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2008年2月1日金曜日

ラファウ・ブレハッチCD「ショパン前奏曲集」レビュー(イギリス)

MusicWeb Internationalによる前奏曲CDのレビュー(2007年11月付け)

MusicWeb International: イギリスの元大学教授が、BBC、音楽関係者と立ち上げたオンライン音楽評価サイト。クラッシック・ジャズ・映画等幅広くカバーしている。
前奏曲の評価は、Christopher Howell(ピアニスト・作曲家・音楽評論家)による。
彼は、前奏曲を、2007年11月の今月の録音 Recording of the Month、及び
2007年の今年の録音 Disc of the Yearに選出している。


少し前、私はブレハッチが優勝した2005年のワルシャワ・ショパンコンクールの全実録CD15枚セットを聴きおえた。本選出場者の何人かにはやや当惑したが、ブレハッチが優勝に値することは疑いの余地がないと確信した。コンクールに関する様々な評論を見回しても、この点は一致しており、多くの論者は、ブレハッチとその他の出場者とは天地の差があると強調している。ポーランド人の優勝は1975年のクリスチャン・ツィメルマン以来だし、優勝者が出なかった期間も長かった。今や彼の名は有名になり、ドイチェ・グラモフォンとの契約という最初の果実を手に入れたわけだ。

(コンクールでのブレハッチについて)私の印象を言うなら、舞踊に基づく作品の演奏は、天性のものだ。彼のポロネーズ、マズルカ、コンチェルト3楽章は実に素晴らしい。彼のノクターンop62-1も本当に美しいが、前奏曲については直ちに心奪われたわけではなかった。良い悪いは別にして、ブレハッチはこの前奏曲でレコーディングの国際舞台に乗り出そうと決めた。

これら小曲は、全く信じがたいほどにちゃんと弾くのがむずかしい。(ブレハッチのCDでは)、1番では、中間音の旋律のシンコペの弾き方や、それが拍にぴたりと乗っている点が、他の演奏家より優れていると感心した。最後のアルペッジョの前4小節で、ペダルを各小節の最後まで維持するのでなく、中ほどで離すというショパンの指示を、彼が文字通り守っているのは、ちょっとした発見だった。他方、ダイナミクスを何度か逆に捉えている点は、この曲の構造を変えてしまうリスクがある。2番でも、何箇所か、ダイナミクスが少なくともヘンレ版と逆になっている。3番では実質ノーペダルの演奏、これが可能だということを実証したが、ややドライな印象だ。しかし、いったんこの演奏が腑に落ちると、他のペダルを使う奏法はわずらわしく聞こえるかもしれない。

上記の事柄が些細な点とほじくりかえしていると思われるなら――もっとも、小曲では些細な点が比例して大きく響くのだが――4番で彼は陰鬱な雰囲気を引き起こし、聞き手を彼の演奏に完全に没頭させている。極めて内向的な6番の後、7番は驚くほどに調和した日に照らされたような音色。アンダンティーノにしてはかなりゆっくりしている。次の曲は「モルトアジタート」というより威厳のある感じ。12番は切迫した魔力を欠いており、16番も同様だが、この力は22番のためにとってあった。最終曲も壮麗な熱情がみなぎっている。

13番では旋律と対旋律の相互作用がこのうえなく素晴らしい。これ以上優れた演奏は聴いたことがない。これまで聴いた中で最も美しい演奏の候補で、実際、13番で最後まで私の憤りを誘わなかったピアニストはほとんどいない。まさに完璧だと思った。同じことが、よく耳にする15番と、21番(美しく歌っている!)にも言える。17番、19番もそれに近い水準だ。23番は魅惑的で、とりわけ最後から2小節目の変ホ音の歌い方は絶妙。

彼が前奏曲の多くを可能な限り高いレベルで弾き、実際の失敗はないことから、――上記の私の指摘は、懸念というより、疑問として取っていただければ――彼の演奏は、特に詩情の表現を重視する人にとっては、優れたトップの演奏家に加えられると思われる。また、ブレハッチは24の前奏曲を統一性ある1つの作品として表現するという意味でも、極めて成功している。これは、コルトーが非常にこだわった部分で、統一性の点でコルトーの右に出るものはまだいない。細部をどう見るかは別だが。

はっきり言って、コンクールでのブレハッチの7-12番の演奏は、現在と大きく違わないが、DGの録音の方がより円熟している点は特典だ。

短い変イ長調(遺作)は美しく展開している。もっと大曲のop45と2つのノクターンはより深い印象を与える。op62-2はショパンの作品集の最後としては物足りないと考えられることもある。ブレハッチは明確にそれが間違っていることを証明し、熱意ある愛国心とマジックを見せてくれる。実際、私はこの最後の3曲を、ブレハッチが現在達成できる水準の試金石として提示したい。彼はこの3曲でルバート、音質、構造を完全にマスターしており、彼の自由自在な表現豊かさとも相まって、これら3曲を聴くならば、現存の偉大なピアニストの少数グループが、少し大きくなったと感じざるを得ない。

彼のキャリアはフォローすべきだ。お見逃しなく。      Christopher Howell

原文はこちら
http://www.musicweb-international.com/classrev/2007/Nov07/Chopin_Blechacz_4776592.htm


同じサイトに、デビュー盤「Piano Recital 」のレビューがありました。

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