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2008年5月14日水曜日

ラファウ・ブレハッチのサンフランシスコのリサイタルへのレビュー(1)(アメリカ)

ラファウ・ブレハッチの、サンフランシスコでの演奏会(2008年5月11日)に対するレビューです。

(お願い)レビュー記事の転載・使用はご遠慮ください。


「サンフランシスコ・クロニクル紙」のオンラインバージョンであるSFGateに掲載。
(5月13日付け)
評価者:ジョシュア・コスマン、同紙の音楽評論家)


ポーランドの若手ピアニスト、ショパン音楽の力強いバージョンを披露


ショパンがピアノの世界から遠ざかったことはかつてないが、ショパンは最近とりわけ雄弁な擁護者を選んでいるようだ。

ショパンを特別な存在にした、アルゼンチンのイングリッド・フリッターも選ばれた演奏家リストに含まれる、このリストに、
私は、ラファウ・ブレハッチも加えたいと思う。
この若いポーランド人のヴィルトゥオーソは、日曜の夜(5月11日)、ハーブスト・シアターで力強いデビューを果たした。

ブレハッチは鉄の指を持ち、スタミナ満点。
しかし、もっと重要なことは、彼は、他の演奏家とは明確に異なった基本的考え方を持っていることだ。
ブレハッチのショパンは、多くのピアニストのような沈みこんだ、気まぐれなラプソディではない。
ブレハッチの世界では、ショパンは力強いまっすぐな存在として、極めてきびきびと率直に語られるため、ロマン派のアーチストとは思えないことがある。


親しまれた作曲家に対するこの型破りの姿勢は、聴き手によっては、繊細な色彩感が不足し、感情的なほのめかしが失われていると感じたかもしれない。
しかし、それを補う価値は極めて魅力的なものがある。


明らかに、ブレハッチはもはや喝采を求めてはいなかった。
2005年、20歳のときに、彼はワルシャワのショパン国際ピアノコンクールで、ポーランド人としてはクリスチャン・ツィメルマン以来30年ぶりに優勝を果たした。


最近ドイチェ・グラモフォンからリリースした彼のデビューCDは、前奏曲op28のすばらしく透明な解釈であり、
このショパン音楽の多くを抱合した曲は、今回サンフランシスコチェンバーミュージックが提供したブレハッチのリサイタルでのハイライトとなった。


世の多くのピアニストのショパンに対するアプローチが、方向性の捉えそこないや人を驚かせる効果で幻惑させる手品師のやり方だとすれば、
ブレハッチはまるでビンテージの時計(=ショパンの曲)を見せてくれるようだ。
彼はこれらの巧妙なで驚異的な時計の多くを自分の箱に持っており、
自らの技術を使って順番に開き、歯車や機構ががどんなふうに動いているのかを見せてくれる。


その方法は、前奏曲をシャープな切れ味、最小限のペダリング、そしてめまいがするほど豊富な鍵盤技術で、すばやくクリーンに演奏すること。
ブレハッチの演奏を聴いていると、――最も入り組んだテクスチャーの部分であっても汗もかかず楽々と駆け抜けるように弾くため、
聴き手はこの音楽が実はとても困難だということにさえ気づかないかもしれない。


彼の演奏に感情がこもっていないというのではない。
前奏曲ロ短調は圧倒的に感傷的な調子、ハ短調は荘厳さと親密さを巧みに組み合わせて演奏している。


しかし、彼の最強の見せ場は、ショパンのもっと古典的な構成のところだ。
ト長調で、ブレハッチは輝くような左手の伴奏を楽々と高速で弾くので、右手のメロディはまれにみる魅力と明瞭さでくっきりと表現されている。
ホ長調の雄大な和音は暖かくどっしりと響き、変ニ長調、有名な雨だれでさえも、通常の夢見るような演奏を振り切り、我々がこれまで想定したよりもずっと快活な音楽作りになっている。


ブレハッチは、もっと鮮明に弾いた方が効果が出たかもしれない所が何箇所かあった。
嬰ト短調と変ロ短調の強烈なパッセージはややぼやけた。――非常に精密に弾いていただけに、損失が目立った。


ブレハッチの鮮明で手際よい分析的なアプローチは、前半の多様なレパートリーでも同様に実を結んだ。
モーツアルトのソナタニ長調k311は、幾分冷淡な始まり方をしたが、すぐにゆっくりとした2楽章で暖められた。


ドビュッシーの版画はショパンと同様、多くのピアニストが弾くよりもずっと明るい光を投げかける演奏だった。
隠れた欠点が見えるようなことは全くなかった。
シマノフスキーの変奏曲変ホ短調op3は、休憩後演奏されたショパンに導くため様式を整える、食前酒の役割を果たした。
アンコールはショパンのワルツ嬰ハ単調op64-2、モシュコフスキの輝くような、火花の、傑作と呼べる演奏。

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