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2008年5月19日月曜日

ブレハッチのサンノゼでのリサイタル、レビュー(その1)(アメリカ)

今日は、サンノゼ演奏会(5月4日)、きりんがこれまで目にした中で、最も厳しい内容です。
訳す気分にならず、うっちゃっておいたのですが、
この「マーキュリーニュース」に書かれたレビューは、「ワシントン・ポスト」のようなメジャーなメディアにも投稿されています。
なので、しぶしぶ訳したのですが、
よくよく見ると、なるほどと思えたり、
たぶんこの批評家はブレハッチが好きなのだろう、と思えてきました。

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コンサート・レビュー:サンノゼのリサイタル(5月4日)にて。

技術で目をみはらせる、ポーランド若手ピアニストラファウ・ブレハッチ。
しかし、サンノゼでは、このショパンコンクールの勝者は解釈力がいまひとつ。

評:Richard Scheinin

(まずブレハッチの紹介:ショパンコンクールとDGからのデビューについて言及:略)

ブレハッチが5月4日サンノゼのル・プチ・トリアノンの演奏会は、前奏曲全曲を最後にもってきたが、大変よかった。
彼は、驚くほどに鍵盤を支配し、唖然とするほど楽々と弾くことができる。

しかし、今思うに、彼は技術以上のところに飛翔して深みを極めなければならないとわかっているようだ。
従って、少なくとも日曜日の演奏会では、開いた口がふさがらないような技術力を次々と見せつつ、彼は心の奥深くで苦しみ、求めていたように思った。
あらかじめ想定できなかったであろう彼の苦しみは、魅力的に見えた。
しかし、思うところまでは到達できなかったようだ。

換言すれば、彼にはさらなる味付けが必要なのだ。
今後数年間、彼の巨大な才能と直感が彼をどこに導いていくのか、フォローするのは興味深いと思う。

演奏会はモーツアルトのソナタニ長調K311ではじまった。
ブレハッチは第1楽章アレグロの16分音符を、きっちりと楽々とやっつけた。
内省的な第2楽章は解釈が不発に終わり、妙に勇ましい和音の響きだった。
最終楽章は完全にコントロールしていたが、音符は音符以上の何者でもなかった。

彼のドビュッシーはこれよりずっと良かった。

1903年作曲の「版画」で期待されるのは、
まず第1楽章「塔」がインドネシアのガムラン的五音音階と打楽器的な性質を再現し、
第2楽章「グラナダの夕暮れ」がフラメンコのポストカードの絵を送り、
第3楽章「雨の庭」ではたちこめた靄の中をただよわせること。

ブレハッチのトリルとアルペジオはまことに美しいのだが、愛らしいさざ波だけでなく、堅牢な構造が求められる「塔」では、それを抑え気味にしていた。
彼の「グラナダ」は大きなスペインギターの響きのように聞こえる部分があり、耳障りで強烈すぎた。
「庭」は正しい雰囲気をつかみ、ブレハッチは技術的な要求の中、リラックスしていた。

前半の最後はシマノフスキの変奏曲変ロ短調作品3だった。
ブラームス、ラフマニノフ、スクリャービンの核心的なものを内部に持つ作品。

「版画」と同様、この曲は1903年に完成。この年、ドビュッシーに感化されたポーランド人シマノフスキは21歳になった。
ひとつの変奏曲から次の変奏曲への変化、雰囲気と調、あるいはテクスチャーとテンポが常に変容するこの作品の美しさは、ショパンの前奏曲をうまく導く前提になっている。

ブレハッチは影の部分を陰鬱に通り抜け、深夜のワルツに色彩を与え、最終章では荒れ狂った。
奮闘の熱気の中執拗なオーバーペダリングがあったが、まあよしとしよう。
ブレハッチはいい意味で音楽に没頭したのだ。

休憩後は、優雅で慣れ親しんだショパンの前奏曲。

前半の12曲で、ブレハッチは私たちが既に知っている以上のところへは到達しなかった。
例えば、有名なホ短調ラルゴ(4番)はよくある、真摯なメランコリー、といった演奏だった。

しかし、後半に入る前に、彼はハンカチを取り出し、鍵盤を拭いた。
特にシンボリックなジェスチャーではなかったと思うが、それ以降、彼の演奏は魅力を増した。
点描画法主義者が突如爆発したヘ短調(18番)、鉄をたたき出すような和音の響きと心引き裂かれる激情のハ短調(20番)、そして、ト短調(22番)での恐るべきアジテーション。

最後のニ短調(24番)は、すでにドラマを使い切っていた。
ブレハッチは疲れていたようだ。
しかし、アンコール2曲目、モシュコフスキーの女軽業師(注:アンコールは火花でした。)は、気が狂いそうなほどむずかしい曲だが、彼は最高に軽々と飛ぶように弾いた。
この素晴しい若者はタフィー(お菓子)作りの集いを開いてもよいくらいだった。

ブレハッチは5月11日夜7時から、サンフランシスコのハーブスト劇場でも演奏する。

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このサンノゼ演奏会は、きりんが実際見てきた演奏会です。
きりんはこんなにクリティカルに見ることはもちろんできず、
ひたすら感動していました。

以前、「アメリカ演奏会大成功」という記事でも書いたとおり、
ブレハッチは本番前に、シマノフスキー(特に最後の曲)を繰り返し、またショパン21,22,23,24を練習していました。
ということを思いながら、この記事を読みました。

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