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2009年9月4日金曜日

ショパンに囚われてはいないーラファウ・ブレハッチ、インタビュー

ラファウ・ブレハッチの、Dziennikという日刊紙とのインタビューです。
インタビューはアムステルダムの録音から帰国の直後、7月9日ビドゴシチにて行われ、8月16日に同紙のオンライン版で公表されました。

題名は、"nie jestem więźniem Chopina (I'm not a prisoner of Chopin)" ですが、私はそれ以外の部分、たとえば、ポーランドの作曲家だからスラブ的に演奏する、というのでなく、あくまでも自分の直感に従って曲を捉えることが大切、というような部分に興味を持ちました。

モトはポーランド語ですので、例によって正確度は80%位、というようなおおらかさでご覧いただければ幸いです。


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私たちは彼が20歳の時、2005年のショパンコンクールで出遭った。今日、彼は大人になり、音楽的にも成熟し、世界中で演奏会を開いている。最近アムステルダムで、コンセルトヘボウ管弦楽団とレコーディングを終えたばかりだ。「ショパン弾き」のレッテルをどう感じているのか、なぜDodaやFeelと共演しなかったのか、ラファウ・ブレハッチが話してくれた。

(きりん注:Dodaは女性、Feelは男性の、いずれもポーランドの人気歌手。PreludiaにFeelのリンクをはってあります。)


(インタビューの始めの部分で、ラファウ・ブレハッチはコンセルトヘボウ管弦楽団を賞賛していますが、他のインタビューで何度も語っている内容なので、省略します。)


―クリスティアン・ツィメルマンやピョートル・アンデルシェフスキのように、指揮棒を持とうとしたことはないのですか。

小さい頃、ピアニストになりたいなあ、と思っていました。その後の年月と経験を経て、この選択が正しいと確信しました。

様々な音楽分野を探求することは、相矛盾するものではありません。20世紀以降、音楽が専門分化するようになりましたが、それ以前の時代、音楽家になるということは、いくつかの楽器をほぼ流暢に弾きこなし、作曲の経験もある、ということを意味していました。

最近は、かつての伝統に少しずつ戻りつつあるようですね。クリスティアン・ツィメルマンもピアノの後ろから指揮しようと決めました。

正直言うと、1つの素晴らしいチームを指揮するという考えは、とても魅力的です。マエストロ・セムコフの技を間近に見たとき、純粋に魅了されました。

でも、今僕はピアノに集中しています。今後のキャリアがどの方向に向かうのか、時間が答えてくれるでしょう。



―ショパンの前奏曲に取り組みながら、他の巨匠、特にロシアのものも聴いていらっしゃいました。ロシアの演奏家はコンチェルトの解釈に影響しましたか。

はい、特にネイガウス先生のロシア学派に大変感銘を受けています。モスクワ音楽院のコンサートホールで演奏した時、これまでの経験の中で、最もストレスを感じ、また、最も感激しました。それまでこのホールで弾いた先達は、ルービンシュタイン、リヒター、ギレリス、そしてグールドがいます。

自分としては強いて何かの伝統や学派に属する必要はないとも思っています。音楽解釈にとって最も価値があるのは、楽譜に書かれた作曲家のアイディアを読み取ることです。2番目に大切なのは、自分自身の直感、これによって、音符の間に隠れた部分を理解することができます。これは自分の直感であって、ある地域や時代に特有の考え方ではありません。

何が言いたいかというと、僕がよく対比されるクリスティアン・ツィメルマンも、ヨーロッパの同じ地域の出身ですが、彼をいわゆる東欧的なステレオタイプに結びつけるような要素はほとんどありません。さらに、今日、傑出したポーランド人作曲家の作品の演奏を見るならば、過度にロマンチックで、「スラブ的」に偏ったものが多く見られます。

もう少し説明しましょう。ある作品について他の演奏家の録音を聴く場合、僕は自分なりの解釈やビジョンが固まってから参考に聴いています。できれば、そうすることによって、否定するのでなく、肯定したいと思っています。

(きりん注:この部分は自信がないので、原文も載せておきますね。
[Wyjaśnię jeszcze, że po cudze nagrania sięgam zazwyczaj wtedy, gdy mam już w myślach gotową wizję danego utworu – i raczej po to, by się w niej utwierdzić, niż jej zaprzeczyć.] )

もちろん、ショパンのコンチェルトですと非常に人気の高い作品ですので、こうした外部からのインスピレーションをほぼ必ず受けることになります。僕も子供の頃からたくさんの録音を聴いてきたし、膨大なコレクションとなっています。

おそらく、僕が最も親近感をもつ解釈はルービンシュタインでしょう。彼の若い頃の自発的で感情豊かな演奏ではなく、人生の終焉に近い頃の演奏―深く集中し、美しい音を抽出したような演奏です。



―アムステルダムや他の音楽都市で、あなたの常連客がいらっしゃいますね。演奏するのに、どこが一番好きですか?

それはドイツでしょう。ドイツでは、音楽という芸術を醸成するユニークな伝統があります。
ドイツで思うのは、美しく音響も素晴らしいホールのこと、また、何よりも聴衆の理解力が抜きん出ていることです。

特に、夜の演奏会は神聖な感じがします。聴衆はきちんと正装し、誠実に集中して音楽を聴きます。言うまでもなく、これは演奏者の状態に最高にプラスに影響します。

もちろんポーランドで弾くのも好きですよ。僕の「最初の聴衆」は、いつもとても暖かく迎えてくれます。

ちょっと珍しいことがありました。僕の最初のショパンのCDは、ポップソングのチャートでも上位になりました。2008年にはTop Trendyにも招待され、DodaやFeelといった歌手の近くで演奏するかもしれなかったんですよ。でも時期がドイツ・グラモフォンの2枚目のCDの録音を重なったので、実現しませんでした。



―ポーランドではいつ演奏会があるでしょう。

ショパンイヤーでは多くの機会がありますので、うれしく思っています。ショパン生誕の日である2月22日には、アントニ・ヴィット指揮、国立フィルハーモニー管弦楽団と共演します。その後、ほとんどの主要都市でコンチェルトを弾く予定です。



―ショパン弾きの立場に捕えられている、とは感じませんか。

それは全然ありません。僕のウィーン古典派やリスト、ドビュッシーに対する聴衆の熱意ある反応を見ても明らかです。

実際、ショパンに専心取り組んだのは、コンクールの直前の2,3年だけです。それ以前は、ハイドン、モーツアルト、ベートーベンにほとんど集中していました。2枚目のアルバムで古典派に還ることができて、とてもうれしかったです。

ショパンのピアノ協奏曲のCDについての質問だとしたら、これは僕が自発的に決めたことです。この作曲家の生誕200年を祝福したいという、強い思いに突き動かされました。

その後の2枚のアルバムは、もっと後期のレパートリーのものにすると決めていますが、今は詳細は言えません。



@ ポズナンにて、2007年11月



「ドイツの聴衆が好き。」というラファウ・ブレハッチの発言は、これまでも2,3回目にしたことがあります。彼が好きな聴衆は、1.ドイツ、2.オランダのようです。
聴衆の態度や理解度で演奏者が大きく影響されるというのはわかりますが、「服装」も良い雰囲気をつくるのに大切な要素なのだ、と今回気づきました。きちんとした服装は、演奏者への敬意を表すものですね。私はこの点はいつもいいかげんなので、反省いたしました。
実際、聴衆からの反応で(と言っても、静かに聴いてるだけなのですが)ラファウ・ブレハッチが非常にポジティブに感化されるのを、アメリカの会場で目撃したことがあります。いずれも、耳の肥えた都市の聴衆で、純粋に、静かに、音楽を楽しんでいる雰囲気。終演時は、みんな笑顔でした。


ドイツの演奏会は多数ありましたが、とりあえず、すぐ思い出すビジュアルは今年3月のケルンです。夜の演奏会です。
(服装は、普通だと思いますが。)
このビデオを見ると、彼が最近発言している、
「(異なった舞台で何度も演奏することで)作品が、指だけでなく心の中で凝結してきた。」
(utwór krzepnie w palcach, ale też w sercu i umyśle.)
という感じがなんだかわかる気がします。

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