に続いてピアニストとしてのバトンを受け取ってくれるだろうと、以前、語った。ブレハッチは喜びを隠すことはなく、こう言った。

「とてもうれしい言葉です。僕の芸術家としてのあり方が適切だということの証明ですから。」
さらに、これはとても大きな決意と約束を伴うものだ、とも。

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2009年7月4日土曜日

ラファウ・ブレハッチ、ショパン協奏曲録音のための演奏会好評(オランダ、ポーランド)

日本時間の4日早朝に、コンセルトヘボウでの演奏会を鑑賞したオランダのファンの方からの感動のメールが届き、また、オランダの新聞Trouw紙のレビュー、オランダNRC紙のレビュー、ポーランドラジオのJacek Hawrylukのレビューが公開されましたので、英語訳をポストしました。ご覧ください。

極めて完成度の高い演奏会だったようで、Trouw紙は、24歳のブレハッチと81歳のセムコフの共生(Symbiosis)と、ブレハッチの深い内省的音楽性を高く評価、
ポーランドラジオのHawrylukは、ブレハッチの高貴で思慮深く、また新鮮で明るい音色をたたえ、特にソリストが自由に歌うことができる各2楽章での繊細でロマンチックな演奏を賞賛しています。

また両メディアとも、RCOの演奏の質の高さに言及、とりわけバスーンとホルンの美しさをたたえています。ブレハッチはバスーン、ホルン、フルートを賞賛しています。
HarwrylukはRCOのすべてのパートの音があるべき姿で聴こえる点を言及していますが、私も同じ感想をかねてから持っていたのでうれしかったです。

録音セッションは4日土曜日まで行われ、その後、ブレハッチが、録音されたものから最も良いセグメントを選び出す作業・試聴に入り、ドイツでのCD作製の詰めの作業にも参加したいとの意向を述べています。

コンチェルトの世界でのプレミアは、9月18日、との記述もありました。

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ラファウ・ブレハッチのショパン協奏曲録音のための演奏会に関する、レビュー(ポーランド)

ポーランドラジオのJacek Hawryluk が、7月2日のアムステルダムコンセルトヘボウでの演奏会について書いたレビューです。

もとレビューはこちらから。 

例によって、まず英語にしてから日本語化してます。和訳の精密さは、82%位だと思ってください。
Hawrylukはむずかしい単語をいくつも使っており、ポ英辞書に出ておらず、英語でどういう単語になるのか、具体的にイメージできない部分がたくさんありました。

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一度の演奏会でショパンのふたつのコンチェルト―ラファウ・ブレハッチは午前中、威信あるドイツのレーベル、ドイツ・グラモフォンからの新譜を録音、夜は今取り組んでいるものを聴衆に披露した。

「ここの聴衆は、僕の聴衆でした。」と演奏後、明らかにリラックスした雰囲気でブレハッチは言った。ここはアムステルダム・コンセルトヘボウ、ヨーロッパ屈指の演奏会場。ブレハッチにとって、ここでの演奏は4回目になる。

休暇の季節とはいえ、木曜日の夜にもかかわらず満席。前半、コンチェルト第2番へ短調作品21の演奏が終わるや、既にスタンディング・オベーションとなった。

後半、コンチェルトホ短調作品11を演奏し終えたときには、真の幸福感が満ち満ちた。ちょうど、私も覚えているが、このピアニストが圧倒的勝利を収めた2005年のコンクールと、似た雰囲気だった。


録音セッションはこのコンセルトヘボウで、火曜日(この日、6月30日は彼の誕生日だった)から、毎日午前中行われている。ブレハッチは、ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団と共に、ドイツグラモフォンからの3枚目のアルバムを録音する。ショパンの前奏曲、ウイーン古典派に続いて、再びのショパン。来る2010年のショパンイヤーを考えれば、当然なすべきこと。新譜は、イェジー・セムコフの指揮により、ふたつのコンチェルトが入る。

追加の“試み”として、二人のアーチストはともに今自らが取り組んでいるものを聴衆に見せようとした。プログラムの前半、後半ともに、まずモーツアルトの序曲でスタート。最初は堂々とした快速の「フィガロの結婚」、後半はより躍動感にあふれるトルコ風の「後宮からの誘拐」。

細かなディテールもきちんと聴こえる。だからこそ、アムステルダムの王立管弦楽団は、12月にイギリスの音楽誌「グラモフォン」の評論家から、世界の最優秀オーケストラとして顕彰された。(ベルリンフィルやウィーンフィルを抑えて、である。)演奏は清明かつ明瞭。オケの各パートの個々の部分が聴こえ、非のうちどころのない音調を創り出す。指揮者に喜びを感じさせる―彼は楽団員をちらっと見るだけで、ただちに理解できる。



7月2日、演奏会前のコンセルトヘボウ



ブレハッチとセムコフはコンチェルト2番へ短調から演奏を開始した。(年代的にはこちらのコンチェルトが先に作曲された。)二人とも、この偉大なチームを自由に使える機会をフルに活用しようとした。ポーランド人指揮者は、オケの各パートに対してゆったりと振り、アムステルダムの楽団員達に演奏の自由を与えた。こうして創り出された音は豊かで飽和して、まさにシンフォニック。セムコフはオーケストラに完全な権限を渡した。(この方法は1999年にクリスティアン・ツィメルマンが室内楽的な祝祭管弦楽団でとった方法と、根本的に異なる。)

ブレハッチもまた、自らの価値を証明した。彼は本物のヴィルトゥオーソ、高貴な熱意を持ち、思慮深く演奏する。型にはまりルーチンに損なわれることはない。弾けるような新鮮さと楽観的な音色―ショパンの初期の作品には理想的な長所を持っている。今なお、より良いテンポ・ルバートを探し、試している。(特に最終楽章で。)真ん中の自由な楽章で、ブレハッチは絶妙の演奏をした。親密な出来事(←恋のことだと思います。)の物語のための、繊細かつロマンチックな響き。ホ短調コンチェルトのクラコヴィアクでは、あたかもオーケストラに、このフレーズはこう弾くんだよ、と語りかけるようなダンスのリズムの演奏だった。

録音セッションは土曜日(7月4日)に終了する。
「これから、大変な作業が待っています。」とブレハッチは笑った。
「僕が、最も良いポーションを選んで、全体を構築します。試聴をし、提案もします。ドイツでの最終のディスクの作製にも参加したいと思っています。」

このピアニストは、レパートリーに対する構成の精密さを、おそらくクリスティアン・ツィメルマンから継承するだろう。ツィメルマンはいつも録音のモニターはかなりのこだわりを持っている。

ロイヤル・コンセルトヘボウの楽団員達は、ラファウが好きなようだ。相互の親しい関係が感じられた。
「このオケの演奏ときたら!」とブレハッチは賞賛する。
「ホルンはとても美しい演奏でした。バスーンフルートもきれいでした。両曲とも、2楽章が素晴らしかったと思います。演奏会では、とても自発的な雰囲気があって、録音のときの、ルールに従う感じとは違いますね。」

2つのコンチェルトの世界でのプレミアは、9月18日。もし、今週木曜日のアムステルダムの夜のようになってくれたら、喜ばしいのだが。この夜も最初はコンセルトヘボウの演奏で始まったけれど、皆の心に残っているのは、ピアニストがアンコールで美しく弾いたマズルカだ。もし、ドイツ・グラモフォンのプロデューサーを説得して、マズルカ全曲を録音することができるなら。。。これまでは、無理だったろうけれど。

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Jacek Hawryluk は、これまで、ブレハッチに対しては、「あら探し」的な書き方をしてきたそうです。例えば、2006年3月1日、ショパンの誕生日にワルシャワで行われた演奏会は、かなりの酷評だったとか。
(正確な文言は探さないと思い出せませんが、「音楽学校で勉強しなおす必要がある。」みたいなことだったかと思います。)
最近では、今年の3月に、ポーランドTVのインタビューで、粘着質の質問をしていました。

しかし、今回は、なだれのように賛辞がつぎつぎと出てくるので、意外でした。
彼自身も夢中になった感じです。
本当に良い演奏だったのだろうな、と、とてもうれしく思います。

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2009年7月3日金曜日

ラファウ・ブレハッチ、新CD「ショパン協奏曲」の録音、順調@アムステルダム

ラファウ・ブレハッチは、現在アムステルダムに滞在、秋に発売される新CDのための、ショパンの2つのピアノコンチェルトを録音しています。


6月26日にアムステルダム入りした後、翌日から準備を開始。
録音セッションが始まった彼の誕生日の6月30日には、コンチェルト2番の録音にとりくみました。

体調もよく、オーケストラ・指揮者(イェジー・セムコフ)、何よりコンセルトヘボウの楽器の調整が素晴らしく、良い音が出るということで、ベストの条件に喜んでいるとのこと。
調律担当の技術者Michel Brandjes を賞賛しています。


7月2日の夜、(日本時間3日早朝)、アムステルダム・コンセルトヘボウにて
ショパンの2つのコンチェルトの演奏会を、開催、録音も行われました。
チケットは2月末に完売したとのこと。
(私も覚えています。2月半ばに、チケットのサイトを見たところ、100席程度しか残っていませんでした。座席数2037席。)

2番→1番の順に演奏し、それぞれスタンディング・オベーションとブラボの大歓声を受けました。
アンコールは、ショパンマズルカ作品17の4。

これに先立ち、2日の午前9時半からはリハーサルが行われ、これも録音されましたが、非常にうまくいったそうです。

数日後、録音セッションを終えた後、ドイツ・デンマーク・スウェーデン経由で、プレスインタビューもこなしつつ、ポーランドに帰国するとのことです。

以上、海外のファン等からの情報をもとにまとめました。
詳細はこちら(英語)の、最新記事をいくつかご覧ください。  



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2009年6月30日火曜日

オーケストラとピアノと会場

ピアノコンチェルトで、この3つは三位一体だな、と、ブレハッチのサンサーンスコンチェルト2番、(フランス国立管、指揮ファビアン・ガベル、5月14日パリシャンゼリゼ劇場)の放送を聴いて思いました。

ブレハッチのソロによるこの曲は、去年コンセルトヘボウとコンセルトヘボウで行った演奏しか聴いたことありませんが、こちらの方が数段いいと思いました。

パリの演奏が悪いわけではありません。ブレハッチの演奏に限っていえば、パリの方がメリハリがきいていて面白かった。1楽章のスローな部分を思いっきり歌っていたし、2楽章のお茶目な感じも彼の笑顔が見えるよう。3楽章冒頭のの快速は、これぞブレハッチ、で心地よかった。会場の響き方にあわせていたのだろうか、3月の同じ会場でのリサイタルのときも同様の感想を持ちました。パリの観客も大喜びでした。

オケもよく鳴っていました。随分ソリストをフォローしてくれていた印象。でもソリストとの親和性は、やはりコンセルトヘボウが数段上です。各パートが応分の役割を果たしバランスがとれた美しい全体を描き出すこのオケの音は、ブレハッチのピアノの洗練度、粒度、高潔さ、みたいな部分とレベルがぴたっと合うのです。そしてアムステルダムコンセルトヘボウという会場の音の良さ。ここでの演奏は、音楽を単なる音の響きというもの以上にアップグレードさせ、神秘性を与えます。

(コンチェルトでの指揮者の重要度は、私はよくわかりません。今回のパリについては、ガベルはソリストとオケとの異なる長さのベクトルの間でとまどっていたようにも感じました。)

何がいいたかったかというと、ラファウ・ブレハッチはショパンの2つのコンチェルトを演奏するにあたり、この相性がぴったりで彼のインスピレーションを最大限に引き出してくれるオケと会場を選んで、本当に正しい決断をしたのだと思いました。
アムステルダムでのレコーディングが、心から満足できる素晴らしい演奏となりますように。  



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2009年5月24日日曜日

ラファウ・ブレハッチインタビュー「夢を追いかけて」(ポーランド)

逐語訳ではなく、サマリーというか、まるまった訳になっています。


オリジナル記事(ポーランド語)





YouTubeのオリジナル画面 (↑これより大きな画面です。)
タイトル:
Rafał Blechacz gra specjalnie dla czytelników "Gazety Pomorskiej"
(ラファウ・ブレハッチ、Gazeta Pomorskaの読者のために特別に演奏。)


ラファウ・ブレハッチ:夢を追い続けて (ビデオ)
インタビューアー:Adam Willma
2009年5月22日付け


携帯電話のない生活でも平気ですか。
はい、家にはもちろん携帯はありますが。仕事の連絡はワルシャワのマネージャー(secretariat)が管理しています。

インターネットを使わないとしたら?
それは無理です。インターネットを使って演奏会のオファーや録音時の連絡を取り合っていますので、ツアーの時もパソコンを世界中持ち歩いています。

友人のメールは読んでいますか。
読みます。郵便でもたくさん手紙がきます。
Rafał Blechacz, Nakło nad Noteciąという宛名で着きますので。

ファンクラブがいくつかあるそうですね。
オフィシャルなファンクラブはショパンコンクールの後できて、約1000人の(or多くの)会員がいます。世界各国でなじみのファンのチームに会えるのがいいですね。

スケジュールはどうなっていますか。
2005年のコンクールの直後、日本のエージェントからいただいた5年カレンダーがいっぱいになって新しいのを買いました。2012年まで埋まっています。

はめをはずすような時間がないのでは?
普通の時間ー家族と過ごしたり、学校、レパートリーを広げる時間はとるようにしています。はめをはずすこともありますが、これは、皆さんが知らなくてもいいことですね(笑)。カメラや好奇の目にさらされるのでは、と心配することなく、プライベートや家族との時間をとることは大切です。コンクールの直後にこれを悟りました。ガードに守られていても、人が押し寄せ、エレベータの各階で写真をとられ、妹はめがねをなくしました(笑)。今は、うまくバランスがとれるようになりました。

純粋な芸術から、ビジネスへと移る道をどう振り返りますか。
コンクールの直後は、誰もが音楽でなくビジネスのことばかり話して、怖かったです。映画やコマーシャルに出演、というのも含め、様々なオファーがあったので、どこが信頼できるのか、自分で調べなければなりませんでした。今はしくみもわかり、僕の仕事をオーガナイズする人も見つかり、平穏に計画をたてることができます。最近、アムステルダムで、12カ国のエージェントの代表者が集まるミーティングがDG主催でありました。普段メールで連絡をとっている相手方が全員集まるという画期的な会議で、注意深く演奏会や録音についての計画の概要を考えることができました。コンクールの直後はツィメルマンがいろいろアドバイスしてくださいましたし、彼の経験を知ることで、年間の演奏会は40回まで、というのが自分にとって一番バランスがとれるとわかりました。中には年間100回も演奏しているアーチストもいますが、僕は演奏が義務になり、機械的に弾いてしまうのはいやでした。これまでは大丈夫でしたが、時々体が警告ランプをつけることもあります。

賞賛の言葉には心動かない?
同じような賛辞は頻繁に耳にします。でも人が感じたことを言うのは自然なことです。ポーランド人、とくに外国に住むポーランド人は、僕の成功を愛国主義的な目で見ていることに気づきました。

高等教育機関がクラッシック音楽の勉強の機会を提供する一方、受講生は減ってきています。若い音楽家から助言を求められたことはありますか。
最近ロンドンで、ある女の子が、音楽の道と医学の道とどちらに進むか、ジレンマを感じているといってアドバイスを求めてきました。僕の場合はいつもピアノが弾きたくて弾いてきたので、そういうジレンマはありません。そういうジレンマのある人にとっては、音楽の道が正しいかどうかは疑わしいと思います。ツィメルマンも言っているとおり、直感はとても大切です。音楽にとって直感はとても重要で、解釈を深めようとすると、直感に頼ることになります。いい例がショパンのルバート、捕らえにくいテンポです。説明は最後までできないのですが、僕はこうするのがいい、他のテンポは違うと、ただそのように感じるのです。

1日でゴールドディスク、2週間でプラチナディスク。しかし、マーケットでは常に新譜が出されています。あなたのレーベル、ドイツグラモフォンは、マウリツィオ・ポリーニやマルタ・アルゲリッチ、クリスチャン・ツィメルマンがいます。
そういうことは考えず、自分に集中した方がいいと思っています。コンクールの時も他の演奏は聴きませんでした。もちろん前奏曲の録音の前、DGでの最近の録音状況を調べました。各地で有力アーチストとすれ違うこともあります。去年NYで演奏したときは、ツィメルマンと会う機会がありましたし、彼は前年の僕の東京でのリサイタルを観に来ました。NYの演奏会の同じ日、同じ時間に、アルゲリッチがプロコフィエフを弾いていましたし、今回のパリの演奏会の日には、ユンディ・リーがサル・プレイエルで演奏していました。

フィットネスしていますか。
以前ほど走らなくなりましたが、定期的に運動するよう、心がけています。
最近はノルディック・ウォーキングが気に入っています。

飛行機ではどんな本を読みますか。
哲学の本を何冊か。トルンのニコラス・コペルニクス大学のドクターコースで勉強を始めました。授業はゆったりしていますが、必要な文献は全部読むようにしており、満足感もあります。次のCDのブックレットには、僕と、哲学者Władysław Stróżewski教授との対談が入ることになると思います。哲学の勉強は、音楽の意味の根幹を捕えるのに役立っています。飛行機では寝ていることが多いかな。可能な限り、車で移動するようにしています。リラックスできるし、飛行機より短時間で着く場合もありますから。

車内では何を聴いていますか。
自分のCDは聴かないようにして(笑)、でもDGから録音がOKか訊かれている場合は聴きます。

頻繁に修正をなさいますね。
はい、でも修正は録音の時だけです。録音したものを1日の違う時間帯に何回か聴いて、ディテールをつかみます。録音が終了した後は、修正はしません。あまりニュアンスにフォーカスしすぎて、音符ごとにソフトだとか大きいとかこだわると、音楽が語る全体像が見えなくなってしまうので意味がありません。個々の音でなく音楽を聴くべきです。だから僕は車中で良い音楽を聴くようにしています。自然の雑音があるので、細部でなく音楽に集中できるからです。しかし、時にはストップウオッチを使って、曲の間の休止時間を測ることもあります。ハイドンのソナタがそうでした。第一楽章の最後は変ホ長調の和音で終わり、第二楽章はホ長調の和音で始まります。ハイドンがこのような”不協和音”を取り入れたのは驚きですが、ここで休止が長すぎると、聴き手は半音の移動に気づきません。また、休止が短すぎると、音が十分ふくらまず、調子の変化に聴き手はついていけません。1秒より短い時間が、音楽の質を決めてしまうことがよくあります。録音の方法にも注意すべきです。マウリツィオ・ポリーニはマイクとマイクの間隔を少しばかり長めにとるのが好みです。これでコンサートホールにいるような効果があります。僕はもう少し間隔を狭くします。その方が、ダイナミクスがもたらすニュアンス、”マイクロ・ダイナミクス”を表現できるし、これは通常のコンサートホールでは追求することができません。解決方法はいろいろありますが、普通は6本のマイクで録音するとして、うち何本かはピアノから8メートル離して設置し、自然の反響を集めるようにします。(マイクの設置位置に)適切な割合を選ぶのは、ちょっとした技なんですよ。

ツィメルマンは自分のピアノを持ち込みますが、あなたは各会場の楽器を使っています。不慣れな楽器は大変ではないですか。
グランドピアノはサプライズが多くて、古い楽器の方が新しい楽器よりきれいに響くこともあります。メンテナンスや保管場所、部屋の温度などが影響しています。僕はオルレン社が資金を出してくれた自分のスタインウェイが気に入っていますが、ツアーで一番気に入ったのは、アムステルダムコンセルトヘボウの楽器です。素晴らしい調整がなされ、まさにマジシャンの手技です。この楽器で、今後のCDを録音するんですよ。

オランダの聴衆もお好きだそうですね。
類まれなる聴衆だと思っています。オランダは、小さな町でも音楽への関心がとても高く、人々は真剣に静かに聴いて、自然な反応をしてくれます。ドイツの聴衆も同じです。以前、ドイツに行く前、この国の聴衆は距離感があって冷たい、演奏が気に入ったとしても反応がないのでわからない、と聞いていたんです。でも行ってみて驚きました。歓声、スタンディング・オベーション、そしてアンコール。今では、ドイツの聴衆は大好きです。作品をよく知っていて、真剣に集中して聴き、演奏者に惜しみない反応を返してくれます。

偉大な音楽の遺産が生まれたようなコンサートホールにもいかれましたね。そういうのを感じましたか。
気づいて、わくわくして、いつも喜びでいっぱいです。2回目以降はそうでもなくなりますけど(笑)。

パリでの2回連続の成功で、のぼせてしまうこともあるでしょうか。
そのことはよく認識しています。努力や自己犠牲があったがゆえに、成功すると、そういった誘惑に屈することがあると。音楽家は成功でのぼせてしまうと、すでにアーチストとして失敗する運命にあるでしょう。将来や、まだまだ克服すべき問題が見えなくなってしまいますから。

グローバルな危機で演奏活動に影響はありますか。
幸いありません。話題には出ていますが。

また、音楽業界では、CDというメディアが緩慢な死に至るのではと心配しています。音楽の販売はますますインターネットにシフトしています。
そのとおりです。僕は2枚のCDを録音したとき、インターネットでのみ入手できる短いトラックをそれぞれにつけました。この販売方法はアメリカではとても人気がありますし、ヨーロッパでも普及は時間の問題ですね。

あなたの音楽はオンラインの海賊版でも聴くことができます。
大勢の方からそのことを言われます。でも僕に何ができるでしょう。これが現実というものです。
それよりも、僕は、自分のコンサートをアマチュアの聴衆がこっそり録画して、インターネット上に公開していることの方が心配です。録音の音の質がとても悪いんです。

ツィメルマンが最近アメリカで、戦争への関与を批判し物議をかもしました。あなたは現実に対して発言しないのですか。
クリスチャンは52歳、僕は23歳ですよ。クリスチャンは常に自分の考えを述べ、紛争の平和的・外交的な解決を求める発言をしてきました。2年前、アーヘンの演奏会で、彼は聴衆に向かって、武装紛争に無駄な支出をするのでなく、(演奏会場だった)学校の音響の改善に使うべきだ、と言いました。彼はその勇気によって認識されているし、彼の言葉はマスコミを通じて世界に聞かれていると思います。

あなたは政治的メッセージは発信しないのですか。
しませんが、ときどき政治から逃れるのがむずかしいと感じています。

作曲はやめてしまったのですか。
以前、ピアノ曲やピアノ三重奏を作ったことがあります。今は時間がないのと、作りたい気持ちがないのと。自分の心の状態に反することをするのは無意味ですから。

あなたの心の状態がクラッシック以外の音楽を受け入れることはありますか。ジャズとのフュージョンをしている演奏家もいますが。
そうした実験はいいことだと思います。そうして出来上がった音楽は多くの人々の関心をあつめるでしょうから。僕は(ジャズ等は)必要ないと思っていますが、例えばガーシュウィンの音は面白いな、と思っています。たぶん近いうちに、アンコールでガーシュウィンを弾けたらと思います。最近パリでMark Tomaszewski と会い、有名なデュオ Marek and Wacekの話をする機会がありました。技術や即興について興味深い話が聞けました。

今後20年のシナリオは演奏ツアーや新しい曲、CDといったところでしょうか。
10年前、世界各地で人々のためにピアノが弾けたら、幸せだろうなあ、と言っていました。今、このシナリオが実行できています。この先20年、もし聴衆のために演奏することができ、同じ理由でやはり僕は幸せだと思うことができれば幸いです。

新しいレパートリーの準備はどのようにしていますか。
ツアーの合間の時間を使って、家でも練習しています。夕方や夜が多いです。

ご家族はつま先で歩いているのでは。
両親は気配でわかってくれます。さらに発展し演奏家として創造できる良い環境に恵まれ、うれしく思っています。

最新スケジュールでは、次に何が聴けますか。
ショパンの2つのピアノコンチェルト、これは3枚目のCDのために録音されます。録音で共演したいオーケストラと指揮者について、ドイツグラモフォンは僕が選べるようにしてくれました。そこで、僕の大好きなアムステルダムのコンセルトヘボウ管弦楽団を選びました。このオケはユニークな色彩とベルベットのような音を出すことができます。きつ過ぎず、渋すぎない音、ショパンのコンチェルトにとってはパーフェクトです。団員はショパンの移ろうリズムを言葉なしに感じる素晴らしい感覚を持ち、ソリストへの反応もとても柔軟です。素晴らしいアドベンチャーになることを期待しています。さらに、指揮者はイェジー・セムコフ、是非共演したいとずっと望んできました。またひとつ、僕の夢を実現することになります。


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2009年5月16日土曜日

ブレハッチのピアノと、スペイン・ポーランドでの報道表現

スペイン人は大きな言葉を使ってたいそうな表現をする人たちだと思っていました。
ラファウ・ブレハッチのスペインツアー(09年4-5月)のレビューでも、ふむ、と思える表現が、ちらほら見られました。

「彼は間違いなく、21世紀のピアノ界のスターになるだろう。」
フリアン・カリーヨ、ラ・コルニャでのサンサーンス協奏曲のレビュー

「彼は、’戦場のピアニスト’の主人公がドイツの将校を感激させたのと同様、聴衆の心を捕らえた。」
フリオ・マルデ、ラ・コルニャにて

「ラファウの現在のクオリティを見るならば、このまま成長すれば、彼はグローバルな現象になる。」
レオポルド・センテロ、ポンテベドラでのサンサーンス協奏曲について

「貴重な真珠のような、アポロンのピアニズムが身についている。」
ホアキン・グスマン、バレンシアでのベートーベン協奏曲第4番について


「ベートーベンの協奏曲第4番は、オケがソロピアノを覆い隠したり、近代のピアノの場合は逆にソロがオケを隠したり、
大変むずかしい曲だが、演奏者の素晴らしい資質によって、この問題は解決した。
ラファウ・ブレハッチは4日前のリサイタルで見せた偉大な成功を、再確認させる演奏をした。」
ブロトンズ・アルフレッド・ムニョス、バレンシアにて

最後のムニョスは、特に派手な表現は使っていないのですが、
彼が4日前のリサイタルについて書いたレビューが、厳し目の見解だったにもかかわらず、
この協奏曲のレビューでは、「4日前のリサイタルは大成功」と述べているので、
「そうか、はしゃいだ表現はしない人なのね。」と納得しました。

全体的に、スペインでは、じっくりと演奏を聴き、細かいところまで評価している、
という感じのレビューがいくつかあったな、という印象です。
意外と落ち着いた感じでした。


私はポーランド人の性格とかポーランド語の表現の特徴は、他の言語に比べるとなじみが少なく、あまり知りません。
しかし、5月14日、ブレハッチがパリのシャンゼリゼ劇場で演奏したサンサーンス協奏曲第2番については、
ポーランドの多くのメディアが、「にぎやかに」報道しました。
ニュースネタは皆同じ通信社(PAP)のものを使っていて同じなのですが、
タイトルを変えることで個性を出していました。

「ブレハッチ、フランスの聴衆を拉致(心を捕らえた)」Wprost 24他。



「ブレハッチ、フランス人をノックダウンし、ひざまづかせる。」Gazeta.pl.Wiadomości他。


Gazeta.pl.Wiadomościでは、
この写真に「ラファウ・フリデリック・ブレハッチ」というタイトルをつけていました。
フランス語のFrédéricでなく、ポーランド語のFryderykです。

(写真自体は、2005年にグダンスクで撮られたもので、今回のパリとは無関係です。)



「ラファウ・ブレハッチ、パリを征服」Rzeczpospolita他。

「ブレハッチ旋風がパリを席巻」ポーランドラジオ

など。

内容は、ブレハッチに関する部分は、拍手や歓声が長く続き、ブレハッチはアンコールを2曲(ショパンのプレリュードとマズルカ)弾いたこと、
観客の中に、「戦場のピアニスト」のポランスキー監督がいたこと、
あとは、コンクールとその後の各国での演奏経験、DGとの契約、CDといった一般情報です。

今回のパリについてのポーランドのメディアの反応は、去年1月のパリ・リサイタルデビューや、
他のイタリアやドイツのなどの重要都市での演奏会の時より広い感じがします。
(ザルツブルク音楽祭を除く。) 



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2009年5月9日土曜日

バレンシアのある聴衆が見た、リサイタルでのブレハッチ

英語ブログに載せた記事、そのまんまの和訳です。
今回のスペインツアーでは、プロが書くレビューに加え、いくつかのブログ記事が目をひきました。
きちんとしたレビューになっており、プロが、「21世紀の星!」とか「グローバルな現象」とかはしゃいでいる一方、
むしろ一般の愛好家の方が正確・客観的に評価しているように思いました。


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(和訳)
ラファウ・ブレハッチの5月5日、バレンシアでのリサイタルに関しては、4,5件のブログ記事を見ました。
以下、とっても網羅的だな、と思えるものをアップします。

著者(男性、たぶん30-40歳位?)は、ご自身のブログに音楽レビューをいくつも書いておられます。
ブレハッチのファンではなく、(CDソナタ集はまだ聴いていないそうです)
しかし、リサイタルでのブレハッチや聴衆の反応を細やかに記述していらっしゃいます。



オリジナル・レビュー記事(スペイン語)

(ブレハッチの紹介:コンクール、DGとの契約等、省略)

ラファウ・ブレハッチが昨日バレンシア音楽堂のサラ・ロドリゴで感動的なコンサートを開いた。
バレンシアの聴衆のための、外国室内楽とソリストシリーズの一貫で、主としてポーランド人作曲家に焦点をあてたプログラムだ。

しかし、彼はショパンが深く敬愛したバッハのイタリア協奏曲で演奏を開始した。

彼は優雅で高貴なフィンガリングと、1ミリレベルの正確さで、最初のリズムを演奏し始めた。
これは昨夜の演奏全体に言える特徴だ。

完全無比の技術力の実行、自己顕示は一切ないが、しかし、冷たいのいうのとも全く違う。
明瞭なシンプルさで、彼は最終楽章プレストの途方もない速度を、親密で深い味わいのあるアンダンテにつないだ。


「ショパンの後継者。
彼の手は、まるで一対の白鳩のよう。」
あるスペイン女性のブログより。
ガリシアでのコンチェルトに感激して。



残念なことに、極めて美しい第二楽章で、ポーランド人ソリストの奏でる微妙な味わいは、
テロリストの如き咳と痰をすする音、獰猛なくしゃみの攻撃を受けた。

これが豚インフルエンザの影響かは知らない。しかし、連中の豚のような態度を見れば、その可能性はあるだろう。
実際、昨日のバレンシア音楽堂での聴衆の態度は、他の本会場でのコンサートや別の会場より、概ねずっとましだった。

ブレハッチは丁寧に、鍵盤と手を拭いた。彼は曲の開始ごとに、この動作を繰り返した。

次に彼はザルツブルクのモーツアルトの領域へと勇ましく進んだ。
曲は、ソナタk570。

ブレハッチは天才的なテクニックと解釈能力を確信させた。
しかし、昨夜のリサイタルではこの曲においてのみ、冷たい感じが直感的に感じられた。

同じポーランド人作曲家シマノフスキの変奏曲op3は、音符の奔流をつきすすみ、どんどんと感情の高まりを見せ、
極めて困難な曲であるにもかかわらず、ブレハッチは深く感動的な解読を示し、この最高に美しい曲に潜むあらゆるニュアンスを表現、
前半最後を情熱的に締めくくった。





しかし、最高のものは、まだこれからだった。
後半は全てショパンの曲。
ブレハッチは、なぜこの同国の作曲家の演奏にかけては専門家とみなされるのか、明らかにした。

驚くほど美しい作品、バラード3番op.47。
ブレハッチは23歳とは思えない深く円熟した演奏をし、優雅に、極めて純粋に楽器を操った。

ショパン晩年の作品である、2つの夜想曲op. 62は、印象派への進化をにおわせる特徴がある。

この夜想曲と次の4つのマズルカop.17では、演奏のリリシズムは最高度の高みに達した。
彼はひけらかすような所作は一切ない。
清浄かつ流暢なフレージングにより、彼が一音一音から引き出す感受性と詩情は、我々の耳を優しく撫で、
ついに聴衆の心を奪い、感動に満ちた聴衆は、今度は皆、修道士のごとく静寂となった。

(筆者はここで、夜想曲 op 62-1のビデオを貼り付け )



Sala Rodrigo of Palau de la Música in Valencia

もう一度鍵盤を拭いた後、ついに英雄ポロネーズop.53を開始した。
勇壮なこの曲を、他のピアニストであれば過度な熱意でこれみよがしな演奏をするところだが、
ブレハッチは他の作品の演奏と同様、精密なテンポと完璧で流暢な演奏を続けた。
強力かつ清潔な音色。愛国主義的に楽器を叩くことなく、知的な譜面の解読によって、彼はまたも会場を感動で満たした。

当然長く続く拍手とブラボの歓声が、にこにこするブレハッチに贈られた。
彼は何度もステージに戻され、ついにベートーベンのソナタop2-2のスケルツオを演奏した。
優美で生き生きとしたアンコール。


悪く言えば、古い、簡単な音楽。何千回と耳にされてきた楽曲。
しかし、だからこそ、彼が昨日行ったように、聴衆に感動を与えようとすることには意味がある。
この、とても若いポーランド人は、しかも、自分の演奏を楽しんでいたし、
(まだその域には達しないのかもしれないが)、「21世紀のピアノの星」と今は称されている。 

(注:ガリシアの演奏会のレビューで、ある評論家がブレハッチをこのように呼んでいたので、
そのことをさしていると思われます。)


(筆者はここで、英雄ポロネーズのビデオを貼り付け。)



著者は、大きな咳やくしゃみを、テロリストと比喩しています。
先日、ブレハッチのパリのリサイタル(3月27日)がラジオ放送された際、同様の「爆撃」を私も聞きました。
咳は仕方ないけど、せめて手で口をおおえばいいのに、と思いました。

*彼のブログのコメント欄に、「そのテロリストの座席は○列の○番だった。」という告発がなされていました。
約1名、困った人がいたのですね。 400名程度の小さなホールなので、めだったのでしょう。
パリは大きな会場(約2000席)で、もうクラスター爆弾のごとく、あっちこっちから爆音が聞こえていました。

別の記事で、バルセロナでのリサイタル(4月28日)で、聴衆のマナーが悪く、さまざまな音(床にものを落すとか)
が聞かれた、というのも見ました。


にもかかわらず、ブレハッチ自身は、
「バルセロナは大きな会場も(注:カタロニア音楽堂、2200席、世界遺産)ほぼ満席で、
聴衆の反応がとてもよく、いい雰囲気でエネルギーをもらい、
彼らのためにいい感じで演奏できた。」
と、機嫌よく発言していたそうです。
素晴らしい集中力デス♪

去年、ドイツの インタビューで、 ブレハッチは、どんな聴衆が理想的ですか、と問われ、
彼の答えは、

「コンサートの間咳をせず、携帯をオフにし、お菓子の袋を開けず、寝ない聴衆。
つまり、演奏を聴いてくれる聴衆。でも無理ですね。」


無理・・・じゃないですよね。アタリマエのことですよね。
少なくとも日本では。(と信じたいデス。)



5月15日の早朝、ブレハッチとフランス国立管弦楽団のパリでの共演が生放送されます。
前回のパリのリサイタルと同じシャンゼリゼ劇場、放送も同じラジオ局です。
Preludiaに書いておきましたが、念のため。
日本では、5月15日、午前3時から5時28分ですね。
MP3のリンクは、前回のリサイタルのときと同じだと思います。
急なキャンセル、番組変更の可能性もあると思います。


ラジオでの生放送はなくなったようです。私が気づいたのは、日本時間の5月14日19時すぎです。
こちら


ブレハッチがパリでオケと共演するのは、初めてではないかと思います。
Pour son premier rendez-vous parisien avec orchestre,
Blechacz interprète le Deuxième Concerto de Saint-Saëns (乾杯♪) 

(↑・・・プレビューのコピーです。)

2007年の10月に、トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団と、彼らの地元で共演していますので、
フランス全体では2回目、ですね。
今回は、プログラムもとてもフランスです。。

↑ スミマセン、この前に、2006年のラロックダンテロン音楽祭で、(つまりフランスで)コンチェルトを弾いています。
オケはワルシャワの国立管弦楽団でしたが。
偶然この記事を見直して気づきました。(2009年9月7日、追記)



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